雨の日は君と会えるから
鵜坂 数
第1話
雨、それは大気から水滴降ってくる現象。またその水滴。
人によっては雨が好きじゃない人も多いだろう。
外に出ることが好きな人や、晴れが好きな人。私、萩月 紅葉(はづき こうよう)も雨は好きじゃない。けど、雨の日は好きだ。
だって、雨の日は君と会えるから。
出会いは4月、私は入学したての高校一年生。受験のために訪れた時より幾分か暖かくなってきた春の陽気という感じの時期。通学で使う電子定期にようやく慣れてきた頃だった。
この頃はまだ雨の日は嫌いだった。
私は最寄りの駅まで自転車で行っているのでその距離を歩いていかなければならない。
しかもその日に限り、体育があり荷物が多かった。
この駅に毎日行くようになって、同じホームの同じあたりで電車を待つ人がだいたい把握してきた頃だ。
普段は空いているのだが、雨の日は普段自転車で学校や職場まで行っている人も電車を使うので車内もホームも混んでしまう。座れないかもしれないので本当に嫌な日だった。
人が多いなぁとホームに続く階段を降りていると、私の高校に入っての友達第1号でクラスメイト、葉月 陽菜(はづき ひな)がいつものとおりの階段をおりてすぐ左の位置にいた。
「おはよー。ひなちゃーん」
私は少し駆け足気味に階段をおり、陽菜のところへ歩いた。
「おー。おはよーもみじちゃん。結構ギリギリだね。雨だから?」
陽菜は私のことを「もみじ」と呼ぶ。クラスでの自己紹介の時に担任の先生が私のことをはづきもみじさんと呼んでから友達の中ではもみじとかもみじちゃんと呼ばれている。
「そーなのー。雨って混むし歩くのしんどいしやだよねー。」
私は陽菜にそう返した。
「ほんとにねー。今日座れるかなーやだなー立っとくの。」
私たちの高校は最寄りから10駅ほど。途中で急行乗換で25分程度で高校近くの駅に着く。そこから歩いて5分程に高校は立地している。
「そーだねー。今日は急行乗り換えしないで行っちゃう?そっちの方が座れそうだしねー。」
急行乗換で多分、かなりの人が降りるからそこで座ろうという考えだ。
「そーしよ!」
陽菜がそう言った時に、電車が駅に着き、2人は乗った。
2人は扉近くに立って電車に揺られながら話したり、スマホを触ったりしていた。
乗ってから2駅めで、私の友達2人目、これまたクラスメイトの柊 優希(ひいらぎ ゆき)か乗ってきた。
「おはよー2人ともー!」
優希は私たちの中でもクラスの中でもかなり明るい子だ。ルックスもとてもいいしモテそうなイメージだ。
2人ともおはよーと返した。
「あれ?おうかちゃんは?」
私は優希に言った。
「今日ー、桜花休むっていってた!熱出ちゃったらしい...」
春野 桜花(はるの おうか)は優希の幼なじみで無論、私たちとも仲がいい。3人目の友達だ。今日は熱で休みらしい。
「お見舞い今日行く?野球部、今日はオフだからいつでも行けるよ。」
と陽菜が言った。陽菜は野球部のマネージャーをやっている。優希と桜花は吹奏楽部だ。私は部活に入っていない。
「そーしよ!ゆきちゃん吹部今日あるの?」
私が賛成!といった口調で言った。
「ないから元々行くつもりだったの!みんなで行こー」
優希も同意した。これで放課後は埋まった。
そう話してるうちに、急行乗換をする駅に着いた。今日は私たちは乗り換えないが。
なにかすることも無く、私は開いたドア越しにぼやっと外を見ていた。
その時、男の子の姿が目に止まった。同じ高校ではない。それに惹かれて私は何故か思わず、ドアの外に出てしまった。そして追いかけるように彼の後をついていこうとした所で、陽菜に肩を掴まれた。
「え、もみじちゃん!今日こっちでいくんじやなかったの!?」
驚いて、陽菜が言った。優希も陽菜の後ろにいた。
「あ、ほんとだ。ごめん。」
私は笑いながら、言った。しかし、目は違うところ、彼のところを見ていた。彼はこの駅で降りるらしく、階段を昇っていってしまった。
3人は再び電車に戻った。あいにく、座れる席があったため3人並んで座った。
電車が進んでも私は彼のことが頭から離れなかった。
顔も見えなかったのに、何故かいきなり彼に惹かれた。
どうしたんだろう。いくら考えても理由がわからず、その気持ちはまるで今の空模様のようにどんよりとしていた。
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