第4話

「じゃあ、また食堂でな」

「ありがとねー山坂くんに成本くん!」





テルは別の講義を受けに、高良さんは1限のみだったので、帰路についた。その後ろ姿を見送り俺は、別の講義室に移動を始める。廊下にヒカリが差し込み、風で木々が揺れると、いよいよ俺たちの大学最初の夏が、今か今かと待ち望んでいるように思えた。夏休みは実花さんと色んなところに出掛けようと決めており、彼女とだったら、なんでも楽しく過ごせるのではなかろうか、と思いながら、目的地の扉に手をかける。






「ねーそんなことより聞いたー?」

「えーなぁーに?」

「3年の古林先輩の話なんだけどねー」

「あのテニサーのイケメン先輩でしょー?」

「飲み会で片っ端から後輩の女の子捕まえて、持ち帰っちゃうウワサ、マジなんだってー」

「えー私もイケメンに抱かれたいー」

「高校の時の後輩のリノが、解散の時に1人で居たところを声掛けられて嬉々とホテル行ったらしいよー」

「えー良いなぁー」






下世話な話を大声でする2人組の先輩が前から通り過ぎ、ふと古林先輩の事を思い浮かべる。シラフの時は気さくなお兄さんって感じで良い人なのに、どうも酒が入ると女の子口説き落とそうとするからなぁ。そのおかげもあって実花さんと付き合う前は、距離を少しだけ進められたんだっけ。









早く講義終わらせて、実花さんに会いたいな。












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その後は、特に何もなく今日の講義が全て終わり、学生食堂へ向かうと、試験前にも関わらず混み入っており、これじゃあどこにテルたちが居るか分からんぞ。と内心文句を言いながら、端っこの方で既にテルたちと実花さんが座っているのを見つけた。実花さんと目が合うと小さく招くようにおいでおいで、と手を振ってくれた。








……可愛すぎる。行動ひとつでも魅力が溢れて理性がどうにかなってしまいそうだけど、人の目がある公共の場でハグする訳にもいかないので、実花さんの隣に座った。机には既に定食が4つ用意されており、テルに貸しをひとつ作ってしまったようだ。礼を言うと、当人は気にする事もなく、昼からの予定を述べていく。






「飯食ったらコートで肩慣らししてから、1試合すっか?」





外国の研究データでは軽い運動の後に勉強をすると、捗るらしいので、その案には賛成だ。







『そうだね、試合終わったら図書館に行く流れかな』









「でも、今日は図書館休館のはずだよー」








すかさず実花さんが訂正にかかる。

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