第44話 情報開示
「動画とはなにかの?」とシュバルツは首をかしげる。
「ええと、私が加護を貰っている神がおりまして。その神が私にこの世界でやるようにと言われた事なんです。この世の中の事を動く絵として記録するんです。それが、動画ですね」と、私はリスティアにしたのと同じ説明をする。
「ほう! それは面白い。それを記録するのがクウ殿が神から与えられた使命なのかの?」
「うーん、使命と言うか……。まあ、やるように言われているのは、その動画を他にも色々な情報が記録されている場所に送って、他の人と共有する事、ですかね」
「なるほどの。クウ殿は知識を重んじる神の使途と言う訳じゃな」そこでちらっとリスティアを見るシュバルツ。
それまで黙っていたリスティアが口を開く。
「僕の目には、クウに触れた神の御手がはっきりと見えているよ。クウ、今回の指名依頼、ありがとう。」と、そこで口をつむぐリスティア。
「いやいや、ちゃんとリスティアの動画も撮らせて貰ったから、お礼には及ばないよ」と、リスティアに先に返事をしてからシュバルツの方に向き直る。
「それで、そんな感じなんですが、どうでしょう?」
「もちろん構わんよ。しかし、わしのだけで良いのかの?」
「うーん。そうですね。あ、できれば日光のあるうちに外で撮りたいので、そこら辺はよろしくお願いいたします。後は、何かめぼしい情報を追加でお願いしようかな」と、今日の投稿がもう出来ないことを思い出して、とっさに付け加えておく。
しかし、これが余計だった。
シュバルツの瞳がキラリと光る。
「そうか、それではその動画撮りとやらは早速明日の昼にやろうかの。他にめぼしい情報かの。そうそう、今回の騒動についてなんじゃがの……」
と、シュバルツの口から語られる事の顛末。
どうやらあのあとすぐに後発隊が調査でリスティアの囚われていた場所の捜査を実施していたらしい。
どうも錬金術師の工房ではないかとの所見。
地下にひっそりと工房を構え、異端の人体実験を含む危険な研究を行い、あまつさえエントのスタンピードの原因を作った犯人。その手がかりとなりそうなめぼしい物は、粗方持ち去られていたらしい。ただ、相当慌てて逃げた痕跡があると。
リスティアの話とあわせて考えるに、工房にあったウッドゴーレムが全ていっぺんに暴走したり壊れたりしたのを襲撃だと思って慌てていた可能性が高いらしい。
そのため、幾つかの手がかりが残っていたそうだ。
ただ、機密に触れるので開示するには条件があると勿体ぶるシュバルツ。
私は何となく聞かない方が良さげな予感に駆られる。
なので、そこまででいいですと断る。
何故かその場に居合わせた一同が、残念そうな様子に。
それを見て、さらに面倒事の雰囲気を感じた私は、明日の予定だけつめると、挨拶もそこそこにギルドをあとにした。
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