Mission046: 再動

 その頃、ゲルゼリアにあるAdvancerアドヴァンサー格納庫では。


「補給完了! ロックを解除します!」

「発進準備も完了! いつでもどうぞ!」


 ごく短時間で、補給などを完了させていたのである。戦場を把握していたMが、事前に準備させていたのだ。


「了解した! プロメテウス1より各機、補給が完了次第再出撃せよ!」

「「了解!」」


 パトリックのグリンドリンが、真っ先にカタパルトに両脚部を乗せる。瞬く間に加速し、空へと飛び上がって行った。

 それから30秒と経たず、プロメテウス隊のリクシアスが3機とも出撃してゆく。


「各機急げ! ゼルゲイド君の援護に行くぞ!」

『駄目だ。プロメテウス隊は、敵艦隊や艦載機の迎撃に当たれ』

「M! どういう意味です!?」

『ゼルゲイド様の援護に向かったら、我々は全滅しかねんぞ。仲間を集中攻撃して、別働隊に母艦を沈めさせる……ゼールドの計略だ』


 Mはあくまでも淡々と、命令を下す。

 しかしパトリックは、納得していなかった。


「だからと言って……彼は大切な戦力です! ここで失うには惜しすぎる!」

『アドレーネ様も同乗されている。心配は無用だ』

「アドレーネ様が!? だったら、なおさら……」

『くどいぞ、プロメテウス1』


 Mの言葉に、パトリックは押し黙る。司令官と部隊長では、どちらが上の立場かは明白であった。


『行動を開始した当初では、確かに不安になるだろう。だが、今のアドレーネ様は別だ。明らかに、変わっている』

「同乗させても、問題無いと……?」

『その通りだ。今のアドレーネ様は、お目覚めになっておられる。いらぬ心配は無用だ』

「……了解。各機、ゲルゼリアの護衛に当たれ」


 パトリックは不服そうにしながらも、命令を下した。


     *


「そこっ!」


 ダガーを突き立てんと距離を詰めるバルゼネーレを、しかしシュヴァルリト・グランはスラスターの微調整で難なくかわす。


「それは見飽きた!」


 左腕を突き出し、ビームを放つシュヴァルリト・グラン。

 バルゼネーレはスレスレのところで回避すると、お返しとばかりにレールガンを取り出して構えた。構え終えると同時に、銃口から高速で飛翔体が発射される。


「何度同じ手を……!」


 だが、今度は違った。次々と連続して、レールガンを放っていたのである。


「近づけないつもりか……!? くっ、逃がすか……!」


 逃げるバルゼネーレから、無線が飛んできた。


「悪いが、私は"六天将”という立場上、まだ死ぬわけにはいかんのでな!」

「逃げるつもりか……!?」

「ああ。幸い、逃げるには絶好の環境もある。決着は持ち越すとしよう」


 ゼールドはオープンチャンネルを止めてから、帝国軍用の回線に切り替えた。


「私だ。方位030、高度4500に艦砲射撃を寄越してくれ。狙いは甘くてもいい、撤退する時間が欲しい」

『了解』


 命令を受けた艦隊が、主砲や副砲を指定された方角に向ける。

 一瞬遅れて、一斉砲撃が行われた。


「さらばだ!」

「待て――」

『ゼルゲイド君! 今すぐゲルゼリアに来るんだ! 逃げろ!』

「ゲルゼリアに……!? うわっ!」


 パトリックの警告が聞こえた直後、シュヴァルリト・グランの周囲に砲弾やビームが飛来する。大した照準を付けていないこれらの砲撃だが、ゼルゲイドに追撃をためらわせる程度には有効だった。


「アドレーネ様、防御を頼みます!」

「……! か、かしこまりましたわゼルゲイド様。ただちに」


 いまだほうけていたアドレーネは、ゼルゲイドの頼みを聞くと同時に、一気に意識を現実へと引き戻す。


「いきますわよ……!」

「了解です! プロメテウス1、アドレーネ様、今からゲルゼリアに戻ります!」




 シュヴァルリト・グランは迫る砲弾やビームの嵐をかわしながら、ゲルゼリア付近まで後退を終えたのであった。

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