【ギルド】Going My Way!!

 二十一世紀。

 仮想現実VR技術は加速度的に進歩した。仮想世界でありながらも現実と何ら遜色がないほどまでに視て、聴いて、触れて、嗅いで、そして味わえるまでになった。


 そんな技術を惜しみなく注ぎこんで作られたVRMMORPGが、フェアリーテイルオンライン――通称FTO。

 新たな物語フェアリーテイルは、君との絆で生まれ落ちる。

 そんなキャッチコピーと共に、FTOは世間に広く知れ渡って行った。

 いっそのこと、某ライトノベルのようにFTOの世界に囚われてここで一生暮らしたい、と豪語する熱狂的なプレイヤーも中にはいたが――残念なことに、ログアウトが不可能になるような致命的なバグは発生しなかった。逆に、あまりに人気すぎてサーバーが混雑し、ログインが出来ないという現象なら起きたことはある。そのため、初期プレイヤーからは『ログインゲー』などと揶揄されることもあった。

 そのぐらい、FTOは多くの人々にプレイされていた。


 サービスが開始して長い年月が経ったが、いまだに数あるネットゲームの中でFTOは不動の人気を誇っている。その理由の一つに、高い自由度があるだろう。FTOの世界では、何をして過ごしてもいい。強いモンスターをひたすらに狩るのも、商人として金稼ぎに熱中するのも、未知の味を探して美食巡りするのも自由だ。


 その中でも多くのプレイヤーを魅了するものの一つが、週に一度行われる攻城戦――所謂対人戦だ。


 砦を守る側と攻める側に別れ、戦う。制限時間までに砦の最奥へギルドフラッグを立てていたものが勝者となる。

 大手のギルドともなれば、いくつもの砦を同時に確保することもままあった。

 砦の保有数に応じ、ギルドとしての名声レベルは上昇する。それに比例し、様々な恩恵を受けることが可能だ。ステータス向上の支援バフが受けられたり、ギルド専用の狩場が与えられたり、専用狩場でしか手に入らないレアなアイテムがあったり。

 魅力的な恩恵は、まだまだある。けれども結局、熱中して攻城戦をしているプレイヤーたちに言えることは一つだろう。


 『俺TUEEEE!!』と叫んで回りたいのだ。

 俺が育てたキャラは強いぞ、俺はお前らと違ってレアな装備を持っている、俺たちのギルドのほうが最高なんだ、と。

 どんなに技術が進歩したところで、ゲーマーの本質は変わらない。

 今日も今日とて、ゲームに人生を捧げた廃人たちの戦いは続く。


 そんな廃人たちの中で、ギルド『Going My Way!!』――略称GMWは異彩を放っていた。勝利する気があるのかと疑いたくなるようなステータス振りに、プレイスタイル、こだわり抜いた変態装備などなど。


 正規マスターが率いていた時は、サーバー最強ギルドなどと謳われていたこともあったが、今は昔の話。ロラン・ロマンがマスター代行を務めるようになってからは、パッとした話を聞かない。それこそ、初心者ギルドに最深部にまで攻め入られる始末だった。

 今やGMWは誉れではなく、嘲笑の代名詞となっていた。

 ああ、あの落ちこぼれの集まるギルドか、と。

 そう笑われようとも、ロランにとってはマスターの作ったGMWこそが大切な居場所だった。

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