29話 出刃亀
とうとう朝が来てしまいました!
お母様は普通通りです。
「フレア、悪いけど今日はちょっと1人でお出かけしてきます。」
あっ!お母様、嘘ついてますわ!
「···分かりましたわ··どちらへ?」
「今日は、明日からまた旅が始まるので、料理の作り置きをしようと思います。その材料を買ったりしてくるつもりです。」
お母様···もしや、ジャンさんを荷物持ちに···。
お母様はジャンさんとの、お出かけの為におしゃれをしています。
いつもは肌を見せないワンピースでしたが、今日は胸元が見える青い色のワンピースを着ています。
髪の毛はいつもは結っているのに、今日は降ろしてます。
何か凄く若返りました。20代に見えます。
これならジャンさんと一緒にいてもお似合いかも····。
お父様!早く私たちを見つけて!
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
ジャンさんがお迎えにくると言ってましたが、私に知られるの嫌なのか、お母様は先に出て行ってしまいました。
····やっぱり私気になります。サラさん達のお誘いはお断りして跡をつけることにしょう!
決して出刃亀ではありませんわ!
お母様が、危険な目に合ってはいけませんから見守らないと!
私は急いで着替えて、部屋から出ていった。
サラさん達がいる宿に着くと、ちょうどお母様とジャンさんが出て行くところでした。
ラッキーだったわ!早くサラさん達に断りを入れて追いかけないと!
すると、宿からリンダさんとサラさんも出てきた。
「リンダさん!サラさん!すみませんが今日のお誘いはお断りさせてください!大事な用事が出来てしまいました!」
リンダさん達も
「私たちもなの!誘っておきながらごめんね!」
全然大丈夫です!
そして私は急いでお母様の跡を追いかけた。
「確かこっちだったわよね···」
二人が歩いていた方向に来たつもりでしたが···
いた!
ジャンさんが笑顔でお母様に話かけてました。
私は人混みに紛れ、跡をついていく。
ちょっとしてから
「リンダ!あそこにジャンとミチルダさんがいるよ!」
サラさんの声がしたので振り向いた。
「「「あっ!」」」
お互いに驚いた顔で見つめ合った。
「フレアちゃんどうして?」
「サラさん達こそどうしたのですか?」
「「·····」」
リンダさんが
「今日、一階に居たらミチルダさんが来てジャンを呼んでくれって言われて···」
「そうそう!それで何かおめかしてたジャン兄が、ミチルダさんと話したと思ったら二人して出ていくからさ!リンダが気になって追いかけることしにたのさ!」
それって出刃亀ですわよ···。
私は違いますわ!···多分···
「私は実は、ジャンさんがお母様をデートに誘っているところを見たので、気になって···」
サラさん達と同じですわね···。
「そうなの···。ジャンは本気なんだ···。」
リンダさん···
「とりあえず追いかけて様子見ようよ!」
そうですわ!
「リンダさん、行きましょう!」
私はリンダさんの手を引いて、お母様を追いかけた。
すぐ見つけることが出来ました。
何か雑貨屋さんに入って行きました。
私たち三人は、お店の窓にへばりついて中を覗く。
ジャンさんが、髪飾りを持ってお母様の髪の毛に当ててます。
プレゼントする気ですか!?
「ジャン兄って、あんな事する奴だったかな···」
「···見たことないわね。私たちに付き合う時なんか、いつも嫌そうにお店の外で待ってるわ。」
·····。
ジャンさん、さりげなくボディータッチしてますわね。
その他にもブローチとか持って、お母様に、「どうですか?」って聞いている感じですわ。
お母様は何個か購入したみたいです。
ジャンさんは、お母様が店内を見ている間にお会計の所へ行き、何か買ってました。
そして雑貨屋さんを出て、また歩き出す。
「あー!ジャン兄、ミチルダさんの腰に手を回してるー!」
「···しかも、荷物を持ってあげてる···私たちのは絶対持ってくれないのに···。」
確かに、お母様が買った物を持ってあげてます。
そしてがっちりと手で腰をホールドしますわ!
「ミチルダさん、嫌がらないね。」
「····」
それは慣れてるからだと思いますわ。
いつもお父様は、お母様といる時は腰に手を当ててましたから···違和感がないのかも···
それに
「ジャンさんって、手が早いですか?」
「そうだねー。早いかな。ジャンって冒険者のランクBで強いし、見た目も悪くないからモテるかな。女の方から誘われる方が多いかも。」
リンダさんは身体をビクンとさせている。
「モテるならお母様なんか相手にしなくても···」
「分かんないけど、一目惚れみたいよ。リンダが早く告白しないから。」
「だって···」
「今までは軽いノリで女の子と遊んでるって感じだったけど、今回は違うもんね。」
「そうなんですの?恋人とかはいらっしゃらなかったんですか?」
「いたよ。でもすぐ別れるんだよ。冒険者だから、そばにずっといるわけに行かないし、浮気されたり、自然消滅したりして。まあ、ジャン兄もモテるから浮気はしてたけどね。」
「リンダさんはその時は大丈夫でしたの?···その···ジャンさんに恋人が出来て。」
「内心はあまり穏やかじゃなかったけど、恋人が出来てもすぐ別れるから安心してたっていうか···ここまで行動する人じゃなかった。」
「····」
「それに告白して振られたら、私、このパーティーに入れないわ。それは嫌だから。」
「でもさー、それなら一生、幼なじみのままじゃんよ!」
「私もそう思います。」
「····」
リンダさんは悲痛の顔をしています。
そしてジャンさんが、ぐっとお母様の腰を抱き寄せて密着度を高めました!
