第5話 ユニット編成

 私はユニット編成の文字が気になるも、目の前にいるゴブリンたちと目が合う。特にディガー以外の二体の視線が、期待に満ちてキラキラしている。


(これは、あれか。名前をつけてもらいたくて、かな?)


 いったんスマホをしまうと、名付けを続けることにする。


「じゃあ次は、君だ」


 唯一の女の子のゴブリンに話しかける。それを受けて、一歩前に進み出てくる。


(どうしよ、女の子の名前は難しいな。変な名前はつけられないし)


 私はディガーの名前を棚にあげてそんなことを思っていた。


(スコップ、狩り……。狩りか、それじゃあ、あれがいいかな)


 私は連想ゲームで名前を決める。


「君は、ディアナだ」


 こくこくと頷くディアナ。あまり表情は変わらないが、足取りは軽く後ろに下がる。


 最後にナイフを持ったゴブリンに話しかける。


「最後は君か。うーん。ショウとかどうかな?」


 ショウは腕を組み目をつぶっていたが、深々と頷く。


(良くわからないけど気に入ってくれたのかな?)


 そのまま寝る準備を始める。


 どうやら夜の見張りをゴブリン達が交代でしてくれるみたいだ。

 私はそれに甘えることにして、スマホのリザルト画面からマントを取り出すとくるまり、横になる。

 スマホを取り出すと、気になっていたユニット編成を見てみる。

 マントを取り出した時に、リザルトの下にユニット編成が追加されていたのを発見していた私は、早速ユニット編成をタッチする。


(ふむふむ、ディガー達の名前と種族が一覧になってる。名前つけたのがちゃんと反映されてるんだ。この、収納って何だろう?)


 私が試しにディガーの収納の所をタッチすると、急にディガーがスコップごと光の粒子になると、スマホに吸い込まれていく。


「おっ!」


 思わず声をあげてしまう私。

 改めてスマホの画面をみると、ディガーの名前が色が変わっていて、さっきまで収納となっていた所が召喚に変わっている。


 私は急いで召喚をタッチすると、初めての時と同じ魔法陣が現れ、ディガーが再び召喚されてくる。


「あー、突然ごめんね」


 取り敢えずディガーに謝ると、ディガーはいい笑顔と共にサムズアップしてくる。


(良かった気にしてないみたいだ。でもこれ、凄いな。自由自在に収納と召喚ができるみたいだ。クールタイムも無さそうだし、スキルを使ったときのような疲労感もない。ゲームで言えばMP消費なしの召喚士みたいだ。後は出せるユニットの上限とか、収納の距離的制限とか色々気になるけど……)


 私はそこで大きくあくびをする。

 初の異世界、結構疲れていたようだ。私はそのまま寝落ちしてしまった。


 ◇◆


 眩しさに目を覚ます。起き上がり、体のこわばりを伸びをして、少しほぐす。


 とことこと近づいてきたショウが葉っぱでできたコップを差し出してくる。

 中身は水のようだ。

 ありがたく頂く。


「ふぅ、ありがとう。ディガーとディアナは?」


 ちょうどその時、藪をかき分けディガー達が姿を表す。


 手に手に果物や爬虫類っぽい、食べ物らしきものを持っている。

 ショウを中心に朝御飯の支度が始まる。


 私はその間にスマホをチェックする。


「まずは投稿アプリを見てみるかなー」


 私は投稿アプリを開く。


「うわっ!」


 私の叫び声に何事かとこちらを向くディガー達。


「大丈夫、大丈夫っ!」


 私が手を振りながらディガー達に声をかけると、彼らは作業に戻っていく。


「凄い、いいねが124件も……。コメントもついてる!」


 私は投稿に対するコメントに目を通す。


『CG? 凄いクオリティ』『ホビットコスプレか。なかなかマニアックだな。嫌いじゃない』『見たことのない植生。合成としたら相当のクオリティだよこれ』『これはまさか、異世界転生じゃない!』『いやいや異世界とかあり得ないから。CGでしょ』……


 私はコメントに返信しようとしてはたと気がつく。


「返信、できない。私からはいいねもできないのか。本当に投稿しかできないのね」


 私は取り敢えず投稿アプリを閉じる。

 ちょうど朝食が出来たみたいだ。ショウ達の手料理をありがたく頂戴する。


 朝食は果物と肉メイン。

 まあ、フライパンも鍋もないから料理するのも難しいよね。


 肉は薄めの鶏肉っぽい味がする。深く考えないようにして完食する。


 食べ終わり、片付けを始めるディガー達。

 私は片付けも任せ、さっそく先ほどの続きとばかりにスマホを取り出す。

 ガチャアプリを開く。

 すると、新しいガチャが選べるようになっていた。


『レア確定 プレミアガチャ』 1回100ポイント 現在125ポイント


「新しいガチャきたっ! それに、ポイントは125か。1いいね1ポイント換算で、今日の分のログインボーナスが足されているのか。ログインボーナスがこうしてみると微妙過ぎる」


 私は迷わずレア確定プレミアガチャをタッチする。

 ノーマルガチャに比べて、かなり豪華なガチャマシンがスマホ画面上に現れる。

 くるくると回るガチャマシン。

 色違いのカプセルがガチャマシンから排出される。光があふれでるエフェクトとともに、リザルト画面へ。


 レア度 スーパーレア

 属性  アイテム

 名称  スコップ(特性:吸魂)


「またスコップ……って、特性? 吸魂? なんだろこれ?」


 私が不思議に思ってタッチしてみると、説明画面が現れる。


 スコップ(特性:吸魂)

[殺した相手の魂を吸い成長していく。吸った魂に応じ、魔を払う聖スコップにも、あらゆる命を貪る魔スコップにも変化していく]


(こんなん、絶対チート武器じゃん。逆に怖いぐらいだ。何にしても、ガチャ、凄いな……。これは、いいねをどれだけ貰えるかが、相当今後に影響してくるかも。となると、投稿のネタを探すべきか。やっぱり人間の居るところに、一度は行くべきだよな。)


 私はそこまで考えて、片付けを終えてこちらを伺っていたディガー達に話しかける。


「ねえ、みんな、これからのことなんだけど。私は人のいるところを目指そうと思うんだ」

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