第21話 共振2

「で、どうだったの?ジークフリートとは」

「?、なにがですか?」


 ミューラの曖昧な質問に、アリアは真剣に考え込む。


「だから、そのぉ〜、激しくされた?それとも優しくしてもらった?」

「はい?」


 再びの曖昧な質問に、首をかしげたアリアだったが、すぐにその顔が紅潮する。


「ち、違いますよぉ!なに考えてるんですかっ!邪推ですよ!じゃすい!」







「へぇー、共振!ずいぶんとレアな体質だね!」


 場所は変わらず、グリアモール家別邸のリビング。

 アリアの説明を聞いたミューラは、納得がいったというようにうなずいて見せた。


「やっぱりレアなんですか?」

「うーん、わたしは聞いたことないな。リーシャは?」

「知り合いに1組いますが、珍しいと思いますよ」

「そうなんですか」


 アリアがそう呟くと、リーシャはミューラとアリアを交互に見つめ、口を開いた。


「お二人ともあまり知らないようですので、ここはひとつ、私が共振についての講義でもしてみましょうか」


 とたん、アリアの目が輝いた。

 つくづく好奇心の強い子だな、と内心考えながら、ミューラとアリアの正面の椅子に腰を下ろした。


「共振というのは、マナの相性が良い、という意味で使われます。ここまでは知っていますか?」


 2人が頷くのを確認して、続ける。


「共振状態の2人、特に男女のペアはとても重要な意味をもってきます。マナ同士がぶつかっても消滅しないということはつまり─」

「あー、分かっちゃったかも知れない」


 今まで沈黙を続けていたミューラが申し訳なさげに手を上げる。


「男女のペアが重要って、要するにさ──」


 チラリとアリアを見て、一呼吸置いてから続きを口にする。


「子供がマナ能力者になりやすいって事じゃない?」





「…へ?」


 ミューラの言葉にアリアは言葉を失った。その一方でリーシャは満足げにうなずく。


「さすがですお嬢様。どのようにしてそのような考えに至ったのか教えていただいても?」

「むかし、考えたことあるんだ。

マナ能力者同士の子供でもマナを受け継げない場合があるのはなんでだろう?って」

「いい着眼点です」

「それでひとつの仮説を立てたの、その、マナ能力者同士の子供でも父親と母親のマナの相性が悪いと遺伝情報にマナは受け継がれないんじゃないかって」

「おそらくその通りです。共振に対してはまだ研究途上なので断定はできませんが」

「だって、アリアちゃん」

「えっ、わ、私がどうかしましたか?」


 途中からうわの空だったアリアは、慌てたようにミューラを見つめた。


「だってジークフリートは聖騎士パラディンクラスで、アリアちゃんは固有クラス。

子供のクラスは両親のどちらかが遺伝する場合が多いし、固有クラスは受け継がれなくてもその一部、最低でも聖騎士パラディンクラスは約束されたようなものだよ?」

「つ、つまり私とジークが、ってことですか?」

「ジーク?」


 書き慣れない呼び方にミューラが首をかしげる。


「まあいっか。──今のマナ能力者不足を考えたら、十分あり得るはなしでしょ、特に作戦局の幹部たちにとっては」

「いやいや、ないですよ!ジークと親密な関係になりたいのは否定しませんが、子供を戦力として考えるなんてこと、わたしにはできません!」


 しっかりとした信念をもって宣言するアリア。その赤い瞳に灯る光を見つめてミューラが納得したようにうなずく。


「なるほど、ジークフリートと親密な関係になりたい、か。なるほどなるほど…」


 全く的外れなことを気にするミューラ。

 言わなくてもいい事までを口走ってしまったアリアが遅れて口元を押さえる。

 ほんのりと赤くなっていた頬が茹で上がったように真っ赤になり黙り込んでしまう。

 そんな少女の頭に手を置いてミューラが呟く。


「がんばってよ?わたしの記憶ではジークフリートと会話してる同年代の人って見たことないから」

「…?」

「向こうも少なからず思ってるってことだよ」


 キョトンとする少女にそう耳打ちしたミューラはおもむろに立ち上がった。

 今まで黙っていたリーシャが紙袋を差し出す。

 それを受け取ったミューラはその中身を取り出してアリアに差し出す。


「これ!」


 それはつい先日ミューラに買って貰った私服一式だった。


「アリアちゃん体はもう大丈夫?」

「はい、訓練みたいなことは少し無理かも知れませんが」


 アリアはふふ、と自嘲気味に笑って服を受け取る。


「ちょっとお出かけしない?」

「いいんですか?」

「?、いいに決まってるじゃん!さ、着替えた、着替えた〜」


 全く緊張感が感じられない口調でアリアをうながすミューラであった。





 ミューラ、リーシャと共に総統府の1階へと降りたアリアは、総統府の正面に止まる車を見て声を上げた。


「そういえば私、セントラルで車見るの初めてです」


 グレイ軍港の近くではではよく見かけた車だが、セントラルで見るのは確かに初めてだった。


「ふふ」

「先輩?」

「セントラルで車を使おうと思ったら許可が大変なんだよ」


 得意げに言い放ち車に乗り込むミューラ。それに倣ってアリアも乗り込んだ。

 リーシャが運転席に座ったが、自動運転のため特に意味はない。

 車はわずかな駆動音と共に車が総統府を出発したのだった。





「どこに行くんですか?」 

「う〜ん、内緒、かな?でもすぐ着くよ」


 その宣言どうり、車は5分ほどで走り、大きなビルの前で停車した。


「大きなビルですね。何かの会社ですか?」


 降車したアリアが率直な感想をもらす。


「会社じゃと?クク、そんな訳はあるまい」


 そこに、ミューラでもリーシャでもない声が割り込む。

 アリアが振り向くとそこには、腰まで伸びる長い髪を持つ妙齢の美女が立っていた。


「久しぶりじゃない、ミューラ、

 











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