第11話
飲み会とはいえ、俺たち1年生(インド以外)は原則未成年のため、酒は飲めないが、それっぽい雰囲気を味わうことが出来る。各自飲み物を注文し、届けられるまでしばし、歓談を楽しむことにする。
「インドって明日コマある?」
「いや、明日以降は何もないね」
「じゃ、ちょっと物理の板書見せてくれん?」
「あぁ、それは全然構わんよ。俺も経済学見せて欲しいし。あれイマイチ板書し辛かったからどんな風にまとめたか見せて欲しいんよね」
『それ、俺にもコピーして送ってもらえる?』
「あぁ、良いぜ。タケシは確か明日2限以降フルコマだもんな。お気の毒に…」
『絶対気の毒とか思ってないだろ…』
「ふふん、まぁ僕も似たようなもんだから僕らは明日まで頑張ろうぜ…」
シュンキも明日はコマがあるらしく、2人で頑張ろうぜと誓いを立て他の2人を一瞥する。そんな中、救いの手がおりる。
「まぁまぁ、後輩くんたちよ、俺も今週は実技と選考試験でお互い辛い日々を送る羽目になるが、先人の知恵を授けることは出来るぞ」
「み、美扇先輩ッ!? ま、まさかとは思いますが、僕たちがまとめきれなかった板書を貰えるんですか?!」
「ふっふっふ、ただし試験のヤマも含んでしまうからもちろんタダではないぞ?」
「い、いくら払えばも、貰えるんですか?!」
怪しく笑う美扇先輩に対し、真に受けるシュンキはフトコロから財布を取り出し、中身を確認する。あともう少しのところで現金を取り出そうとするところに…先輩の頭を軽く叩く音がした。
「え、痛っ、誰? ゲッ…小百合ィ?!」
「もうっ可愛い後輩くん達をイジめるんじゃないよ。板書と過去のテストくらい私が見せてあげるから!」
美扇先輩と同じ書記の島松小百合-しままつさゆり(呼び名はさゆ先輩)-がさくま先輩にツッコむ。普段から仲の良いふたりが、メオトマンザイを披露する。何はともあれ、これで試験勉強が大方楽になった気がする。持つべきものは先輩ですよ。とてもありがたい。
なんだかんだで全員に飲み物が行き渡り、サークル長の古林真名都-こばやしまなと(呼び名はまなとさん)-が乾杯の音頭を執り、会は賑やかに決行される。
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先輩方の酔いも回り、最初の方はサークルの調子だったり勉強のアドバイスだったりと、一般的な話だけだったのが、いつしか恋愛やら下世話な話が各方面から飛び出してきた。これが大学生の飲み会ってやつか。新入生歓迎会と先月の会合はソフトな感じだったけど、普段の飲み会ってこんなこと話してるんだな。ちょっと楽しいぞ。
「おいタケシくんよー、新井とはどんな感じなんだ~?」
先程さゆ先輩に喝を入れられ、しゅんとしてたはずのさくま先輩がダル絡みしてきた。ヘルプの視線をさゆ先輩に送るが、あっちはあっちで女子トークが弾んでいるようなので、なかなか気付いてもらえない。仕方なくさくま先輩に視線を戻す。
『なんすか、さくま先輩…どんな感じって、別に普通ですよ』
「普通ってなんだよー、もっとあるだろ、例えばエッチしましたとか、行為に及んだとか、セッ…」
言い終わる前に再び、さくま先輩の頭に衝撃が襲う。先ほどより強い音がし、意外にもその音がまわりに響いたため、一斉にみんなこちらを向く。衝撃を与えたのは、こちらの視線に気付いたさゆ先輩と実花さんだった。ずっと送り続けた甲斐があったぜ。
「…はぁ、さくまったら、いったい何を言ってるのかしら。ごめんね成本くん、この人お酒飲むと他人の性事情に口出しちゃうから、しっかり見張ってなきゃいけなかったのに…」
「ほんとに美扇くんは、どうしようもない人だよね。武くんは相手にしなくて良いんだよ」
「うっ…な、なんだよ2人とも…良いじゃねぇか。こういう時くらいしか後輩と下世話な話出来ないんだからよー」
止まっていた時間は動き出し、当事者以外は会話を再開させる。さくま先輩は、涙目になりつつ他の後輩男子の方へ移動していった。同じところを2度ハタかれると、痛いですよね。
さくまイベントが突然終了し、話の流れで移動してきた実花さんとさゆ先輩に楽しい話を聞くことにする。
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