奴隷 三

 成金スライムの売上金から代金を支払うと、性奴隷は晴れて我々の手中に収まった。向こうしばらくは右手の世話になることもないだろう。その事実に胸をドキドキと高鳴らせつつ、ニートは帰路についた。


 しかし、その直後に事件は起こった。


 性奴隷をダンジョン六十階、宿屋に連れて戻った後である。


「チ、チンコがついてる! しかもコイツ、俺より大きいぞ!?」


「あの、ご、ごめんなさい。僕、男でごめんなさい……」


 ベッドの上、正座をした性奴隷が言う。


 申し訳なさそうに謝ってみせる。


 その股ぐらには立派なものが備わっていた。見間違えることなど到底できない。凶悪と称しても過言ではない。お持ち帰りから早々、さっそく楽しませて頂こうと考えて、衣服を脱がせた際の出来事である。


 これにはもうビックリだ。だって見た目、完全に女だもの。


 金髪ロングの男児なんて普通いないでしょ。こんなの詐欺だ。


「タョシ族なのですから、当然ではないですか」


「はぁ!? なんでだよ? どうしてだよ!?」


「タョシ族は性差が外見に現れない種族です。しかもその見た目は人間にとって女性的なものであり、人に囚われた場合は、大半が愛玩用として市場に出回るような、非常に生臭い生き物です。見ての通り胸も膨らみます」


「詐欺だ! そんなの詐欺だろ!? チンコでチンコが扱けるか!」


「てっきり私は、主人がゲイに目覚めたものだとばかり」


「誰が目覚めるか!」


「ご、ごめんなさい! 僕、オチンチン、生えててごめんなさいっ……」


 くっそ、ふざけんな。不良品だ! こんなの不良品だ!


 チンコ付いてる性奴隷とか要らねぇよ。


 しかもよりによって僕っ娘だ。


 もしも生えていなかったのなら、これ以上ない逸材であった。ロリロリの僕っ娘とか最高だよ。中学生の頃とか学年に一人くらい、そういうカラーの子いたじゃん。周囲から浮いているタイプで中二病の亜種というか、姫属性の走りみたいな。


 そういう子を誑かしてセックスするのがニートの悲願だ。


「つまりこれは頑張ったプッシー三号へのご褒美ということですね」


 プシ子がニヤニヤといやらしい笑みを浮かべ問うてくる。


 コイツ、全てを理解した上で俺に協力していたのか。


 どおりで素直に、ダンジョンの宿屋までカネを取りに走ったわけだ。


「や、やらねぇよ、絶対にやらねぇ! オマエだけにはっ!」


「嫉妬ですか? 素人童貞は見苦しいですね」


「うぐっ……」


「しかも主人のアレはこれよりも小さい、と」


「こ、このっ……」


 プシ子め、まさかコイツと楽しむつもりか?


 そんなの認めない、絶対に認めないぞ。


 三号の初めては主人である俺のものなんだ。


 絶対に誰にも譲ったりしないぞ。


「それではせっかくですから、ありがたく頂戴しましょう」


「駄目だ! これだけはやらん! 誰が何と言おうとやらん!」


「ではご自分で利用するのですか?」


「なんでそうなるんだよ!?」


「主人が使うのであれば仕方がありません。プッシー三号は涙を飲んでこれを諦めましょう。タョシ族を楽しむ機会など滅多にないというのに、なんて健気で主人思いなマリオネットなのでしょうか」


「だから俺には使い道なんてないのっ!」


「では下さい」


「こ、このっ……」


 そんなにこのショタが欲しいのか。


 なんて淫乱なんだプシ子。


 ますます可愛いじゃないか。


 くっそ、その性欲がどうしてニートに向かない。


 どうしてなんだよ。


 嫉妬で身が焦げそうだ。


「使わないのですか? もったいない」


「も、もったいないとか、そういうこと言うなよ! コイツが可愛そうだろ!? 今は性奴隷に身を落としているかもしれないが、こうなる以前はご家族がいて、友達がいて、俺たちと同じように日常を過ごしていたショタなのに!」


