第86話 山頂へ
翌朝。
私は寝不足の目をしばしばさせながらキミマロの背中にいた。
朦朧としすぎていて、目の前にジョナマリアさんが座っていても気にならないぐらいだ。
昨晩、あのあと。夜営地の移動が無事に終わった頃には、すっかり深夜になっていた。
しかも残念なことに、ハイヌの襲撃が続いたのだ。
結局スマホの位置情報登録の解除が出来なかったのだ。
あまりに襲われるので仕方なく、夜営地にジョナマリアさんと護衛にディアナとピノと、もう一人のユピテル──エンプという名の眼光鋭い子──を残し。私は残ったユピテル達を引き連れ、少し霊峰を登った所で待機することにした。
次々に現れるハイヌは、パルマを筆頭にユピテル達が楽しそうにバラバラにしていたが。
私はその間、ひたすらスマホをいじり、何とか位置情報の解除か、最悪地域限定ガチャごと削除できないか試していた。
深夜に、頭上で肉が引きちぎられる音を聞きながらする事としては中々に精神にくる時間だった。
やっぱり無理だと画面から顔をあげると、目の前には半透明の人の顔があった。
思わず悲鳴が出かける。
何とか両手で口を抑えたが、少し声が漏れてしまったのは致し方ないと、自分では思っている。
すぐに近くにいたユピテルの一人が剣でそいつを突き刺す。
空気に溶けるように消えていくそれ。
そこでようやく、私は今のがレイスだったことに気がつく。
どうやらユピテルの剣は霊体も切り裂く様子。
そのあとは本当にカオスだった。空からはハイヌの肉がふり。
周囲にレイスが漂い。
すべてを圧倒するようにパルマの高笑いが響く。
そんなわけで、寝不足になっても仕方ない状況だったのだ。
そんな昨晩の阿鼻叫喚を思い浮かべながら生欠伸を噛み殺していると、ビノが話しかけて来た。ちなみに他のユピテル達はキミマロの周りを飛びながらハイヌ退治に勤しんでいる。
「山頂、見えた」
私とジョナマリアさんはピノの指さしあ先を見る。
そこには霊峰の頂きがあった。
「さすがキミマロさんですね。あっという間です」と、ジョナマリアさん。飛び立った頃はハイヌとユピテルとの戦いに緊張した様子だったが、もう慣れたようだ。
「あそこに、入口がありますっ」と声をはるジョナマリアさん。
山頂から少し下がった場所に、洞窟の入口が見えた。
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