Mission023: 確信
「元々は、ベルゼード帝国の所有物、だったのですか……?」
突拍子もない話に、ゼルゲイドは混乱する。
アドレーネはただ短く、「その通りです」とだけ返した。
まだ冷静さを欠いているゼルゲイドは、一つの質問をする。
「ということは……。帝国から、搭載機やその他もろもろを、船ごと奪った……と?」
「
アドレーネはゆっくりと首を振って、否定した。
「私達は、元々はベルゼード帝国の関係者だったのです。敢えて言うのであれば……“裏切り者”ですわ。もっともそれは、ベルゼード帝国の大多数の人物から見れば、ですが」
「“裏切り者”……」
話に今ひとつついていけないゼルゲイド。
それもそのはずで、彼は生まれてからほとんど自給自足の農耕生活をしていた――言い換えれば“社会との関わりに乏しかった”のだ。
学は亡き父から教えられているものの、それでも政治に関する知識は無いも同然であった。
そんなゼルゲイドの事情を完璧に理解しているわけではないアドレーネは、話をさらに続ける。
「話はまだ続きますわ。貴方のお父様は……“黒騎士”は、ベルゼード帝国の敵として扱われました」
「父さんの“不名誉”……ですか」
「それにも関わりのある事柄ですわ。それは何故か、分かりますか?」
「いえ……」
ゼルゲイドの返答を聞くやいなや、アドレーネはゼルゲイドに顔を近づけ、告げた。
「『様々な事由により、“黒騎士”の品位を貶めたから』だそうですわ。一つ、有りもしない不義密通。一つ、
アドレーネは今まで見せたことが無いような怒りの形相を、浮かべていた。
ゼルゲイドは一瞬、いつもと違うアドレーネの様子に呑まれかけるも、拳を握って意識を引き戻す。と、彼の脳裏に、“不義密通は事実かどうかを母親に尋ねる”という手段が浮かんだ。
(いや、やめておこう。俺の前では穏やかなアドレーネ様が、珍しくここまで怒っていらっしゃる。そんなことは、仮に事実じゃなかったとしても気軽に聞いていい話じゃない。それに何であれ、父さんは俺の父さんだ。そもそもそんなことをするような性格だとは、俺には到底信じられない……!)
ゼルゲイドもまた、“不名誉”の根拠となる事柄を偽りだと疑い始めたのである。
それは同時に、ゼルゲイドにある確信を抱かせるものであった。
「つまり……俺達の倒すべき敵は、ベルゼード帝国である……のでしょうか?」
「ええ。ですが、ベルゼード帝国そのものではありません」
「何でしょう?」
「貴方のお父様の“不名誉”を起こした元凶です。Mに曰く、その名を“ファルゼイン”と言いますわ」
「ファルゼイン……」
ゼルゲイドには、聞き覚えのある名前だった。
「俺の母さんも言っていました。『全ての元凶は、ファルゼインなる者である』と。やはり、ファルゼインこそが……」
「倒すべき敵、ですわ」
アドレーネはゼルゲイドの呟く声に対して、ダメ押しをするように肯定した。
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