23話 フレアの決断





お父様とお母様が離縁って!




「どうしてですの?」




「····貴方たちには、申し訳ないと思ってますわ。でももう、決めたことです。」




「「「「「「········。」」」」」」




重い雰囲気です。


すると、ギオレットお兄様が




「では、私が母上について行きます。」




お母様について行くと宣言されましたが、お母様は首を横に振り




「ダメよ。貴方には、可愛い恋人がいるわ。わたくしについてきたら、結婚も出来なくなる。」




ギオレットお兄様は悲痛な顔をする。




「では、私がついていきます。私ならまだ、身軽だし!」




次はリリアン御姉様。




お母様は、リリアン御姉様にも首を横に振る。




「リリアン、貴女も恋人がいるでしょ?隠しても分かるわ。」




リリアン御姉様は何か言いかけようとするが、




「皆、ありがとう。わたくしに、ついてきてくれることはないわ。一人で出ていくつもりでした。シャベールはアンドリエ公爵家の嫡子、ギオレットはまだこれから国に必要です。ノーレンも、アンナも、フレアも婚約者がいます。リリアンは恋人もいます。そんな未来がある、貴方たちを連れてはいけないわ。気持ちだけ頂くわ。ありがとう。」






·····お母様····




「さて、シャベール、ギオレット、そろそろ屋敷を出ないと間に合いませんよ。」




お母様はそう言い、シャベールお兄様とギオレットお兄様が座っているの所へ行った。




そして、シャベールお兄様を包むように頭から抱きしめた。


「わたくしは、本日中に出ていきます。シャベール、アンドリエ家と、皆をお願いしますね。」




次はギオレットお兄様を抱きしめる。


「ギオレット、シャベールと一緒に皆を頼みますね。」




そして、抱擁をとき、二人に早く出るように促す。


シャベールお兄様もギオレットお兄様も、暗い面持ちで出てきます。




ギオレットお兄様が先に出て行き、シャベールお兄様はドア前で立ち止まり




「母上、さようならとは言いません。必ず会えると信じてますから。····いってまいります。」




シャベールお兄様はそう言い出て行った。






「さあ、貴女たちも出かけないといけませんよ。」




私たちにも、学校へ行くように促す。




私は····




「私はお母様についていきます!」




「フレア!?何を言ってますの?貴女にも···」




お母様は驚いたように言う。御姉様たちも驚いた顔でこっちを見る。




「お母様、お忘れですか?ローラン様とは、仮の婚約者です。正式ではありませんわ。婚約を解消しても、大きい影響はありませんわ。」




「フレア····」




「それに私は剣術も少しですが出来ます。お母様を護れると思います。料理も少なからず出来ますし。」




「···フレアでもね···」




「それに···私は元々、爵位持ちの処へはお嫁入りしたくなかったのですもの。平民になって、念願だった一夫一妻の処へ嫁げますわ。」




「·····。」




「フレア···貴女、そんなこと思っていたの···」




はい。ノーレン御姉様···。




「さあ、お母様、荷造りしましょう!」




私の決意が固いと思ったのでしょう。お母様は諦めたように、ふうと息を吐き




「····わたくしは、もう荷造りは終わってますわ。すぐにでも出ていくつもりです。」




お母様、早っ!




「私もすぐしてまいります。お待ち下さい。」




私は急ぎ、自分の部屋に行き荷造りを始めた。


必要な下着、地味な服など詰め込んでいく。造り置きしているマヨネーズや醤油も入るだけ入れる。貯めていたお金も荷物の奥に入れる。




実は、マヨネーズと、醤油は知り合いの調味料とか売っている所で置かして貰っている。値段は高めに設定したけど、結構人気で売れてて、入荷待ちの人もいる。その分を差し引いて鞄に入れた。


先払いをしてもらってるから届けないと···。セバンにでも頼んで、持って行ってもらいましょう。




あとは···ローラン様から貰った、ププレ草のデザインのアクセサリー。


悩みましたが、記念に···持っていっても大丈夫だよね···?




ローラン様···ごめんなさい。教会に行く約束は出来そうにありませんわ。




そうだ、お手紙を書かなくては···。




私はローラン様にお手紙を書きました。書いている途中に何度も涙が出そうになりましたが、グッと堪えて書く。




『ごめんなさい』の言葉しか見つかりませんでした。




あとは、学校の退学届けを書いた。




支度が済んで、階段を降りると、皆玄関ホールで待ってました。




「お待たせしました。」




ノーレン御姉様が、私の前に来て、普通の剣より一回り小さな剣を差し出してきた。




「ノーレン御姉様、これは?」




「これは、シャベールお兄様が12歳まで使ってた剣よ。倉庫にあったのを思い出したの。」




「でも、人の物を勝手に···」




「いいのよ。だってもう使ってないんですもの。シャベールお兄様には私から言っておくわ。お母様を護るなら剣はいるでしょ?」




確かに···護る道具が無ければ、護れるものも護れない。




「それに、鞘の真ん中にあるルビーには、お父様の魔力が込められてるわ。本当に危なくなったら、自分の魔力をルビーに送るの。そうしたら、お父様が感知できるようになってるの。直ぐにでも、助けに来てくれるわよ。」




お父様凄いですわ。ですがその時は居場所がバレますわね····。




「ありがとうございます。有り難く頂いておきますわ。」




私は剣を鞄の中に入れた。




私はリリアン御姉様に、学校に退学届けを渡した。


「リリアン御姉様、よろしくお願いいたします。」




「····。」




リリアン御姉様は無言でしたが、受け取ってくれました。




「行きましょうか。」




お母様の言葉で皆動く。


セバンには、ばっちり調味料のことと、ローラン様のお手紙を頼みました。






玄関先では、執事のセバンの含めメイドや、料理人たちが待っていました。




お母様は、それぞれに今までのお礼の挨拶をしていった。皆、別れを惜しみ涙ぐんでました。




お母様と、私たち四姉妹は馬車に乗り街へ。


因みに御姉様たちは学校を休みましたわ。










街に着き、そこからは一般の、馬車へ乗り換える。




御姉様たちとは、この街でお別れです。




「では、ノーレン、アンナ、リリアン、ここでお別れです。お身体に気を付けて····貴女たちの結婚式が見れないのが残念だけど、母は遠くから幸せを祈ってます。」




「お母様!結婚式に参加してもらうつもりです!例え、平民になろうが、私たちの母はお母様一人だけなのだから!」




ノーレン御姉様···




「もちろん、フレアもよ!」


と、茶目っ気にウインクする。




「お母様、落ち着いたら連絡をくださいね。」




アンナ御姉様がお母様の手を取り言う。




「ええ。落ち着いたら連絡するわ。」




お母様は約束してくれました。




 ピッピーという笛の音が聞こえた。




「お母様、お時間のようです。」




「ええ。」




お母様は一人一人抱きしめる。私も一人一人の御姉様に抱擁した。




そして、馬車に乗り込み、一番後ろの席に座った。




「ヒ、ヒーン」


馬の鳴き声で出発した。




御姉様たちは身を寄せ合い、涙を流しながら私たちを見ている。


私もお母様も後ろを振り向き、お互いが視えなくなるまで、その光景を見つめていた。




お互いに、さよならは言わなかった。シャベールお兄様の言う通り、また会えると信じてるから···。

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