Recycle of the life #3
手の甲でドアを4回叩く。
「来ました。天見っす」
「どうぞ入って」
承諾が得られたようなので、俺はドアを開け、病室に入った。
「来てくださったのですね。嬉しいですわ」
このみはそう言って微笑んだ。
お嬢様らしい上品な微笑みだ。まあお嬢様らしさなんて知らないけど。
「ここに椅子がありますから、どうぞ座ってください」
「お言葉に甘えるよ」
俺は、持ってきたペットボトルのりんごジュースを近くの台に置いてから、座った。
「それは…なんですの?」
「えっ?」
「そこの、瓶みたいな容器のことですの」
「ペットボトルのことか?…もしかしてペットボトルを知らないのか?」
「み、見たことはありますのよ」
「すっげ、お嬢様ってマジでこんな感じなんだ」
「なんだかバカにされているように感じますわ…」
このみは肩を落とした。
「わりぃわりぃ。そんなつもりはなかったんだ。いいぜ、ペットボトルについて教えてやるよ。ペットボトルってのは、ポリエチレンテレフタラートっつープラスチックの一種で作られた飲み物の容器のことで…」
そうして、話の途中で出てきた単語について質問されるというように、さながらWikipediaのリンクを掘り下げるように話をしていくと、いつのまにか昼食の時間になってしまった。
SPみたいな人が、重箱みたいなのを持ってきた。
ふと、このみは悲しそうな雰囲気を出した。
「…お父様もお母様も、決して悪い人じゃないのですが、忙しい人ですから、いつもわたしの病室にいらっしゃるわけにはいきませんの。それはわかっているつもりではあるんですが…少しばかり、悲しく感じることも多いですわ」
「だろうな。なんせ天原つったら日本どころか世界でも最大級のコングロマリットだろ?あーやって病室にまでお見舞いに来れるのが奇跡みたいなもんだ」
「こんぐろ…なんですの?」
「コングロマリットっつーのは、ある会社が全然違うジャンルの会社を買収したりして…って、まずは昼飯を食おうぜ」
そうして、俺たちは会話…というより、このみが分からない単語を俺が教える授業のようなものを進めていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます