第32話 流れもあへぬ 紅葉なりけり

『おはようございます。』

『あぁ~、おはよう。』

『いつもの?』

『はい、ありますよぉ。ルイボスティ−とソフトチキンとパクチーのサラダとハムとチーズのサンドイッチです。』

『ところで、昨日は雪さんの家で夕食をしたけど…用事で来れなかったのぉ?』

『えぇ?そんな連絡は来なかったけど…。』

『えぇ?そうなんだぁ。』

『もう、先生も鈍いなぁ。2人で食事したかっただけ何じゃない?』

『そうなんだぁ。』

『ハンバーグを食べてからたまっている原稿があったからすぐに帰ったけど…。』

『えぇ?ハンバーグを食べて帰っただけですか?それも、女性の家に行って?』

『そうだよぉ。えぇ?何か悪い事したかなぁ…。』

『そんな事はないけど…。先生らしいなぁ~ってねぇ。でも、次そんな事があった時は夜道は気をつけた方が良いかもねぇ?』

『そうかなぁ?気にする事でもないのになぁ?あぁ~、原稿が出来ているから持って行ってねぇ。』

『はい、ありがとうございます。』

『では、次の原稿が出来たら連絡しますねぇ。』


『もしもし、稲村です。』

『あらぁ~、どうしたのぉ。』

『ちょっと、嘘はつかないでもらえるかなぁ。私が雪の家に行くなんてぇ…それに用事があるから来れない?って?』

『しょうがないじゃない。瞬ちゃんを部屋に呼びたかったから。でも、あんなに鈍感だとは思わなかったわぁ。少年のまま…というかぁ~、ハンバーグを食べたらすぐに帰ってしまうし。』

『でしょ。それが先生ですからねぇ。』

『次こそは私のモノにするからねぇ。』

『はい、はい、頑張ってねぇ?』


『もしかして、まずかったかなぁ…。2人だけで逢うのは大丈夫だよなぁ?あれぇ、もしかして、雪さんは誘っていたのかなぁ…。冷静になったら、女性の家に上がるという事は…危ない、危ない。素直に答えてしまった。あの、冷たい視線は…。さぁ、仕事、仕事。気にしてもしょうがない。よし、やるぞぉ。』


今日の百人一首は

『春道 列樹〜山川は 風のかけたる しがらみは 流れもあへぬ 紅葉なりけり 』


20××年

『それにしても、素敵ですねぇ?』

『そうだねぇ。久しぶりに紅葉の時期にのんびりして、鬼怒川温泉は最高だなぁ?』

『そうですねぇ。先生、足湯がありますよぉ。』

『本当だぁ。少し、足湯をして行こう。』

『あぁ~、気持ちが良いですねぇ?』

『いやぁ〜、生き返るだなぁ…最高だなぁ。あれぇ、銀河鉄道999じゃないかぁ?』

『えぇ~、何処ですか?』

『あれだよぉ。』

『先生、あれは蒸気機関車SLの大樹ですよぉ。』

『解っているって…。蒸気機関車と言えば、銀河鉄道999だなぁ…ってなぁ。あの漫画はロマンがあったなぁ。』

『そうですねぇ。無料で機械の身体をくれる星へ旅をする話ですよねぇ?』

『えぇ~、知っているんだぁ。』

『もちろんですよぉ。』

『ところで、鬼怒川温泉は何が有名なのぉ?』

『そうだなぁ。かりんと饅頭や湯葉などが有名かなぁ。』

『そっか。それじゃ、そろそろ行きますかぁ?』

『そうですねぇ。ゆっくり温泉街を歩きながら旅館に行きましょう?先生、早速、かりんと饅頭が売ってますよぉ。食べましょう?』

『大丈夫だよぉ。』

『すいません、かりんと饅頭を2つ下さい。』

『はい。』

『ありがとうございます。先生、どうぞ?』

『あぁ、ありがとう。』

『どうですか?』

『うまいなぁ。外がサクッ、中がフワァだなぁ。サクッフワァジュワッだなぁ。』

『もう、先生ったら…まぁ、美味しいなら良かった。』

『おぉ~!川だぁ。見てごらんよぉ。』

『そうですねぇ。鬼怒川に赤、黄と素敵な紅葉が流れていますねぇ?』

『いやぁ、格別だなぁ。山は紅葉、川にも、紅葉の絨毯と最高だなぁ。』


『流れもあへぬ 紅葉なりけり。』


『はぁ!あちゃ〜やっちまった。また、寝てしまった。それにしても、最高だなぁ。鬼怒川温泉に一緒に行くのかぁ~。楽しみだなぁ。流石に紅葉の時期に休みが取れるのかなぁ…。あれぇ、これは…かりんと饅頭の包紙って?なんでかなぁ…』







  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る