Mission025: 訪問

「私も出よう」

「艦長、どちらへ?」

「サロメルデ国王の……メイナードのところだ。連絡は電話で済ませたが、顔を合わせないのも何だからな」


 物資搬入の間に、挨拶へ向かうM。

 舷側から伸ばした階段の一つで、地上へ降り立った。


「もしかしたら、もうメイディアから逃げおおせている可能性もあるが……おや」


 Mは後ろから付いてくる、二人の人影を目撃する。


「ゼルゲイド様に、アドレーネ様……。ふむ、一人が三人になっても構わぬだろうな」


 そう考えたMは、きびすを返す。


「ゼルゲイド様、そしてアドレーネ様」

「M!」

「どうしたのですか?」

「ご一緒に、サロメルデ宮殿へ向かいませんか?」

「うーん……」


 Mの誘いに、ゼルゲイドは考える。


「はい、是非行きましょう! ほら、ゼルゲイド様も!」


 だが、アドレーネは即答だった。


「わわっ!?」

「決まりですな。では、我々三人で参りましょう」


 ダメ押しのMの一言により、ゼルゲイドは結局同行することになったのであった。


     *


「何者だ……っ、貴方様は!」


 宮殿の衛兵は一瞬、銃口をMに向けようとする。しかし顔を見て、すぐに下げた。


「失礼いたしました……!」

「気にしないでくれ。直接話をしたのだ、君達が気づかなくても仕方がない」


 Mは手をひらひらと振って、軽く受け流す。


「ところで、そちらのお二方は?」

「ああ。私の連れだな。味方だから、構わず通してくれ」

「かしこまりました」


 衛兵はうやうやしく敬礼し、道を開けた。




「メイナードはいるか?」

「はっ。陛下はこちらでお待ちしております」


 Mの姿を見るやいなや、別の衛兵がうやうやしく礼をする。

 その様子を見ていたゼルゲイドは、思わず呟いた。


「いったい何なんだ、M……。明らかに部外者なのに、ここまで手厚くもてなされているぞ?」

「ふふっ、ゼルゲイド様。Mはサロメルデ王国と、深い関わりを持っているのですよ。ゼルゲイド様がサロメルデ王国で暮らしているのを探り当てたのも、Mの力あってこそなのです」

「アドレーネ様……。その説明を聞いて、ますます彼が何者なのか分からなくなってきました……」


 頭を抱えるゼルゲイド。

 そんな様子には構わず、Mは衛兵と話をつけていた。


「感謝する。……ゼルゲイド様、アドレーネ様。参りましょう」

「は、はい!」

「はい、M」


 二人は対照的な様子で返事をすると、Mに続いて行った。




「入るぞ」


 Mはごく軽い調子で、入室を予告する。

 一国の王を相手にするとは到底思えない態度だ。


「い、いいのか……?」

「行きましょう、ゼルゲイド様。貴方の住んでいたサロメルデ王国の国王に、直接お会いできるのは今だけですわ」

「わ、分かりました……」


 ゼルゲイドは恐る恐るといった様子になりながらも、意を決して入室する。


「し、失礼します……」

「お邪魔いたしますわ」


 三人が入室した部屋。




 そこには、サロメルデ国王とその子息である王子がいた。

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