第46話 王都へ
「ふあー」
私は生欠伸を噛み殺しながら、馬車に揺られている。
早朝とは聞いていたが、こんなに早くに出るとは。
今朝もカーリットのどんどんというノックの音で起こされた。
そのまま引きずり出されるように外に出てみれば、まさに夜明けぴったりぐらい。
城壁越しに差し込む朝の日の光。黄色の建物達をまるで黄金色のように輝かせていて、美しかった。
それは良いのだが眠すぎて食欲もなかった私はそのままカーリット達と合流。用意された馬車に乗り込み、王都に向かって出発。今に至る。
「今日の夕方には着くらしいけど……」
私はそんな事を呟きながら昨日のシュバルツの話を思い出していた。
(各地で破壊活動に従事する錬金術師集団が出没していて、スタンピードの原因もその構成員が犯人らしいとか。あんまり知りたい情報じゃあなかったな……。まんま、テロリストだよね)
私は後ろを見ると、リスティア達が乗っている後続の馬車が見える。
(リスティアを王城まで護衛するクエストを、まんまと口車にのせられて引き受けてしまった。しかもいつの間にか冒険者ランクも、FからCになってるし。目立つのとか、嫌なんだけどな……)
流されやすい自分の押しの弱さにため息をつくと、お腹が鳴る。
そうなのだ、朝食抜きで腹が減った。
カバンの中には食べ物はない。
どうやら馬車には食料は積まれているようだが、手軽に食べれるようなものじゃなさそう。
「ガチャで食べ物出ないかな……」
まるでそれがフラグだったのか。ふとガチャアプリを起動する。何と、そこには食料限定ノーマルガチャの文字が!
昨日は確かに寝る前には投稿しかせず、ガチャアプリを開いていなかった。
なにやら説明文がある。
「何々、『ガチャを回した回数が規定数を越えました。ボーナスガチャを実装します。レア度:コモン限定 1回1いいね。また、今回のガチャの実装に伴い、食料の排出が解禁されます』」
思わず小躍りする。
「食料解禁は嬉しい! ハイランクの食べ物ってやっぱり美味しいのかな。日本の食べ物も出るのだろうか。なんにしても、これはいいガチャだ! 早速回そう! え……」
私はガチャを回そうとして、目を疑う。昨晩までとはうってかわって、いいねが2000近く、ついている。
「……ティガーの変になってない変顔に、何でこんなにいいねが。人気者なのか、ティガー」
写真に投稿されているコメントを見ると、どれも好意的な物ばかり。普通に可愛いというものや、ほっこりしたというコメントが多い。
「うわー。何なんだろう、この落差。自然体で撮ったのが良かったのかな。全然予想がつかないよ、何が受けるのか……」
落ち込みそうになる気分を強引に切り替える。
「そんなこと悩んでも仕方ないっ! ポジティブにいこう、自分。いま、私の目の前に、新ガチャがある。そして回すためのいいねも潤沢! さあ、どうする! 回すっきゃないでしょっ!!」
私の指がガチャのボタンをタッチする。
スマホ画面の中では、美味しそうな食べ物をあしらったエフェクトとともに、ガチャマシーンがくるくるとカプセルを回し始めた。
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