Mission029: 作戦

「発進完了! 本艦は安定して飛行しつつあります」

「よし。十分な高度が取れ次第、底部を変形させろ」

「了解。変形高度まであと300……200……100……変形高度、到達!」

「変形開始」


 Mの号令に合わせ、ゲルゼリアの底部が再び変形する。

 巨大な翼を想起させる形状から、マンボウの尻びれを思わせる下方に突き出た安定翼と化した。


「変形、完了しました!」

「よし。次はゼルゲイド様とプロメテウス隊全員を招集しろ。次の作戦に備えて作戦会議ブリーフィングを行う。UAVもただちに飛ばせ、敵の情報を集めよ」


 Mは艦長席を立ち、自身も作戦会議室へと向かった。




「全員いるか? これより作戦会議ブリーフィングを始める」


 作戦会議室に着くや否や、Mは間髪入れずに開始した。


「次の作戦目標は、帝国の前線補給基地だ。先の帝国軍艦船との戦闘で、大まかな位置取りは把握した。現在偵察機に詳細な地形を把握させている……情報が到着した。映そう」


 Mが端末を操作すると、偵察機に搭載したカメラが撮影した映像が表示される。

 と、ゼルゲイドが呟いた。


「大きな基地だ……。さっき見た自然公園の2, 3倍は、広いんじゃないか?」

「まさしく。今ゼルゲイド様のおっしゃった通り、この補給基地はかなり大規模なものである。当然、警備隊の規模も相応なものであろう。確認できるだけで連隊(128機)規模はある。いかに諸君といえど、これだけの数を相手取っては苦戦は必至であろう。そこでだ」


 Mはさらに端末を操作し、映像を切り替えた。


「先ほどメイディアで調達した、多目的ミサイルランチャーを各機に装備する。各機に2コンテナずつ……1コンテナにつき9発、合計で90発。しかし、それだけでは不足がある。そこで本艦が、基地襲撃時に艦砲射撃で支援する」

「贅沢だな」


 デュランの私語を聞いて、Mは一瞥いちべつをくれる。デュランは即座に察し、コホンと咳払いをして姿勢を正した。


「さて、ここからが本題だ。諸君らは敵勢力を壊滅、または撤退に追い込み、基地の機能を麻痺させろ。ただし、敵が焦土作戦をする場合もある。危険と感じたら後退せよ。それと、絶対に許可無く集積している敵の物資に触れるな。作戦伝達は以上」

「「了解!」」


 ゼルゲイド達は急ぎ、各自のAdvancerアドヴァンサーまで駆けていったのである。




「ゼルゲイド様!」

「アドレーネ様……」


 作戦会議ブリーフィングに行きそびれたアドレーネは、シュヴァルリト・グランがある格納庫近くでゼルゲイドを待ち構えていた。


「次は、一緒にいさせてくださいませ」

「かしこまりました」


 作戦会議ブリーフィングに付き合えなかったからか、アドレーネは少しすねた様子である。

 ゼルゲイドは少し気にかけるが、構わず一緒に搭乗した。


「おはよう、シュヴァルリト・グラン。今日はちょっと肩の荷が重いけど、すぐに降ろしてやるからな!」


 ゼルゲイドが優しく話しかけると、シュヴァルリト・グランはそれに応えるかのごとく、カメラアイを強く輝かせた。

 機体の拘束が解けると同時に、ゼルゲイドはシュヴァルリト・グランをカタパルトまで歩かせる。


「エクスカリバー……出るぞ!」




 シュヴァルリト・グランはゲルゼリアからの発艦を全うすると、ただちに作戦区域へと向かった……。

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