物語の主人公である『アガト』は、ひらたく言うと天然、もっち言えば何一つ描かれてない、真っ白い紙のような状態の人間です。
いや、『人間』をどう定義するかによっては、彼は人間ですらなく、ただそこに存在するだけの巨大な力でしかない、ただの『モノ』でした。
そんなアカドに行動目的と、目指す方向性、そして守るべきものと、守りたいものを与えてくれる人たちが登場していきます。
そんな彼の、人間として成長……もしくは、人間に生まれ変わっていく姿が、いろんな個性的なキャラたちの思惑と絡まりながら話が進行していきます。
(特に、ユラの愛憎にまみれた、歪なあり方は圧巻です)
なぜアガトが騎士になったか、そして彼が守りたいと思う『宝物』とはどういうものか、そしてそんな彼を憎み、また愛する人々は、どんな想いで彼を接しているのか……それが美麗な筆致で紡がれるこの物語は、畏れながら一見の価値があるものだと思います。