Mission018: 決闘

「何のつもりか分かんねえが、一対一がお望みならやってやるよ!」


 ゼルゲイドはビーム砲を構え、エルレネイア目掛けて2連射する。


「安直だな」


 だがエルレネイアは、わずかに機体をひねっただけで容易く回避した。


「そんなもので私をとせると思っていたとは、なめられたものだな!」

「元々思ってねえよ! けど、近づくまでは無防備だ……!」


 さらに3連続で放たれたビームは、しかしエルレネイアにかすりもしない。

 ゼルゲイドはやむを得ず、ビーム砲を元に戻した。


「二刀流には二刀流だ。受けて立つ!」

「フッ、見たところただの実体剣だな。この“シュヴェールト”に、切れ味で勝てると思っているのか?」

「つばぜり合わなきゃ済む話だ!」

「それもそうだな。だが、実際に出来るかどうかは確かめさせてもらおう!」


 エルンは真正面から、最小限の動作で斬りかかる。

 だがゼルゲイドは、すれ違う直前で高度を上げて回避した。


「何っ!?」

「接近戦は危険だからな。受けろ!」


 シュヴァルリト・グランの両前腕から、立て続けにビームが放たれる。しかし、エルンはわずかな動作で回避した。


「小細工を……!」


 エルレネイアはビームソードを1振り格納し、ビームカービン砲を取り出す。音速を軽々と超えるAdvancerアドヴァンサーの機動力が仇となり、すぐに距離を詰めきれないと踏んだ故の行動であった。


 だがシュヴァルリト・グランは、実体剣を構えたままである。


「随分な自信だな……!」


 エルンがシュヴァルリト・グランに狙いを定め、トリガーを引く。

 接近戦を得手とするエルンであるが、射撃においても一定の実力を有していた。だが。


「読み通りだ! そっちこそ、なめてくれたもんだな!」


 正確な狙いが仇となり、ゼルゲイドに容易く見切られる。彼もまた、Advancerアドヴァンサーの戦いには慣れていた。

 加えて、ゼルゲイドは前の戦いでエルンに追い詰められた時、動きをよく覚えていた。無駄のない動きを、死の恐怖で脳裏に刻み込んでいたのだ。


「殺し損ねた事を後悔させてやる……! アドレーネ様、少々無茶をしますよ……!」


 その一言に、頷くアドレーネ。


 直後、エルレネイアの真上を取ったシュヴァルリト・グランが、空中で宙返りした。


「!? 曲芸か……!」


 一見、隙だらけに見えるこの行為。しかしエルンは恐怖を感じ、機体を後退させた。

 刹那、先ほどまでエルレネイアがいた空間にビームが4連続で飛んでくる。


「何という……あれでは強烈な負荷が掛かるではないか! 奴ら、死ぬ気か……!?」

「まだ終わらねえ……!」


 ブースターを吹かし続けているシュヴァルリト・グランは宙返りを終えると、勢いのままに距離を詰めた。


     *


 同時刻。

 プロメテウス隊は順調に、青色のリクシアスを屠っていた。


「ゲルゼリア付近に残敵無し。仕留めたな」

「あとは艦長に連絡を送りますかね」

「隊長、周辺警戒はお任せを」

「ちょっと待って、ゼルゲイドさんの援護は!?」


 ラファエルの疑問を、デュランとパトリックが否定する。


「距離が遠すぎる。それに、あんな機動に付き合えるかよ。隊長のグリンドリンならまだしも」

「ああ。エルレネイアに関しては、ゼルゲイド君に任せよう。俺達は俺達の役目を果たす。では」


 パトリックは、Mに無線を繋ぐ。


「艦長。ゲルゼリアに取り付いていたリクシアスは殲滅せんめつしました」

「了解だ。本艦はゼルゲイド様とアドレーネ様が退避し次第、敵艦隊に攻勢を仕掛ける」

「確認のため聞きますが……援護しますか?」

「あの状況では行くだけ無駄だ。だが、退避中に敵に狙わせないように動く準備だけはしておけ」

「「了解」」




 パトリック達は遠巻きに、シュヴァルリト・グランとエルレネイアの戦いを見ていた……。

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