Mission016: 合流
ローテ・ドラッヘのレーダー上には、味方を示す青色の光点が多数、表示されていた。
と、味方艦の内の一隻から、通信が入る。
『大丈夫か、エルン閣下?』
「ゼールド閣下。何とか逃げていますが、振り切れません。幸か不幸か、距離を詰めきらないでいるおかげでまだ耐えていますが……」
『迂闊な反撃はするな。距離を開けているのは、そちらを仕留める算段だろう』
「やはり、艦長の判断は的確でしたか。ともかく、あの化け物戦艦は正面から交戦するには強力過ぎる相手です。一度撤退し、態勢を整えるべきかと」
『その通りだな。
ゼールドの表情が曇ったのを察し、エルンが続きを述べる。
「この近くには前線の補給基地があるのでしたね。であれば、私もエルレネイアで加勢します。ゼールド閣下の艦隊とアレクス閣下の部隊とを合わせれば、追い払うくらいは出来るでしょう」
『痛み入る。だが、死ぬなよ。エルン閣下に死なれては、侵略に支障が出るからな』
「当然です。我がローテ・ドラッヘ共々、生きて帰ります。ですが……」
『何だ?』
「偵察のつもりが、思わぬ強敵を連れてきましたね」
『ああ。まさか、噂に聞いていたあの艦とはな』
「ゼールド閣下?」
ゼールドの妙な物言いに、エルンは質問せずにはいられなかった。
だが、この状況はそれを許さない。
『問答をしている暇は無い。あれを追い払うぞ』
「……承知しました」
エルンは疑問を呑み込むと、艦長に命令する。
「何が何でも逃げ延びろ。艦長自身を含めた全員を、生還させるんだ。くれぐれも、轟沈されるなよ」
「かしこまりました、エルン閣下。必ずや、全員生還させてみせます」
艦長の返事を聞き届けたエルンは、急ぎ格納庫へと向かったのである。
*
その頃、ゲルゼリアの
「黒の艦隊の一部に、黒と青のリクシアスか。戦力を見誤ったか、あるいは撃沈が目的ではないのか。ともあれ」
Mは副艦長に命令する。
「こちらも
「了解しました。出撃命令を出します」
副艦長が、艦全域に放送を出す。
「全
「んっ、出撃命令……ですか?」
「アドレーネ様、参りましょう。疑問を差し挟む余地はありません」
「はい……!」
まだ夜も明けていない時刻に出撃命令を聞いたゼルゲイドとアドレーネ。
叩き起こされた格好だが、それでも文句一つ言わず、シュヴァルリト・グランの元へ向かった。
ゼルゲイドとアドレーネはすぐにコクピットに乗り込むと、起動手順を実行する。
「キーのセット完了、エンジン1番2番3番始動確認、プログラム起動確認……おはよう、シュヴァルリト・グラン。それにしても駆動音が良好だ、よく整備されているな……。ところで、パトリックさん達は?」
エンジンの音を聞いたゼルゲイドは、僚機がいない事に違和感を覚えつつも、整備兵の仕事に満足していた。
と、声が格納庫に響く。
「ゼルゲイドさんですね!?」
「貴方は!?」
「自分はジーク、整備兵です! 今からゼルゲイドさんを、カタパルトまで誘導します! 来てください!」
ジークと名乗る男の両手には、赤く発光する棒が握られている。それを振り、シュヴァルリト・グランを誘導し始めた。
「ゼルゲイド様、彼の元へ向かって歩いて下さい。くれぐれも、足元にはお気を付けて」
「かしこまりました」
ゼルゲイドはゆっくりと、誘導に従ってシュヴァルリト・グランを歩かせる。
20秒ほど歩いたところで、ジークが棒の振り方を変えた。
「止まって! 左を向いて、足元にある台に乗ってください!」
「カタパルトか?」
「はい!」
再び指示に従い、ゼルゲイドはシュヴァルリト・グランをカタパルトの上に乗せる。
両脚を乗せた時点でロックが掛かり、動きが一時的に封じられた。それを見たジークはすぐさま退避する。
「準備完了です、いつでも発艦できます!」
「どうすればいい?」
「ブースターを全力で吹かしてください!」
そのジークの言葉に続いて、シュヴァルリト・グランが出力全開でブースターを吹かす。
「発艦カウントダウン。7, 6, 5...」
同時に、別の場所にいるクルーがカタパルトを起動させた。
カウントダウンは続き、0になったその瞬間――
「発艦!」
「シュヴァルリト・グラン、発艦する!」
ゼルゲイドの掛け声に続き、シュヴァルリト・グランが発艦を完了したのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます