Mission022: 思惑
「では、解散」
しかし、一人だけその場にとどまった者がいた。Mである。
「……行ったか。艦長として、弱音は聞かせられんからな。……よもや“六天将”が、一度に二人も現れるとは」
戦いには一応の結果を出したものの、Mの表情は晴れやかではなかった。
「奴らが持つ前線の補給基地……そこを見定められたのは確かな成果だ。彼らの活躍で、今後の作戦を見据えることも出来た。しかし、今後は今までのようには行かないだろう。遅かれ早かれ悟られるとは思っていたがな……。ともあれ、今のところ奴らは、私の承知している装備や作戦しか使ってきていない。今後はまだ分からん以上楽観も出来んが、手の内の一部は把握出来ている。奴らも余程改革しない限りは変えようがないし、そもそもそれをあの男が許すつもりも無いだろうが……さて」
Mは頭の中で、今後の方針を整理し始める。手近にあった紙に、決定した方針を一つずつ書き出した。
*
その頃、ゼルゲイドとアドレーネは、自室に戻っていた。
とは言っても、アドレーネにとっては自室ではない。
「ゼルゲイド様。お邪魔させていただいておりますわ」
「構いませんよ、アドレーネ様。ところで、いろいろとお聞きしたい事があります」
シャワーを浴びて着替えたゼルゲイドは、上着を整えながらベッドへ向かう。そのままアドレーネの隣に腰掛けた。
「俺……いえ、私は」
「ゼルゲイド様。“俺”で構いませんわ」
「ですが……」
戸惑うゼルゲイドの目を見て、ほほ笑むアドレーネ。
その笑みを見たゼルゲイドは、「参りましたね……」と呟いた。
「仕方ありませんね。さて、話を戻します。俺はどうしても、気になることがあります」
「何でしょうか?」
「さて、どこから話すべきか……」
ゼルゲイドは深呼吸をして、思考を整理した。
「そうですね……。俺達が戦っている敵から、まずは聞かせてもらいましょうか」
「ベルゼード帝国のことですね? かしこまりましたわ、ゼルゲイド様」
アドレーネは表情を真剣なものにしてから、話し始めた。
「ベルゼード帝国とは、このアルス・フィア……今私達が住んでいる世界において、最大規模を誇る国家です。軍は膨大な規模に高い練度、そしてアルス・フィアの中でも最新鋭の技術を併せ持った、正しく『世界最強』と言える力を持っています」
「そんな馬鹿げた規模の敵と、二度も戦ったのか……。あれ、でも待てよ?」
ゼルゲイドは一つ、引っかかる事柄があった。
「どうされたのですか?」
「だとしたら……俺達、いえアドレーネ様達は、あいつらと同じ機体を……リクシアスやグリンドリンを、持っているのですか?」
「それは……いえ、隠すことではありませんね。簡単な話です」
アドレーネは意を決して、ゼルゲイドに伝える。
「このゲルゼリア、そして内部に格納している機体は、もともと全てがベルゼード帝国のものだったからです」
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