Mission041: 不視

「M! ゲルゼリアのレーダー出力を上げてくれ! 近くにまだ、敵がいる!」

「ゼルゲイド様? かしこまりました」


 意図を読めないMだが、ゼルゲイドの頼みは素直に聞いた。即座にレーダー手に命令を出す。


「レーダー出力を最大にせよ。新たな反応があったらすぐに知らせ!」

「了解……ッ、方位270に反応1!」

「ステルスか……」


 Mは無線機をひっ掴み、出撃中の全機に通達する。


「各機、傾注。ゲルゼリアから見て包囲270に、ステルス機の反応あり。用心して当たれ」

「「了解!」」


 無線機を置いたMは、心中で呟く。


(ステルス……ゼールドの機体か? そろそろベルゼード帝国も、本腰を入れてきたのかもな……)


 そしてすぐに、レーダー手に新たなる命令を下した。


「ステルス機の反応を追い続けろ」

「艦長? ですが、1機にこだわるのは……」


 レーダー手の反論を、Mは首を振って黙らせた。


「本艦のレーダーが、Advancerアドヴァンサーのそれよりもずっと高性能だ。そして、もしかしたら私は、敵の正体に心当たりがあるかもしれん。その予想通りであれば、Advancerアドヴァンサーのレーダーは意味を為さなくなる。データリンクし、反応も追うんだ」

「り、了解!」


 レーダー手は慌ててデータリンクを済ませると、レーダーを注視しだす。

 先程の反応はまだ、残っていた。




 その頃、ゼルゲイド達は。


「位置情報が来たか。覚悟しやがれ!」

「ゼルゲイド様。ご油断無きよう」

「承知しております、アドレーネ様! 行くぜ、シュヴァルリト・グラン!」


 ゼルゲイドが、反応のあった場所に先行する。


「おいおい、隊長! エクスカリバー突っ込み過ぎだろ!」

「安心しろ、プロメテウス2。彼はあの“六天将”とやり合った男だ。そう簡単には墜ちないだろう」

「けどよ!」

「放置はしないさ。プロメテウス隊各機は俺に続け、エクスカリバーを援護するぞ!」

「「了解!」」

「へーい、了解っと」


 デュランだけはやや不服そうに返事をするも、4機は見事な編隊を組んで反応のあった場所に向かった。




「そろそろか……ッ、反応があるな!」


 ゼルゲイドはレーダーを2次元から3次元に切り替え、詳細な位置を探る。空中戦が主体となるAdvancerアドヴァンサーでは、立体的に敵味方の位置関係を探れるよう装備を整えられているのだ。


「ですがゼルゲイド様、反応が薄いですわ。距離は近いはずですのに……」

「ですね。ここまでの距離でも、明確な反応を示させないほどのステルス性。これは厄介なことになるかと思います」


 ゼルゲイドは警戒を強めながらも、反応のある場所に前腕部のビーム砲を立て続けに撃ち込む。


「手ごたえは……無しか」

「そうみたいですわね……ッ、ゼルゲイド様! 左に急加速してくださいませ!」


 アドレーネの指示を聞くや否や、ゼルゲイドは操縦桿を動かしていた。シュヴァルリト・グランが噴射炎を吐き出しながら、一気に加速する。


 刹那、何かが電撃をまといながら、先ほどまでシュヴァルリト・グランがいた場所を通り抜ける。


「レールガンか……! けど、今のでどこにいるかは分かった!」


 どこから撃ったかまでは正確に見えなかったものの、ゼルゲイドは今の攻撃でおおよその方向を把握していた。


『エクスカリバー! 聞こえるか!』

「プロメテウス1! 今からビームを撃ちますから、その方向に向けて集中攻撃してください!」


 そこにプロメテウス隊も合流する。

 レーダーで味方の合流を把握していたゼルゲイドは、操縦桿に付いている引き金を引いた。


「あの辺りにいるはずだ……! 落ちろ!」

「そこか! 俺達も続くぞ、撃ちまくれ!」


 シュヴァルリト・グランがビーム砲を放つと、プロメテウス隊の4機もゼルゲイドに続いて実弾を撃ち込む。


「! 上に飛びましたわ、ゼルゲイド様!」


 と、アドレーネが飛行機雲を見つける。大気を切り裂くときに生まれる白く薄い線を、アドレーネは見逃さなかった。


「その機動なら……!」


 ゼルゲイドは移動先を瞬時に脳裏で予測し、短く引き金を引く。




 放たれたビームが何かに命中し、黒煙を噴き出させた。

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