第13話
ーーーそう、あれはまだ私が心に闇を抱えていて、元カレの浮気を、払拭できずにいたときのこと。
一般的に女性は、男性よりも過去の恋愛に囚われずに次の恋愛に進めるというが、自分的には納得がいかず、足止めを食らっていた。浮気という行為は、許されざる行為である。自分と関係を持ちながら、他の人とも関係をバレずに持ち続ける。そのくせ、バレたら最初に関係を持っていた相手と縁を切り、また次の犠牲者を増やしていく心の侵略行為。立場の弱い女性の心を手玉にとり、身体を蝕む魔の悪手。
女性たちは自らを問う。
「想いがあったのは私だけだったのか」
「相手は既に心が向いていなかったのか」
「最初から身体目的で付き合っていたのか」
実花もその数多の女性たちの中の1人であり、彼女は相手を責めることができず、自責の念を人1倍感じてしまう傾向にあり、それが相手の男には筒抜けであり、身体的関係を結ぶにはちょうど良いマトになっていたのである。幼い時から容姿端麗で、運動神経は人並みにあり、勉学も平均より上で努力を重ねていた。
そんな彼女の初恋は中学2年生の時の塾の先生である。相手は既に妻と子供がおり、彼女と出会うまでは円満な家庭を築いていたそうだ。そんな教え子の気持ちを利用しようと、塾終わりに居残りを命じ、妻とのレスを、成年に満たない少女を、代わりに自らの快楽道具とすることで、解消転化したのである。
そんな裏授業が、2週間ほど続いたある日のこと。それは唐突に、幕を閉じることになる。いつものように、他の生徒を帰すと、したり顔で引き扉を締める。いつもなら、警戒を怠らずに鍵を閉めるが、閉め忘れてしまった。この一連の忘れてはいけない動作を、すっぽかしてしまったのだった。
以前から急に、夫がいなくなってしまった夜を疑問に思った妻は、子供を寝かしつけてから、自宅からそんなに距離も離れていない夫の勤務先である、学習塾へ足を運んでいた。夫の担当は中学2年生で、試験前でもなければお受験するお子さんもいないという。それなのに残業? と当然の疑問を持ち、電話を掛けてみるも反応なし。帰る夫に遅くなった理由を聞くも反応は鈍く、それならば直接足を運んでみようと今日に至ったのである。
いつもならば、鍵が掛かっており入る事は出来なかったのだが、今日に至っては鍵が空いていた。「ごめんください」 と発するも、反応はなく、古くなった照明が明滅を繰り返すのみ。
学習塾とは名ばかりで近所の公民館を間借りしているだけの場所で、夫の車だけ駐まっているのはどう考えても不自然であり、何をしているのか、もしかしたらーーなんて事も有り得るので、捜索を急いだ。
歩みを進めると、女子トイレの方で人のうめき声が薄らだが聞こえてきた。呼吸を止め耳を澄ませると、 確かに薄らだが夫に似た声だと思わせる声だった。
「あなたっ、大丈ーーーー」
よく利用している公民館のトイレは、入る前に付けるタイプであり、付けてから中に入った。そこで目にした光景は、生涯忘れたくても忘れる事はないだろう。
夫は担当である女学生の腰を掴んで自らのモノを咥え込ませていたのである。まだ年端もいかない女学生は恍惚な表情を浮かべていたが、私を見るなり涙を流し、許しを乞うた。
この子に罪はない。けれど許されざる行為であるのは承知だ。夫を侮蔑した眼差しでみると、こちらも自分のしていることに気付いたのか、大人のプライドなど目にもくれず許しを乞い始めた。
こうして、円満だった家庭が男の哀れな行為により外部から破壊され、幸せな生活が、跡形もなく崩れ去ったのである。初恋の思いを利用され、穢された身体は元に戻ることなく、彼女の心に根付いたのだ。
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