第2話
雨の日は君と会えるから
2
「えぇっ!?もみっちゃんそんな理由で昨日、降りかけたの!?」
優希は大声でそう言った。
「ちょー。さすがに声大きいって!ゆきー!」
陽菜が優希に言った。
その宥める超えも大きく、クラス中に聞こえ渡ってしまった。今日は昨日と違い雲ひとつない晴天だ。
しかし、私の心は今日も曇天極まりない。
昨日、思ったより元気にしていた桜花と、みんなで桜花の家で
私が後ろ姿の他校の男子を見て気が気でないことを3人に話してしまった。
それからずっとこんなふうに質問攻めだ。
でも、曇天でも、何故かこの気持ちは悪くない。早くもう一度、今度は正面から、あの人と会ってみたい。でも、今日は行きの電車で彼とは会わなかった。
「えー。でも気になるねー。その人。前から見てみたくない?」
陽菜が私の方を向いて言った。
「正面から見ちゃうと幻滅ーとかあるかもしれないよー?」
桜花が陽菜に言った。
「うわぁー、そっかーそれなら後ろからのまんまの方が!みたいな?なんかいいねぇー」
優希も口をはさむ。
「ちょっとちょっと!みんなやめてよー!そんなんじゃないのー!」
必死に私も抵抗したが無意味だった。
「そんなんじゃないわけないでしょー」
優希がまた笑いながら言った。
「今度また会えたらいいね」
桜花が優しく言った。
その時、チャイムが鳴った。席替えをしてから4人とも席はあまり近くない。陽菜は同じ班だが授業中に喋れる距離ではない。3人とも私の席の近くにいたので各々の席へゾロゾロと散って行く。
そんなんじゃない。と私は言ったが、授業中もふとまだ後ろ姿しか見たことない彼の事を思ってしまう。
彼は雨で暗くなった心を照らしてくれた太陽だ。
なんてことを思っていた。そーだ。これから彼のことを知るまで彼の事は『タイヨウくん』て呼ぼう。そっちの方が呼びやすいし。.....名前におなじ『よう』が入ったことに嬉しさを感じた。多分彼、『タイヨウくん』の本名が何なのか知らないけれど。あー次会えたら声かけたいな────
「えー、今日25日だからー...萩月か。この問題の答え、はい。」
突如先生に当てられた。
「ふぇ!?、あー、あー...分かりません。」
そりゃそうだ。話を全く聞いていなかった。
「あー、そうか。じゃー26番で...葉月。分かるか。」
私の出席番号の次は陽菜なのだ。陽菜に迷惑かけてしまった。
陽菜はスラスラとノートに書いている答えを読んだ。
先生の陽菜を見る満足気な顔に私はため息をついてしまった。
何してるんだろ私...
そして、その日の夕方、私は学校の自習室で少し課題をしてから一人で帰路についた。陽菜も優希も桜花も今日は部活で帰るのが遅い。野球部も吹奏楽部も毎年それなりの成績を残しているのでかなり遅くまで厳しくやっている。
午後の微妙な時間帯。電車に乗る人は疎らで、学生くらいの人も少ない。私はこの時間もあまり好きではない。
周りの人が少なすぎて、少し不安になる。喋る相手もおらず憂鬱な時間だ。
私が乗ったのは各駅停車の電車だった。帰宅に急いでいるわけでもないのでゆったりと好きな音楽を聞き浸り少しウトウトしかけていた。
その時、私は電車が止まった振動で目が覚めた。
無駄に目が覚めてしまったなと思いつつ再び夢うつつになりかけた時、目の前にある男子生徒と思われる人が通った。その人を見上げるのが遅れたことで私は後ろ姿しか見れなかった。
しかし、私にはそれだけで誰か十分にわかった。
彼だ。『タイヨウくん』だ。
慌てて席を立とうとしたが目の前に、おもたそうな荷物を下に置いているおばさんがいた。
なぜこんな時に限ってちょっと混んでいるのだ。
動けない私はやむなくそこから再びイヤホンを耳にさし空いてる席を探す彼の後ろ姿を見るだけにとどまってしまった。
空いていた席は少し遠く、
その席に座るところを見届けられぬまま見えなくなってしまった。
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