Mission028: 帰艦

「そろそろ時間ですわ。オーガスト様、ゼルゲイド様」


 アドレーネが、滞在可能時間の終了を伝える。


「もう、こんな時間ですか……」

「名残惜しいですが、俺はこれで失礼します」

「ええ。これからも貴方がたと、シュヴァルリト・グランの活躍を祈っています」


 オーガストは立ち上がってから宮殿の出口までついて行き、ゼルゲイド、アドレーネ、Mの三人を、メイナードと共に見送ったのである。




 三人の姿が見えなくなると、メイナードは大きくため息をついた。


「ふぅ……。楽しかったな、シュヴァルリト・グランの話」

「それほどだったのか?」

「はい、お父様。彼のAdvancerアドヴァンサーの話に、我を忘れてのめり込んでいました」

「そうか、それは良かったな。また、話が聞けるといいな」

「はい! それはもう!」


 オーガストは自分の大好きな話を存分に聞けたことに、大きく満足していたのであった。


     *


「ゼルゲイド様。オーガスト王子とのお話はどうでしたか?」

「アドレーネ様。ずっと俺が話しっぱなしでした。まさかオーガスト王子が、シュヴァルリト・グランについて興味を持っていただけるとは知らず……」


 その頃、ゼルゲイドとアドレーネはゲルゼリアに向かいながら、先ほどの出来事を振り返っていた。


「まぁ。シュヴァルリト・グランに興味を示されたのですね」

「ええ。話をしていく途中に、他のAdvancerアドヴァンサーに関する話題にもなったのですが……オーガスト王子は恐らく、無類のAdvancerアドヴァンサー好きかと。敵国であるはずのベルゼード帝国のAdvancerアドヴァンサー、リクシアスやグリンドリンについてもご存知でいらっしゃいました」

「敵国の……ですか」


 今の返事はアドレーネではない。Mが言ったものだ。


「M?」

「おっと、失礼致しました。ゼルゲイド様」


 様子に違和感を抱いたゼルゲイドが尋ねるも、Mは何事も無かったかのように取り繕う。ゼルゲイドは不思議に思いながらも、それ以上は追及しなかった。


「ともあれ、何よりでございます。このわずかな下船時間が、実りあるものとなったようで」

「その通りですね。俺も話してて楽しかったです」


 再び話題は、オーガストとの話し合いに関する事柄に戻る。

 ゼルゲイドはゲルゼリアに到着するまでの間、自身の愛機シュヴァルリト・グランについて、改めてアドレーネやMに話していたのであった。


     *


「もう着いたか。あっという間だったな」


 ゼルゲイドが気づいた頃には、ゲルゼリアのすぐ近くにいた。

 宮殿からはそれなりに時間がかかるはずだったが、話に熱が入っていた彼は時間を早く感じていたのである。


「入口はこちらです。行きましょう」

「はい」


 Mの案内で、ゼルゲイドとアドレーネは再びゲルゼリアの内部に戻ったのである。




「発進準備はどうだ?」

「既にシークエンスの95%を完了しております。荷物の積み込み作業も、無事に全行程を終わらせました」

「そうか。では、もう間もなくだな」


 あらかじめ艦を発進させる準備の大半をしていたため、ゼルゲイド達は乗り込んですぐに地上から離れる運びとなった。

 とはいえ、まだゲルゼリアは地上にとどまっている。


「ゼルゲイド様とアドレーネ様は……もう、部屋に向かわれたか。ならば、今はこれ以上は関わるまい」

「発進シークエンス、100%を迎えました!」

「よし。係留錨アンカー巻き上げ、ただちに発進せよ!」

「了解!」


 号令一下、地面に突き刺さっている係留錨アンカーの固定を解除し、巻き上げる。


「微速前進。徐々に加速し、作戦区域へ向かえ!」




 かくしてゲルゼリアは補給作業を終え、再び空へと舞い上がったのである。

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