第7話

「あらたまって、どういうことなんだい。ひととおり話してごらん」

「じつは私たち困ってることがあるんです。

 というのは、この近くにいたずらグマが住んでいて、私たちがせっせと蓄えたハチミツを盗みに来るんです。ついこの間まで別の場所の木のほらに住んでたんですが、そのいたずらグマが私たちが丹精込めてこしらえた巣をめちゃくちゃにしてしまったんです。私たちはたまらずここを見つけて引越してきました。ところが、最近またあいつがこのあたりをうろつきはじめたんです。何とか追い払うのに力をかしていただけないでしょうか」

 たのまれたら嫌といえない旅人は、目をつむり腕を組んで考え込んだ。その姿はまるで昼寝でもしているかのようだった。しばらく考え込んで、突然何かを思いついたように、目を開いて手を打ち、

「いい考えが思い浮んだ、もう心配することはない。私にまかせなさい」

 そういうと旅人は腰を上げ、森の中へ何かを探しに出かけた。

 そして、森からもどった旅人の手には葉っぱのたくさんついた木の枝が数本にぎられていました。

 その後旅人は忙しなく動き回り、ロバを少しでも大きくみせるために拾ってきた枝をひもで結んでロバの首にかけ、ロバの首にぶら下がっていた鈴のおもりのひもをはずした。そしてロバの耳元で小さな声で何かをいいました。それを聞いたロバは何やら大きくうなずく姿いています。

「これで準備はととのった。ミツバチ君、もう2度といたずらグマが近づかないようになると思うよ」

「ありがとうございます」

「礼をいうのはまだ早いよ。早くクマ公の驚く顔がみたいもんだ」

 陽が沈みかけてあたりが薄暗くなり、鳥たちが巣に戻りかけたとき、どこか離れたところで、

 ガサッ、ガサガサッ。ガサッ、ガサガサッ。

 木の枝のすれる音が聞こえました。旅人は心配そうに陰から様子をうかがった。

 それは間違いなくクマだった。ミツバチたちの恐れていたクマが現れたのだ。

 旅人は姿を見られないように近くの藪に身を隠す。洞穴の前に置き去りにされたロバは恐怖で足が震え、心臓が口から飛び出しそうになった。しかしこうなったら旅人にいわれたようにするしかなかった。

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