第6話
さすがに見慣れたとはいえ、2人のテニスウェアは新鮮で、安原さんは背丈と見た目にマッチしたワンピースタイプを、実花さんは大胆にもおへそを出したセクシーウェアでこの世界に君臨した。彼女らは男たちの熱い視線に気に止めることなく、入念に準備体操を行う。
女性陣の登場により、忘れていた準備体操を滞りなく終わらせることにする。と同時に横目で2人のストレッチを見やると、腕を交差させ、1人は腰に乗せ、もう1人は空を見るように伸ばされるアレ。実花さんの健康的で引き締まった身体が(特に露出されたおへそまわりが)日の光に当てられ、とても眩しく見えて実にイイ。
俺たちも同様のストレッチを行う。テルを腰に乗せ伸び伸びと伸ばしていく。交代し、身体がピザの熱にとろけるチーズの様に伸ばされていくのを感じる。
あぁ、座学での身体の疲れが解けるようだ。
「さて、程よくストレッチも終わったから、試合しましょうよ!」
『あれ、ラリーはしなくていいの?』
俺たちは先に肩慣らししたから、今すぐにでも試合出来るけど、女性陣はまだラケットすら握っていない。
「うん、いいの。私たちは2限の時間に肩慣らししてたから」
えっ、安原さん…1限は仕方ないとして2限もサボっちゃったんだね。呆れるような視線を送ると、そんな目でアタシを見ないで、と言わんばかりの視線を送り返される。そりゃあ大好きな先輩から誘われたら、試験前だけど1回くらいサボっちゃってもいいかな、なんて思っちゃうよね。分かる、分かるよー、みたいな視線を送ってやると…だよね、だよね、と返されたような気がした。
チーム分けのグッチッチをすると、安原さんとペアになった。後衛は経験者の安原さんに任せるとして、俺は前衛で今までの経験を糧に小手先の技術で、勝負しようと決めた。テルミカペアは後衛がテルで前衛が実花さんとなった。
「じゃあいくぞ!りん、俺の愛を受け止めてみろっ!」
そんな掛け声の元、勢い良くラケットが振り下ろされた。後ろを見ると、安原さんが受け止めきれないよ~と、顔を赤くしており、県大会優勝の肩書を持つ彼女らしからぬ、棒立ちのまま相手側に点が入った。
『ちょっと安原さん、何やってるのさ!』
「…だ、だってあんなこと言われたら変にチカラ抜けちゃうんだもん…」
上目遣いで訴えるように返されると、こちらも変にドキッとするからやめて欲しい。ドキドキするとテルに悪いので、脳内変換で実花さんに置き換えると、あ、これヤバいな、鼻血モンだな、と酔いしれてまう。
『さぁ、気を取り直して安原さんブチかましちゃって!』
心に区切りをつけて安原さんを鼓舞する。
「テ…テル…くん、わ、わたっ…私のあ、あ…い、を…受けとめて……!」
真紅に染めてあるであろう顔とは、裏腹にとても勢いのあるサーブが、相手コートを貫く。テルなら愛が重いぜ、と心の中で思ってそうだな。顔は気持ち悪いくらいニヤけてるけど。
テルが打ち返したボールがレフト手前に跳ね返る。ここはテルに1発重いのをぶち込んでおくか。実花さんにはごめんだけど、必殺技を使わせてもらうよ。
『穿て!この世の悪と凶行を。
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