第47話 そして宴会が始まる

 初めての食料限定ガチャ。出てきたのは、こちら。


 レア度 コモン

 属性  アイテム

 名称  クンタッキーフライドチキン


「やった、クンタッキー! 個人的には大当たり!」


 早速取り出しかぶりつく。

 懐かしい味が口いっばいに広がる。

 私は一噛みごとに滲み出てくる、その鶏肉の油と旨味を全身で堪能する。あっという間に、骨だけになるクンタッキーフライドチキン。


 食べたことで、胃腸が活性化したのか、まだまだ物足りない。


 一気にガチャに突っ込んだ、300いいね。もちろん、食料限定ガチャへ。


 次々にカプセルが開く動画が、スマホに表示されていく。

 さすがに途中でスキップすると、リザルト画面にずらずらっと食べ物が表示されていく。


「どんなのあるかな……。おっ、ジンジャエールある。これは、焼きそば! あ、たこ焼きも!」


 私はリストの中から目についたものを取り出す。

 焼きそばやたこ焼きは屋台風にプラスチックの容器に入って出てくる。割り箸も標準装備の優しい設計に感謝。


 焼きそばのプラスチック容器を開ける。一気に広がる、ソースの懐かしくも、暴力的なまでに食欲を煽り立てる香り。


 無心で焼きそばを掻き込む。


(味も屋台のチープな感じだけど、それがいいっ! 外で食べると美味しいんだよね、これが……)


 何故か目頭に滲み出てくる液体を指先でピンっと弾き、箸の動きは止まらない。


 焼きそばは食べ終わる頃には、ようやくお腹も落ち着いてくる。

 そのまま、次はたこ焼きのプラスチック容器も開ける。

 ソースとマヨに、青のりとかつおぶしのスタンダードスタイル。

 まだまだ、熱々だ。湯気に揺れるかつおぶし


 私は一つ一つ、ゆっくりと味わっていく。


(この、タコの小さい感じがまた! マヨとソースのコラボは最強だよね……)


 一つ、また一つと口の中へ消えていくたこ焼き。

 私はいつしか考え事をしていた。


(食料限定ガチャの解禁は、ガチャを回した回数かー。規定値って一体どれくらいだろう。多分、1000回はまだ回してないと思うんだけど……。もし、他にもガチャを回した回数で解禁されるものがあるなら、あんまりプレミアム限定ガチャばかり回すのも考えものだよなー。でも、次が何回目に解禁されるかもわからないし。それに、もしかしたら全く別の条件で解禁される可能性もあるのか……)


 と、私がガチャの事を考えていると、いつの間にか馬車が止まりっていた。

 そればかりか、目の前には、リスティアの顔が。

 リスティアは、物凄く物欲しそうな目で、私の箸の最後の一個のたこ焼きを睨み付けていた。


「あー。食べる?」


 コクコクと、無言で激しく上下にふられるリスティアの顔。

 箸でつまんだたこ焼きを、そっと口許に近づける。

 ばくりと言う音が聞こえそうな勢いでかぶり付く、リスティア。


 その頃には、ガーリットと黎明の嘶きのメンバーが遠巻きにして、私たちの様子を伺っていた。


 私は箸をリスティアに噛まれたまま、皆の様子を伺う。

 鼻をひくひくさせている人が、多数。


 ソースの香りは、どうやらここの人達にも美味しく感じるらしいな、と思いつつ。噛まれたままの割り箸の回収を諦めると、スマホを操作して、リザルト画面から食べ物を取り出す。


「あー。食べます? 皆さん」


 我先にと伸びてくる手。しかし、誰よりも速く到達したガーリットの手が、私の手からクンタッキーフライドチキンを奪っていく。


 そのまま殺到する手に、次々に取り出した食べ物を渡していく。


 そして、宴会が始まった。


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