おい!ジャンさん!近すぎ!
リンダさんはその姿を見て、後ろに振り向き逃げ去った。
「おい!リンダ!」
サラさんはリンダさんを追いかけて行きました。
····。
私1人になっちゃいました。
それから二人は、お食事をしにお店に入りました。
私が入る訳に行かないので、屋台で串刺しを3本ほど買って、お行儀が悪いですが立ったまま食べました。美味しいかったですわ!
結構長い時間、そのお店に居ましたが、出てきました。
何か待ち疲れましたわ···。
とりあえずまた跡をつけた。
今度は市場へ向かって行きました。
そこで、お母様は野菜を買ったり、果物を買ったりしてました。
結構な荷物です。もちろんジャンさんが荷物を持ってくれてます。
···お母様···やっぱりジャンさんを荷物持ちに使う為に?
その後は、公園みたいな所のベンチに二人は座りました。
周りを見ると人影が見当たりませんわ···。
···狙ってますね!ジャンさん!
ジャンさんはお母様と身体をくっつけて座って、何か会話してます。
何を話してるのか、気になります。
もっと近づいても大丈夫かしら?
忍者のように忍び足で、木から木へと身を隠しながら移動して何とか会話が聞こえる所まで来れました。
「ミチルダさん、本当に綺麗です。」
「···ありがとうございます。」
「あの···実はさっき寄った雑貨屋さんで、ミチルダさんに似合うと思って買いました。貰ってください。」
あっ!やっぱりあの時買ったのは、お母様にプレゼントする為だったのですね!
「え?···」
お母様も戸惑ってますわ。
ジャンさんは、袋を開けて品物を取り出した。
それはネックレスでした。
ちっ!どんな感じの物なのか、見えませんわ!
お母様はびっくりして
「何にもないのに、こんなもの貰えませんわ。」
「そんなこと言わないで貰ってください!ミチルダさんが、貰ってくれないなら捨てるだけです!」
···そこまで言われてたら、拒否る訳にいきませんわね···。
「···では有り難くいただきます。ありがとうございます。」
「ミチルダさん、これを着けますね。」
ジャンさんは、そう言うとお母様の首にネックレスを着ける。
その時にかなり顔をお母様に近づけた。
ジャンさん!お母様に近づきすぎです!
そして無言でお母様を見つめ、肩に手を置き···お母様の唇の方に顔を近づけた···
嫌ですわー!お母様!
と思ったら、お母様が不意に下を向き屈む。
スカッ!
ジャンさんは、空振りました。
「ハンカチが落ちてしまいましたわ。」
お母様はケロッと言ってます。
···お母様···わざとやりましたね···わざと!
流石お母様ね!やりますわ!
「そっ、そうですか···」
ジャンさんは挙動不審になってます。
目が泳いでます。···クスッ。ちょっと笑っちゃいますわ。
「ジャンさん、そろそろ帰りましょう。」
「ミチルダさん!夕食までご一緒しましょう!」
ジャンさん···やっぱり狙ってます?
「フレアが待ってますので、ごめんなさい。···それにやはり、わたくしはジャンさんとのお付き合いは出来そうにないですわ。」
「ミチルダさん···」
「気持ちはとても嬉しいですわ。今日も楽しかったです。昔を思い出しました。ですが、わたくしの気持ちが動かないのです····。」
「····。」
「ごめんなさい。」
お母様はそうジャンさんに言うと立ち上がり、大量に買い物した荷物を持とうとしたが、
「俺が持ちます!送りますから!」
ジャンさんがすかさず、その荷物を持った。
二人は公園を後にした。
私は一瞬、走って帰ろうと思いましたが、そのまま跡をついていきました
言い訳はできると思いますし!
二人とも無言で、宿まで何もありませんでした。
宿まで戻り
「ジャンさん今日はありがとうございました。」
「····。」
ジャンさんは無言のまま微動だにしない。
お母様はジャンさんから荷物を取ろうとしたら、ジャンさんはお母様を抱き寄せ、ぶちゅっとキスをした!
ぎゃー!
お母様も驚きが大きいようで動けないでした。
「ミチルダさん、俺諦めることはできません!さっきまで諦めなきゃって考えて歩いてたけど、なんか無理っぽいです!」
ジャンさん!二回振られたのですから、そこは諦めましょうよ!
「····。」
お母様は無言です。
「自分でもこんなに諦めが悪いとは思いませんでした。···こんなに人を好きになったのは初めてです。ヨークテイルに着くまでは一緒なんで、ガンガン攻めさせていただきます!ヨークテイルに着くまでにミチルダさんの気持ちが変わらないようなら、そんときはきっぱり諦められると思います。···俺本気です。じゃあ、おやすみなさい。」
彼は言うことだけ言って去って行きました。
お父様ー!ヤバいですよー!
リンダさーん!
帰ってから私たちはあまり会話もないまま就寝についた。
明日はトコル村を出発する日!
どうすればいいか考えたが、答えは見つからず、夜はあまり眠れなかった。
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