第2話 天の香具山の麓には
『おはようございます。』
『あぁ…おはよう。原稿は出来ているよぉ。』
『あのぉ、昨日なんですけど…ちょっと、変な夢を見たんですよぉ。聞いてもらっても良いですか?』
『あぁ…良いですけど…次の作品にいかせると思うから聞かせてもらえるかなぁ?』
『笑いませんか?』
『いやいや、そう言う話はちゃんと聞きますよぉ。大丈夫だから話をしてもらって良いかなぁ?』
『では、話しますねぇ。実は昨日の夜に坂浦先生が秋の田んぼで稲穂の刈り取りのバイトをしていまして…途中で焼き肉定食を食べて私に連絡するんですよぉ。それがあまりにもハッキリしていて…それに私の手の中に稲穂があって…ビックリしたんですよぉ。』
『へぇ、そうなんだ…それは、ビックリだねぇ?』
『ちょっと、信じていないでしょ?』
『いやいや、そんな事があったんだぁ。あぁ…たぶん、初めてのお仕事で緊張してたんだよぉ。』
『そうかなぁ…だといいんですけど。』
『じゃ、明日も原稿を用意しているから、明日も宜しくねぇ。』
『はい、明日もお伺い致します。』
『さてぇ、会社に戻らなきゃ…横浜から新宿までは遠いなぁ…良かった、席が空いている。あぁ…今日は早かったから眠くなったなぁ…』
『それにしても、不思議だなぁ…同じ夢をみるとはなぁ…偶然なのか?それとも、すれ違いの奇跡なのかなぁ…』
『しかしなぁ…なんでかなぁ。米屋のアルバイトをしていた夢なんかぁ…見るなんてなぁ。それに、久美って誰なんだぁ?覚えてないなぁ。あれ、もしかして…そっか。昨日から、担当になった久美ちゃんだなぁ。なるほどなぁ…しかし、それにしても、変な夢だよなぁ。それにしてもラインなんて、便利なものも、なければ、ガラケーでメールによる連絡だったよなぁ。不思議な事が…あるものだなぁ。』
『まぁ、偶然、偶然。あるわけないでしょ。さぁ!今日も百人一首を現代版にアレンジして小説を書くかなぁ。昨日が『天智天皇』だったから次は…っと』
『持統天皇〜春過ぎて 夏来にけらし 白妙の 衣ほすてふ 天の香具山』
20××年
『はぁ、疲れたなぁ。最近、毎日仕事で休みがなかったなぁ…でも、今日は久しぶりの旅行でうれしいなぁ…あぁ…電話しなきゃ。先生、今着きましたよぉ。』
『えぇ!まだ、こっちに着かないんですか?寝坊したって、ひどいじゃないですか?』
『悪いなぁ…昨日も夜遅くまで原稿書いていたから…すまない。今から急いで行くからさぁ…夕方には着けるから。久美、大好きだぁ!』
『もう、それを言われたら怒れないなぁ…気をつけて来て下さいよぉ。待ってますからねぇ。先に天の香久山に行って写真撮っていますからねぇ…』
『悪いなぁ…明日、改めて一緒に行こうなぁ。』
『もちろんですよぉ。先に下見しておきますねぇ…』
『では、奈良駅に17時に逢おうねぇ。』
『はい、楽しみです。』
『あぁ…やっと着いたなぁ…天の香久山に!』
『案外、小さな山なんだぁ…でも、古き良き香りがするなぁ。昔は、素敵だったのかなぁ?それにしても、暑くなったなぁ…そう言えば、夏になるんだなぁ…もう、6月も終わりだなぁ…いたぁ!木の枝かぁ…もう。』
『そう言えば、天の香具山の麓には白い衣が干してあるのかなぁ…』
『あぁ!白い衣が干してある。写真に撮っておこうっと、先生見たらビックリするなぁ。『えぇ!マジかぁ、すげぇ!』って子供みたいに叫ぶんだろうなぁ…私にしか見せない姿はかわいいけど…』
あぁ…やだぁ、私ったら、電車の中で眠っていたわぁ。
それにしても、本当にリアルな夢だったなぁ…
あれぇ?私の手のひらになんで木の枝があるのかなぁ…不思議だなぁ…。
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