第45話 誤算

「あれ、おかしいな……」


 スタンピードのあった翌日の夜、私はスマホの前で首を傾げていた。


「全然、いいねがついてない……。何でっ?!」


 ばたんと、ベッドに倒れ込む。

 今日の昼に、約束通りシュバルツの飛んでいる姿を動画で撮らせて貰った。ここぞとばかりにリハを重ねて。テイク15で、最適だと思うコースとアングルを決定。

 シュバルツもノリノリで、飛び回ってくれたけど、確かに最後の方は少し投げやりになっていたのは否めない。


 そうしてテイク16で、投稿アプリを起動して満を持して撮影。

 渾身の動画が撮れたと、自信満々で投稿したのが今日の午後。

 そのあと、色々あって。

 夕飯も食べ終わり、さて、ガチャタイムっ! と勢い込んで確認してみたら、トータルのいいねが300ちょっと。それもほとんどが前に投稿したものについた、いいね。


「どういうことだ……。そうだ、コメント欄!」


 私は急いでスマホを操作してコメントを確認する。

 僅かに投稿されているコメントを見ると、どうも今回のシュバルツの動画はあざとすぎたらしい。

 焔の民の少女の動画で、生じてしまった非現実感が、尾を引いているみたいだ。

 確かにこれまでは、勢いのままに撮影していたけど、どうやらそれが、偶然、リアルな空気感を伝えることに成功していたみたい。

 嘘臭い、というコメントもあり。今日の昼の努力が逆効果だったと突きつけられているようで、泣けてくる。


 意気消沈した私は、ガチャは止め、今日はいいねを貯めて置くことにする。

 テンションが低いときのガチャは、危険だと長年の経験が告げてくるので。

 何となく、こう言うときは外れしか当たらない気がするんだよね。そしてさらに落ち込むことなったのが何度もある。そう、数えきれないぐらい。そうして、とめどなく課金してしまうのが一連の流れ。


「でも、せっかくの投稿機会があと一回あるか」


 私は何となくティガーをユニット編成から呼び出す。

 魔法陣から出てきたティガーは私の顔を見ると、急に変顔をしだす。

 どうやら私がテンションが死んでいるのがわかるのか、笑わせようとしてくれているらしい。

 ノームは人よりも顔の皮膚が固いのか、あまり変になっていないティガーの顔。

 でも、逆にそれが何だか微笑ましい。

 その優しさを、思わず保存して起きたくなって、投稿アプリで写真を撮っておく。そのまま投稿。


 私はティガーの頭を撫でて、感謝の気持ちを伝えると、今日はもう寝ることにする。

 今日の午後に色々あったせいで、明日は朝早くからガーリット達と出掛ける予定が入っていた。

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