Mission040: 無貌
ゼルゲイド達は敵機を次々と屠りながらも、数の多さに圧倒される。
「くっ、どれだけいるんだよ……! 一時退避、このままじゃ包囲されちまう……!」
「本気というわけなのですね。ですが、これほどの数……。指揮官機が全く見えないのが、不思議でなりませんわ」
「!」
そう。現時点での機種報告は、一般機のリクシアスだけなのだ。
“六天将”の機体、あるいは指揮官機のグリンドリンは、まったく確認されていない。
「確かに不思議ですね、アドレーネ様……ッ、1機逃がしちまった!」
「大丈夫ですわ、ゼルゲイド様。あれしきの数でゲルゼリアを落とすことは叶いません」
「分かりました、アドレーネ様。眼前の敵に集中します」
ゼルゲイドは意識を切り替え、再び、目の前の軍勢を屠りだす。
と、シュヴァルリト・グランのレーダーから、反応が一つ消えた。先ほどシュヴァルリト・グランの後方へと抜けた
「速い対応ですわね。それでこそですわ、M。そしてゲルゼリア」
「アドレーネ様?」
「失礼いたしました。何でもありませんわ」
アドレーネは軽く頭を下げ、ゼルゲイドに詫びる。それを見たゼルゲイドは、敵軍に包囲されるギリギリを飛びながら、1機ずつ確実に撃墜していった。
その様子を見ていたMは、次の指示を飛ばす。
「全ての艦載機を後退させろ。ミサイルの巻き添えになる」
「了解。VLSを使うのですね」
「その通りだ。数の減ってきた今こそ、決定打を狙う好機。素早く行くぞ」
Mの命令を聞き、オペレーターは素早くゼルゲイド達に命令を伝える。
「全機聞け。ただちに本艦より後ろへ後退せよ。繰り返す。ただちに本艦より後ろへ後退せよ」
数秒経って、5機全機が後退を開始する。
自身の背後に迫る敵機を
「何とか、ここまで来れたか……」
「ええ。ですが、私達が下がっただけ敵も近づいてまいります。ゼルゲイド達、ご油断無きよう」
「かしこまりました、アドレーネ様」
シュヴァルリト・グランが迎撃態勢を整えると同時に、プロメテウス隊も後退を完了する。
「M! 全機、後退完了した!」
「了解だ、プロメテウス1。VLS発射準備。襲来しつつある敵
「了解! VLS、発射準備!」
艦首から強力な、そして指向性を持ったレーダー波が放たれる。
ゲルゼリアに向かってくる全ての
「全ての敵機にロックオン完了!」
「よし。放て」
「了解!」
オペレーターの操作で、艦橋の前方――艦全体では
露出した全てのセル上部が開放し、内部のガスでミサイルを撃ち出す。そして、ミサイルの尾部が点火した。
近くで聞けば鼓膜が破れそうなほど猛烈な噴射音を伴い、百を超えるミサイルが敵
ゲルゼリアとの距離を詰めつつあった敵機は慌てて回避行動に移るが、その程度の小細工など高機動ミサイルには通じず、次々と爆炎に呑まれていった。
「敵機の反応、次々と消滅していきます!」
「予想通りの結果だ。しかし、嫌な予感がする。警戒態勢を解くな。光防壁の再展開準備も急げ」
だが、Mの反応は浮かないものであった。
まだ敵がいる――彼はそう、確信していたのである。
*
「終わりましたね。けど、なんか呆気なさすぎる……そう思いません?」
その頃、プロメテウス4――ラファエルは、敵機が次々と爆発する様子を見て安堵していた。呟きながら、格納庫近くへ位置取るラファエル。
そんな彼を狙う影が、レールガンの照準をラファエルの乗るリクシアスへと合わせていた。
引き金を引き、一撃で粉砕する――
「危ないっ!」
「!?」
と、ゼルゲイドがシュヴァルリト・グランで、ラファエルのリクシアスを弾き飛ばした。
一瞬遅れて、レールガンの弾丸がシュヴァルリト・グランの上腕部に取り付けられた盾へと直撃する。
「どこからの攻撃だ!?」
ゼルゲイドは叫びながら、周囲を見渡す。
彼が今の攻撃に気づいたのは、直感やわずかな視界の変化――一瞬だが閃光が見えた――だけの理由だった。
そんなゼルゲイドを眺めながら、ゼールドは呟いた。
「今のが“黒騎士”か。たとえまぐれにせよ、私の攻撃を察知するとはな」
ゼールドは慌てず、淡々と第二射の準備をしていた。
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