第15話 孤独の理由


 高校生になるまで、わたしはずっとひとりだった。



 小学生の頃、土日は母からピアノのレッスンを受けていたため、学校以外で友達と過ごすことはなく、週明けの教室ではいつも会話に馴染めなかった。


 休日を思い返して楽しそうにお喋りをする友達の輪に一応入って、なんとなく疎外感を受けながらも顔に笑顔を貼りつけて過ごした。


 そのまま中学生になると、クラスメイトとはほとんど自然に話せなくなった。


 休日をすべて母のレッスンに費やしているうちに、性格まで内気になってしまったらしい。知らない話題に作り笑いを浮かべることも、苦痛に感じるようになった。


 だから昼休みも、ひとりでいることが多かった。


 お弁当をひとりで食べている姿を気にかけて誘ってくれる子もいたが、素直にお喋りができない。


 いつもいつも作り笑い。


 そんな自分がとても惨めに思えて、二年生になる頃、ピアノを理由にわたしは進んで孤独になった。


 でも本当は体育祭や文化祭でクラスを盛り上げたり、なにかに向かってひとつになるクラスメイトの姿や、誰かと机をくっつけてお弁当を食べる昼休みに憧れていた。


 特にいじめられていたわけでもなかったし、ただ存在が薄いだけ。教室の中の空気となにも変わらない。


 幸いにもピアノの実力が評価され、行事のときにわたしがピアノを弾く役割になることもあったので、嫌われていなかったとは思うけれど、今となってはわからない。



 高校に入ったら部活にも入らせてもらう約束を母と交わしていた。


 そうすればやり直せる。


 もっと明るくて素直になって、友達もたくさん作って……、そんな高校生活を夢見ていた。


 今の高校を選んだ理由の半分も、知り合いがいないということからだった。



 高校三年生になって、決して多いとは言えないかもしれないけれど、クラスの内外に多少の友達がいる。


 特に美輝との出会いは特別だ。友達は『作る』んじゃなくて『なる』んだよと教えてくれたのも美輝だった。


 友達を作ろうと気を張っていたわたしは、それを教えてもらってから少しだけ素直な気持ちを伝えられるようになった。


 その中でも今後の人生においてこれほど大切だと思える友達は、美輝以外にいない。


 そう断言できるくらいわたしは美輝が大好きだし、その美輝のよさに気づいてくれて、大切にしてくれている怜のことも好きだ。



 そして、ふたりに対しての好きとはまた別の感情をわたしに芽吹かせてくれた結弦。



 みんなとの出会いが徐々にわたしを変えてくれた。


 だから今、わたしの居場所はここにある。



 ここにずっと、これからもずっと、わたしの居場所が変わらずにあるといいな……。





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