第4話 ミューラ=グリアモール

通常の階級クラスについて

闘士グラディエーター…高い防御力が特徴の階級。素手や棍棒メイスでの戦闘が得意とする。


魔術師マジシャン…攻撃系と支援系に分かれる。攻撃系の使用属性は2属性まで、支援系は結界からバフまで幅広くこなす。


剣士フェンサー/ソードマン…高い攻撃力が特徴の階級。


槍使いランサー…高い瞬発力と防御力が特徴。ランスの特性上、ランサーであってもランスを使いこなせるのはごく一部。


獣使いテイマー…動物を使役する。主に偵察や陽動作戦に向いているが戦い方は千差万別。


神官プリースト…回復魔法が優れた階級。パーティに1人存在するだけで、継続戦闘能力が大きく上昇する。


弓使いアーチャー…遠距離攻撃に優れた階級。高い視力強化と身体強化が行える。



     【魔導師教本 階級について】から抜粋




「無視して貰っては困るな。アリア=エリアス」



 男は相方が攻撃に移るのを待っていたのだろう。

だから、結界に綻びが発生しても慌てなかったんだろう。

 自分は攻撃が完成するまで私を引きつければ良かったのだろう。

 所謂時間稼ぎ、だが


 -時間を稼いでいたのは私も同じッ


 少女は内心勝ち誇る。

 ただ馬鹿みたいに結界を殴っていただけでは無い。

 結界と拳が触れるほんの一瞬、それを何度も繰り返し、マナの流れを

 男のマナは足元から地面に広がり、男の周りで半球を描く。マナは縦横、布を織るように結界を形作っている。


 一発勝負!


 心の中で呟き動く。脚力強化に使っていたマナを地面に流し、自身の背後に張り巡らせる。





「…結界術式」



 ボソっと呟かれた言葉を聞いた者はいない。

 無防備に見せかけた背中に岩の弾丸─先程までの石の槍とは比べものにならないマナのこもった─が

迫る。

 結界と弾丸が衝突し凄まじい衝撃が広がる。

 野次馬から悲鳴まじりの声が上がり、結界を張った男が目が驚きに目を見開く。




 が、弾丸を放った男が



「…ッ!?」



 込められたマナの総量が違い過ぎる!!

 片や時間をかけた攻撃、片や見よう見まねの結界。

 結果は火を見るより明らかだ。

 結界にヒビが入る。すぐさま修復しようとするが崩壊の速度の方が早い。

 結界が消滅し、直撃すれば間違えなく大怪我、下手したら死亡もあり得る石の凶弾が迫る。

 刹那、何処かから飛来したが石の弾丸を貫き、少女を救った。




「そこまでだ!」



 凛々しい女性の声が響き、野次馬を含めその場にいた全員が振り向く。



 野次馬のさらに背後に声の主はいた。

 肩まで伸ばした桃色の髪、前髪で右目を隠していながら、その美貌を窺わせる薄紫の左目。

 その場にいた誰もがその存在に一瞬硬直する。



「先輩!」



 1番早く我に戻ったのは、恐らく彼女を慕う少女だろう。

 内心怖くて仕方がなかった赤髪の少女は先輩に駆け寄った。



「本当は最後まで見たかったけど、怪我人が出ちゃうとね?」





 そう言いながら頭を撫でてくる先輩は野次馬の方を振り返る。



「さ!解散、解散!」



 先輩の手で払う仕草に、野次馬が散り始める。



 そして、



「なに私の後輩いもうとに手を出してくれてんの?」



 背筋の凍る様な声が2人の男に向けられる。

 この時点で結界を張っていた男は、女性の正体に気づき地面にへたり込んでいる。

 だが、ただ一人空気を読めない男がいる。



「なんだ?テメェは?」



 先程までと違い酔っぱらった様な声になった男は、不用意に女との距離を詰める。

 対する女は、はぁとため息をつき、腰に下げた袋に手を入れる。

 取り出したのは2センチほどの蒼い石。

それを無造作に地面に放る。

 石が地面に落ちるとほぼ同時に、男が肩を掴もうと



「気安く触るな。」



 ふたたび背筋の凍る様な女の声。

 男がギチッっと固まる。



「…え?」



 いつの間にか男の体にヘビが絡みついていたのだ。それも水でできたような半透明のヘビに。

 男が膝をつく。ヘビ男の首にまで絡みつき首を締める。

 少しの間暴れた男も1分とかからずに沈黙する。






「さぁ!帰ろっか?」



 まるで何事もなかつったように先輩は振り返る。



「でも、あの人達は?」


「あー大丈夫!憲兵がそろそろ来るから!」



 そう言いながら女は、何故か慌てながら腰の袋から石を2つ取り出した。

 色はオレンジ。それを再び無造作に放る。豪!地面に衝突すると同時に2本の火柱が上がり徐々に変化する。

 炎は意思を持った様に動き1つの形に変化する。

 即ち2匹の獅子へと。1匹は長いたてがみを持った雄の獅子、もう1匹はより戦闘に特化したような無駄のないフォルムを持つ雌の獅子であった。



「さっ乗った乗った!」



 アリアは、そう言いながら雌の獅子に跨る桃髪の先輩を横目に、自分の方に悠然と向かってくる獅子を見つめる。

 パッと見はほとんど普通のライオンだが、よく見ると体が炎で出来ている事に気付くだろう。

 先輩のこの能力は前にも見せてもらった事があるが、どうしても乗るのを躊躇ってしまう。

 既に先輩は男に巻き付いていたヘビを回収し、アリアを待っている。



「乗れるんですか?」



 仮にも炎の塊だ。確認は必須である。

 そうこうしているうちに、獅子の方が動いた。痺れを切らしたように頭をすり寄せてくる。

 不思議と熱くない。



「大丈夫、大丈夫!」



 そう言いながら第三寮舎に向かって走り出す先輩。

 アリアも慌てて、獅子に飛び乗る。即座に獅子が地面を蹴り先輩を追いかけ始めた。












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