Mission004: 打合

「さて、ついて来て下さい。ゼルゲイド様」


 Mはゼルゲイドと合流するや否や、ある部屋へと案内する。


「ここは……ッ!」


 そこには、四人組の男がいた。

 ゼルゲイドが驚いている間に、Mが口を開く。


「諸君、紹介しよう。彼が“黒騎士”の息子、ゼルゲイド・アルシアスだ」


 その名前を聞いた途端、四人が驚愕する。

 と、男の一人が前に出た。


「そうか……。君がアルシアス隊長の、息子さんか……」

「ええ、その通りです。ところで、貴方がたは?」


 ゼルゲイドの問いに、男ははっとした。

 慌てたように、答える。


「済まない。俺はパトリック・ブレイズ。この“プロメテウス隊”の隊長だ」

「俺はデュラン・ディーズ。“デュラン”って呼んでくれ。これでも副隊長なんだぜ」

「エルト・シュナイデンだ。プロメテウス隊の3番機を務める」

「ラファエル・ラルデアです。よろしくお願いします!」

「よろしくお願いします(見たところ、パトリックさんとエルトさんが俺より年上……デュランさんとラファエルさんが同い年くらいってところか)」


 プロメテウス隊と名乗る四人組が全員自己紹介を終えたところで、パトリックが告げる。


「ゼルゲイド君……だったな。君の父さんには随分世話になった」

「ありがとうございます。既に父はこの世にいませんが、せめて今の言葉が届いていると信じております」

「何っ、亡くなられたのか……!?」

「はい、3年前に病気で……」

「残念だ……あれほど俺達の為に戦ってくれた人が……」


 パトリックはうつむきながら、ゼルゲイドの父に弔意を表する。


「俺達プロメテウス隊は君を助ける事で、君の父さんに報いたい。いや、報わせてくれ」

「俺もだ!」

「俺も」

「僕もです!」

「ありがとうございます、皆様」


 ゼルゲイドは、深々と頭を下げる。

 それを見たMが、「自己紹介は済んだようですね」と割って入った。


「賑わっているところ済まないが、急を要する作戦がある。ラファエル、部屋の灯りを落としてくれ」

「はい!」


 ラファエルがスイッチを切ると、部屋が真っ暗になる。

 その直後、Mの脇にあった長方形のテーブルが光を放った。


「これより作戦会議ブリーフィングを始める。まずはこの図を見てくれ」


 Mが示す図には、「サロメルデ王国」の文字、そのすぐ下には「メイディア」という文字があった。


「メイディア……!? まさか……!」

「落ち着いてください、ゼルゲイド様。……さて諸君、既にご存知だろうが、サロメルデ王国が首都メイディアは、今まさにベルゼード帝国の手に落ちんとしている」


 その言葉を聞いた途端、ゼルゲイドとプロメテウス隊全員の表情が、険を持ちつつ引き締まった。


「ベルゼードは宣戦布告と同時に、サロメルデ王国への侵攻を行ったようだ。加えてサロメルデ王国の主力Advancerアドヴァンサー“アルガム・シリーズ”は、ベルゼードの保有するリクシアスその他の機体に比べて性能が大きく劣っている。このままでは、早晩メイディアは陥落するだろう。そして国王や王族などの重要人物は、捕まったのちに殺される危機すら待ち受けているかもしれない。そこで諸君の出番だ」


 Mはゼルゲイド達を見据えると、真剣な面持ちで告げた。


「サロメルデ王国兵を援護し、ベルゼード帝国兵をメイディアから追い払え。一兵たりとも容赦するな。我らゲルゼリアの友であるサロメルデ王国を守り抜いてくれ」

「「了解!」」


 M直属の部下であるプロメテウス隊は元より、ゼルゲイドとしても異論は無かった。

 つい先ほどまで住んでいた国であるサロメルデ王国に報いる好機だと、判断したのだ。


 そして5人とアドレーネは、それぞれのAdvancerアドヴァンサーに搭乗する。

 直後、Mからの無線が届いた。


「各機へ通達。敵味方の識別はこちらで行うので、安心して戦ってほしい。ところでゼルゲイド様、貴方のシュヴァルリト・グランのコールサインを決めねばなりません」

「コールサイン、ですか……?」

「はい。作戦行動中の簡略な呼び方です。プロメテウス隊は既に『プロメテウス1』などと呼び方を決めていますが、どのようなものが良いでしょうか?」

「済みません、俺には思い付かないです……」

「エクスカリバー」


 割って入ったのは、アドレーネであった。

 Mからの無線はゼルゲイドだけではなくアドレーネにも届いていたため、会話を聞いていたのである。


「ゼルゲイド様。“エクスカリバー”をお願いします」

「かしこまりました、アドレーネ様。M、これより“エクスカリバー”と名乗ります」

「結構です。似合っていますよ、エクスカリバー」


 一瞬だけ微笑むMであったが、すぐに表情を引き締めて宣言する。


「プロメテウス各機に通達。シュヴァルリト・グランは、今より“エクスカリバー”と呼称する」

「「了解!」」


 プロメテウス隊の全員が返事をする。


「では、全機出撃! 首都メイディアをベルゼードの手から守り抜け!」


 その言葉と同時に、全5機のAdvancerアドヴァンサー射出機カタパルトの前に立つ。


「M。味方にリクシアスがいますが、あれはベルゼードの所属ではないのですか?」

「安心してください。プロメテウス隊の乗っている機体です。IFF敵味方識別装置でも味方ですし、白に赤、そして金も混ぜたカラーリングは、我々ゲルゼリアの所属である事を示します。ですので、くれぐれも敵と間違えないよう」

「確認しました。ところで、1台違う機体が混ざっていますが……」

「それは“グリンドリン”です。リクシアスの指揮官型、とお見知りおきください」

「了解しました。ありがとうございます」

「それでは、最大の奮闘を」


 Mの言葉に合わせ、まずリクシアスが射出機の上に脚を乗せる。

 瞬く間に加速して艦を離れると、さらに続けて発艦した。


「行こうか。ゼルゲイド君」

「はい、パトリックさん!」




 そして、パトリックの乗るグリンドリンと、ゼルゲイドとアドレーネの乗るシュヴァルリト・グランもまた、発艦を終えたのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る