閑話② ノーレン視点




 「ノーレン、綺麗だよ。」




 男性の手が私の顎取り口づけをしてきた。そのまま首へ。私はこれらの行為を受け入れ身を任せた。




 私の名はノーレン·フィン·アンドリエ、15歳。


 英雄と詠われるダン·フィン·アンドリエの長女して生を受けた。父の美貌、母の大きい胸など、良いとこ取りを受け継ぎ絶世の美女と言われている。良い見た目に産んでくれた両親には感謝してるわ。




 三歳であまりの可愛さに初誘拐されました。その時は貧乏貴族の子男爵で、デブでニキビがいっぱいあって気持ち悪かったわ。触られた時は鳥肌が立ち「やめてー!」と泣き叫びました。数時間で助け出されましたが、かなりぎゃん泣きしてしまいましたわ。今思い出してもゾッとします。




 それからは七歳くらいまで数回誘拐されてしまいました。時にはその時にいた使用人だったりした。そのときに自分は凄く可愛いと認識しましたの。


 誘拐があって周りには常に護衛がいて窮屈でした。学校の送り迎えはもちろん、お父様が学校に許可を取り授業中まで監視されてました。男の子と会うのに苦労しましたわ。






 私の家族は両親に六人兄妹。子沢山です。それに父には妾三人、愛人数名。なので兄妹はもっといると思いますわ。




 私の兄妹は美形兄妹と有名でしたが、一番下の妹フレアだけ、産まれた時から華やかさがなかった。アンナはあまり覚えてませんが、リリアンを見たときには華があり可愛く感じたのを覚えています。フレアは、お母様の顔が美人とは言えないのでお母様に似たのでしょう。ただお父様が、産まれたフレアを見た時には目尻が下がって抱っこしたのを見てびっくりしました。アンナやリリアンが産まれた時にはそんなお顔をされてなかったと思います。




 私は周りから常に異性がいて、蝶よ花よと、ちやほやされました。私の可愛さなら当然と言えますわ。ふふふ。




 私の胸は八歳には、周りの女の子たちよりかなり大きくなってました。ますます男性は私の虜になっていきました。




 初キッスは六歳の時。五歳上の伯爵の次男でした。とても格好良くて、優しいかったのと興味でしちゃいましたわ。




 初体験は10歳の時。10歳ですので大人の方のは受け入れるのは難しいと思い、私の許嫁候補の二歳上の公爵嫡男と結構好みでしたのでしましたわ。それでも痛くて暫く寝込んでしまいました。




 それから数日後に、王族主催の夜会へ初めて行きました。その時に遠目ですが初めてムーフォンス王子様の姿を拝見しました。


 まさしく、私の好みにドンピシャ!


 残念ながら周りが大人ばかりで、近づくことも出来ませんでした。




 次の日にムーフォンス王子様のことを聞きました。やはり凄い人でした。努力もされてるし、次期国王としは申し分ないとお父様が太鼓判押してました。




 ムーフォンス王子様を好きになってしまいました。そして許嫁候補の方とは別れ、ムーフォンス王子様のところへ嫁げたらと思い、どうすれば嫁げるかとお母様に聞きましたわ。


 まず、生娘であること。爵位も高位の方がいい。気品があり、教養もあること。


····ほとんど私に当てはまりますが、ひとつだけ生娘であることが当てはまらない。


 ····失敗しましたわ···。


 後悔先たたず···。




 私はムーフォンス王子様の花嫁を諦め、多数の男性の方との駆け引きなど楽しみました。




 そして諦めてましたが、チャンスが訪れました!


 ムーフォンス王子様の花嫁探しの舞踏会の招待状がきたのだ。


 しかもお母様曰く、側室も考えているそうで、側室なら生娘でなくてもいい、と。


 正妃は無理だから、側室でもいい!彼の側にいれるなら!




◆◆◆◆◆◆◆◆◆




 舞踏会当日




 私は気合いを入れました!私に似合うセクシーなドレスを選ぶ。大人の色気の雰囲気を出す為、赤色主体で胸を強調し目立つように仕上げた。




 妹のアンナもリリアンも良い感じのお似合いのドレスを着用していた。


 アンナにもリリアンにも負けませんわよ!


 フレアは···何か可愛いドレスを着ていますね。全身ピンク色のドレスで頭に大きなリボン。


·····一言で言えばお子様だわ。フリフリとリボンがやたら目立つ。顔が可愛がればかなり様になり、少し脅威かもしれないけど、平凡だから似合うとは言い難いわね。八歳だし、フレアは有り得ないわね。




 




 舞踏会会場に着くと、きらびやかなご令嬢(敵)がわんさかといた。


 しかも、キーキー言ってる人がいる。どうやら、どこかの王女のようね。あんなのが王女なんて、その国はたいしたことないわね。従者を怒鳴るなんて醜いわ。


 そんな王女の姿を見て、負ける気はしませんわね。




 そうこうしている内に王族が入場し、舞踏会が始まった。




 直ぐ様ムーフォンス王子様の所に行くが、既に周りはご令嬢方に埋め尽くされていた。


 ちっ!思わず舌打ちをしてしまいました。はしたない。反省ですわ。




 一応順番待ちをし、


 「ノーレン·フィン·アンドリエと申します。この度はお誕生日おめでとうございます。」




 あまりにも人数の多さに挨拶程度しか出来なかった。取り敢えず、ダンスを誘うタイミングを見計らっていたのだが、急にムーフォンス王子が輪から離れて行った。 




 どうしたのでしょう。これはチャンスかしらと周りを見る。皆様同じ事を思っているようで、目線で牽制し合う。




 すたすたと歩いて行った場所は···




 『フレア····』


 ムーフォンス王子は食事をしていたフレアのところへ行った。




 『なぜフレア?』




 呆然として二人を見ていた。




 見ていたら、フレアがムーフォンス王子に引きずられるように王族の方へ連れて行かれていた。




 国王様と談話をしている。そしてムーフォンス王子様がケーキを持ってきてフレアを渡した。


 『私でも王族と挨拶程度しかお話したことないのに···しかもあのケーキの王族専用のケーキでは···』




 私はフレアに嫉妬した。しかもケーキを食べた後はダンスホールへと、また引きずられるように連れて行かれている。




 『ムーフォンス王子様とダンスをできるなんて羨ましいですわ。』




 そしてまた嫉妬····。多分フレアは悪くない。でも嫉妬をしてしまう。ホールに行く時に目が合ったけど思わず睨んでしまったわ。




 ムーフォンス王子とダンスを終わったフレアは逃げるようにこちらに来た。


 私が問い詰めましたが、あまり納得いく理由では無かったですが、フレアと話をしている内に他のご令嬢に先を越されてしまったわ。そっちの方が先決です!


 私は急いでムーフォンス王子様の元へ行った。






◆◆◆◆◆◆◆◆




 次の日にフレアを部屋に呼びだした。なぜかアンナとリリアンもいる。




 お互いに情報交換をする。フレアの意思も確認した。




 フレアにムーフォンス王子様に気がないというのを聞いて、正直ホッとしたわ。明らかにムーフォンス王子様はフレアに興味を持った気がしますわ。




 アンナが昨日の王女たちのことをフレアに教えていた。




 あれが本当に一国の王女様なのかと思うほどだった。ムーフォンス王子様が自分より早く小さい子どもと踊ったのが気に入らなかったらしく、癇癪を起こしていた。




 他国へ来て我が儘し放題。昨日は国王様も困っていたわ。


あんな人たちが正妃になったら大変だわ。国の品質を問われるわね。




 次に夜会でムーフォンス王子様に会ったら、必ず自分を売り込んで見せますわ! 








◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




 そのチャンスは直ぐやって来た。


 今度の土曜日に王様主催の夜会を開くとのことだった。


 その招待状はフレアと両親のみにきたらしい。


 またフレア····。


次回の夜会はジャンヌ王女とルルカ王女の歓迎会と称して、ムーフォンス王子様のお見合いの二次回らしかった。(お友達の情報ですわ)




 フレアに招待状がきたということは、そういうことだという事···。


 ですが、フレアはローランからその夜会の、パートナーの申し込みがきて受けたと言っていた。フレアには本当にその気がないと認識した。


 私はすぐにお父様に夜会に参加したいとお願いした。宰相であるお父様なら絶対に許可が貰えると確信しているから。


アンナとリリアンも、自分たちも行きたいと言っていた。








 夜会前日に衣装の御披露目会をしました。


 私は気合いを入れて、色気が増す黒をベースにしたドレスを仕立てた。何度も採寸して、乳◯がギリギリ隠れる位まで自慢の胸を魅せる為、大胆に胸の部分をばっさりと開けた。ボディラインを見せる為、ふんわりドレスではなくスラリとした仕様にした。




 「ノーレン御姉様、凄いセクシーなドレスですね!きっと御姉様に似合いますわ!」




 フレアが目を輝かしながら言ってきた。


「ありがとう。ふふふ」




 フレアのドレスも凄かった。ローランが贈ってくれたのだが、純白のドレスだった。かなり豪華に仕立てていた。可愛く散らばれた宝石だけでも凄い金額になってるわね。しかも、アクセサリーまで贈っている。


 本当にフレアが好きなのね。フレアに気があるのは、傍目から見ても分かった。


 フレアが八歳になり、社交デビューしたから早速行動に移したらしい。




 ローラン様、頑張ってくださいね。




 心から願った。






 夜会当日




「え?お母様も行くのですか?」 




「ええ。」




「珍しいですわね。お母様が夜会に行かれるなんて。」




 本当に珍しい。お母様は夜会とはほとんど出席しませんのに。どういう風の吹き回しでしょう。




 「マリアがドレスを作ってくれたのだけど、夜会に着て宣伝して欲しいと言われたのよ。」




 マリアとは、お母様の幼なじみで服屋さんを経営している。一応伯爵夫人の方ですが、凄く行動力がある人でいつも元気なイメージがありますわ。お母様のドレスは、マリア伯爵夫人がいつも作ってくれているのです。


