Mission030: 奇襲

 発艦後。

 ゼルゲイド達は綺麗なV字型編隊を組み、目的地まで向かっていた。


「ミサイルコンテナか……。初めて扱うな」

「こちらプロメテウス1。エクスカリバー、不安か? 俺達に漏れ聞こえてるぞ」

「はい、パト……いえ、プロメテウス1」

「なら教えておく。よく聞け」


 パトリックは手短に、ゼルゲイドに使い方を教える。


「左右それぞれのコンテナが、射撃用のトリガーと連動している。合図があったら、両方同時に引くんだ。弾切れになったら自動で投棄されるから、その点は安心しろ」

「了解。合図と同時に一斉発射ですね」

「その通りだ。さて、任務に戻るぞ。合図を待て」


 パトリックとゼルゲイドは、再び任務に意識を戻した。




「そろそろ基地まで近くなってきた。合図はまだか……?」


 そこから3分後。

 マッハ5程度の速度で飛行していた全機は、ミサイルの射程に敵勢力を捉えようとしていた。


「確実に捉えて、それから……おっと」

『全パイロットに通達』


 ゼルゲイドが焦れだしたタイミングで、Mからの通達が聞こえる。


『ただちに全弾発射せよ。同時に、艦砲射撃を行う』

「了解! 全機、撃て!」


 パトリックの号令で、全機がミサイルを一斉に発射する。

 合計90発のミサイルは、Advancerアドヴァンサー以上の速度で基地まで飛来した。


『発射を確認した。全機、高度を500m下げろ。基地に向かったまま、艦砲射撃の射界から離脱せよ』

「「了解!」」


 さらなるMからの通達が響く。

 巻き込まれれば機体ごと消し飛ぶ、ゲルゼリアの艦砲射撃だ。援護としてはこの上なく強力なものである。


『各機、ただちに高度を500m下げろ! すぐに来るぞ!』


 パトリックの指示を待たず、めいめいに高度を下げるプロメテウス隊隊員達とゼルゲイド。




 全機が高度を下げきったタイミングで、Mの号令が聞こえる。


『全主砲、1から7番並びに9番以降奇数番第一副砲(225mm砲)、1と2番並びに4番以降偶数番第二副砲(200mmレールキャノン)、用意』

『了解。全主砲、1から7番並びに9番以降奇数番第一副砲、1と2番並びに4番以降偶数番第二副砲、用意!』


 全31基の砲台が、一斉に前線補給基地を向く。


 余談だが、ゲルゼリアは第一副砲である225mm砲を全23基、第二副砲である200mmレールキャノンを全16基搭載した、馬鹿げた火力を有している飛翔艦である。

 そのうち、第一副砲は8~23番砲塔を偶数(艦首が上になるよう見た場合、左側に位置する砲塔群)番と奇数(同条件で右側に位置する砲塔群)番のように分類し、第二副砲は3~16番砲塔を奇数(同条件で左側。第一副砲とは異なる)番と偶数(同条件で右側)のように分類している。


 閑話休題、31基もの砲台が、ほぼ同時に発射準備を開始する。

 実弾またはビーム砲の第一副砲と、レールガン(実弾限定)の第二副砲は仕様が異なるものの、ほとんどズレが見られない。

 やがて発射準備を完了するが、これもやはりほぼ同時であった。


『全砲塔、発射準備完了! 全友軍機、退避完了状態!』

『撃ち方始め!』

『了解! 撃ち方始め!』


 再びMからの号令が下る。

 刹那、ゲルゼリアは一斉射撃を行った。




「撃ったか。そろそろミサイルが着弾した頃だ、流石はMというべきだな。各機、頭上を見るな。目をやられるぞ」


 パトリックの指示を聞き、全員が――アドレーネも含めて――前を見る。

 すると、真上を光が数秒かけて通り抜けた。


「これで敵基地に嚆矢こうしを放てただろう。各機、最大推力で襲撃をかけろ!」

「「了解!」」




 5機は発射したミサイルやゲルゼリアの火力支援に紛れて、奇襲作戦を開始した――。

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