「では頂きますね」


 三号の手がショタの腕に伸びる。


 それだけは許せん。


 マジ止めて。


「わ、分かった、俺が使う! それなら俺が使うからっ!」


「本当ですか?」


「本当だっ!」


 こうなったらなりふり構っていられないぜ。


 とりあえず最悪の状況を回避せねば。


「仕方がありません。それなら諦めるとしましょう」


「そ、そうしとけ。オマエの膣には他に相応しい肉棒があるからな」


「短小包茎だけは勘弁ですね」


「ぐぬぅ……」


 なんて生意気なマリオネットだ。




◇ ◆ ◇




 同日の晩、所用を終えたコックが宿屋に戻ってきた。


 事前に約束したとおり町の広場で落ち合い、プシ子の空間魔法で回収されてのご来店である。するとヤツはダンジョンの六十階に戻るや否や、宿泊スペースに増えた新顔を目の当たりにして反応をみせた。


「大将よ、見慣れない顔がいるが、コイツは何だ?」


「お前、ゲイか?」


 ショタの行き先を求めるニートは、即座に尋ね返した。


 プシ子の毒牙にかかる前に、さっさと他所へうっちゃらなければ。


「はぁ? いきなりなんだそりゃ」


「ゲイかって聞いてるんだよ」


「大将の相手とか、もし仮にゲイだったとしても冗談きついぜ……」


「はいはい、そりゃこちらとしても何よりだ」


 どうやらゲイではないらしい。


 くそう、こうなると八方塞がりじゃないか。


「っていうか、コイツはどこから拾ってきたんだ?」


「訳あってオークション会場から流れてきた奴隷だ」


 綺麗にメイクされたベッドの上、ショタは誰が頼んだ訳でもないのに正座をして、我々に向き直っている。その姿を眺めてコックは合点がいったとばかりに頷いてみせた。どうやら奴隷は一般的な存在らしい。


「しかしなんだ、女みたいな身体付きの割に生えているんだな?」


「そういう感じの種族らしいぞ。プシ子が言ってた」


 現在ショタが着用しているのは、薄い生地で作られた貫頭衣を思わせる衣服だ。簡素な作りではあるが、生地自体は上等なものである。本来はその下に下着を履いていたのだが、脱がす過程でプシ子が燃やしてしまった。


 おかげで衣服の生地の下、押さえを失った股間が強調されている。


「もしかして今の確認はそういうことか?」


「ああ、そういうことだ」


「だったら旦那には悪いが、俺は綺麗なねーちゃんの方が嬉しいな」


「そんなのこっちだって同じに決まってるだろ?」


「だったらどうして買ってきたんだよ……」


 なんかもう考えるのも面倒だし、宿屋の外に放り出してやろうか。


 きっとスモールドラゴンあたりが綺麗に平らげてくれることだろう。いやしかし、そうなると近い将来、我々はこのショタを召し上がって育ったスモールドラゴンを食べることになるのか。それはそれで嫌だな。


 待てよ、既に他の冒険者が食われている可能性も微レ存。


 都内の濁った河川で釣り上げた魚を、美味そうに食べているユーチューバー。その姿を眺めて腹の具合は大丈夫なのかと、疑問に思うときと同じ心境である。水質を事前に調べているとも思えないし。


「…………」


 止めておこう。この手の想像は碌なことにならない。


 ご飯が不味くなるだけだ。


 そうこうしていると早々、プシ子から元気よく声があがった。


「こうなるとやはり、奴隷は私が頂戴する他にありませんね」


「ぐっ……」


 待っていましたと言わんばかりの反応である。


 そんなの絶対に許さないぞ。


「捨てるのは勿体ないです。私が便利に使ってみせましょう」


「わ、分かった。くそっ……俺が持っておこうじゃないかっ!」


「あの、ご、ご主人様……」


「……なんだよ?」


 ニートがプシ子と話をしていると、ショタから声が上がった。


 おずおずと問うてくる面持ちは、見た目完全に美少女だからたちが悪い。お肌も綺麗で、身体つきなど理想的な女体である。腰回りのくびれっぷりや、そこから続くお尻の盛り上がりなど、見ていてめっちゃムラムラする。


 しかも頭には獣耳が生えているし、フルオプと称しても過言ではない。


 ただ、一つだけどうしても許せないオプションが股間に生えているんだ。


「僕はこれから、こちらで、ど、どういった仕事をしたら……」


「そこで布団をかぶってゆっくりしてろ!」


 プシ子の処女膜はニートが予約しているのだ。


 どうにかしてこのショタを宿屋からリリースしなければ。

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