 因みに王妃様も幼なじみらしいですわ。




 「そうですの。お父様は知ってらして?」




 お母様はちょっと困った顔し 




 「言ってないわ。今日の夜会は行く気がなかったので、参加しないと言ってるわ。」




 まあ、それなら早くお父様に知らせないと!と、言うと




 「ヴィアインがパートナーとして行く事が決まってるから言わなくていいわ。」




 ヴィアイン。お父様の妾の一人。実家は伯爵。我が儘したい放題の人。お母様も良く我慢してるわと思う。きっとお母様が参加すると言ったら、お父様はお母様をパートナーとして連れて行くでしょう。ドタキャンしたらまた、ヴィアインが来て煩くすることが分かってるからお母様は、このまま一人で行こうとしているのでしょう。




 「分かりましたわ。」




 そして、お母様の衣装を見て驚いた。お母様がいつも着るような地味なドレスではなかったからだ。


 お母様にしては、かなり大胆なドレスだった。私とは反対の背中の部分がパッカリ開いていて、肩、腕部分も布が無いデザインだった。




「斬新なデザインだわ。きっと流行るわね。」


 さすがマリア伯爵夫人だわ····。






 そしてローランがフレアを迎えに来てから、皆で王城に向かった。




 夜会会場に入ったら、早速声を掛けられる。


 「ノーレン嬢、こんばんは。今日も綺麗だね。」


 「ノーレン様、ご機嫌麗しく。本日のパートナーはお決まりですか?」




 私は男性達に周りを囲まれる。


 「皆様、ご機嫌よう。」




 私はにっこり微笑み挨拶を返す。夜会が始まるまで男性達の相手をした。その間少しざわついた時が有りましたが、何だったんでしょう。


 ふふふ。モテる女は辛いですわ。




 夜会が始まり、ムーフォンス王子様は王女達を相手にダンスをしていた。今回は彼女達が主役なのだから仕方ない。ムーフォンス王子様が彼女達の相手をしている間は、他の男性と踊ることにしましょう。誰が私と踊るか取り合いになったことは言うまでもありませんわ。




 ダンスはお二人の男性と···では収まらなかったので最終は五人の男性と踊った。




 「また出遅れましたわ。」


 ムーフォンス王子様と踊るべく探す。




 見つけた時は、フレアと王女様たちがいた。




 またフレア···ローランはどうしたの?


 周りを見渡すと、ローランがホールの方で女性に囲まれていた。


 ため息が出るわ。ですがすぐにローランがフレアのところへ行くのが見えた。


 これはムーフォンス王子様に近づけるチャンスですわね。


 私はさりげなくフレアに声を掛け、ムーフォンス王子様の元へ向かった。


 それからは女同士の戦いでしたわ。


 王女様たちはキャンキャン吠えて煩かったですわ。時間がかかりましたが、もちろん私の勝利ですわ!いつの間にかフレアとローランは居なくなってて安心しましたわ。




 ムーフォンス王子様と会話をし、念願のダンスをした。至福の時でしが、すぐに崩されました。フレアが倒れたみたいで騒動になっていたからです。ムーフォンス王子様も血相を変えてフレアの元へ向かった。


 フレアとローランとお母様が帰った後でまた話す機会が出来ましたが、他のご令嬢や王女様たちの邪魔が入りそこで接触は終わった。夜会が終わったら二人で会いたいとお誘いしましたが、やんわりと断られました。自信があったので少しショックを受けましたわ。






◆◆◆◆◆◆◆




 次の日の朝食時にまたもやショックな出来事があった。


 それはフレアにムーフォンス王子とリンクス王子からの婚約の打診があったという事。しかも正妃にと···。処女だからその資格が十分にあると思うが···リンクス王子はともかく、ムーフォンス王子まで····。驚きとショックを隠しきれません。




 フレアは二人の申し込みを断って欲しいと言った。私はすぐに代わりに側室に行くとお父様に申し上げ、国王様に打診してくれると言ってくれた。




 朝食の後は私の部屋へ集合し、四姉妹でお茶会をした。初めて妹たちと男性経験のお話をしました。大いに盛り上がりましたわ!




◆◆◆◆◆◆◆◆




 数日後、側室のお断りの返答がきた。あくまでフレアの方と結婚したいからと···


 自分に自信があった。どこが、フレアに劣るというのでしょうか。美貌も教養も男性の悦ばせ方も私の方が上だと思うのに···。


 私には解らなかった。でも一つ解ったこと。


 「私には全く脈はありませんのね···」


  目から頬へ涙が伝う。




 諦めも肝心ですわ。脈がないのにいつまでも追いかけては行けませんもの。前に進まなくては。


 私は15歳。来年には16歳になり、結婚できる年齢になる。私は公爵の娘。長女である以上行き遅れは出来ませんわ。妹たちの為にも···。


 来年には婚約者を見つけなければならない。きっとお父様も縁談を持ってくるでしょう。




 ただ今は···今は私(花)に群がる蜜蜂たち(男性たち)に慰めてもらいましょう。


 

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