第肆章 4「二度目の出会い1」
4 二度目の出会い
クハが合流したとき、ゴロとニヨンはまだその店の中へ突入していなかった。
「……っどうしたのよ! なんで行かないの⁉」
後ろから現れたクハに驚く二人。
「……⁉ クハかよ……」
「びっくりした!」
さすがの反応に呆れそうになった彼女だったが、そんな場合ではない。彼女は先ほど確認した状況を伝達しなければならない義務があった。そして、自分の目を指さして彼女は言った。
「じゃなくて、さっきこのコンタクトで建物内の状況を確認したのよ! そしたら生命反応がたったの二つしかなかったのよ、他の人たちは粉々にされていて……もう、訳が分からない状況だったわ……」
その内容に固まった二人。今度の今度は違うと思いたい状況だったが、現実は非情であった。
「粉々って?」
「いや、その、死んでいたっていう感じで……」
「本当なのか⁉」
「相手の通信機器の妨害かもしれないんじゃ」
「いいえ、そんなことはないわ。うちらの通信機器は他から傍受することはできないように、向けられた相手の機器にしか届かない特殊な電波でやり取りされているの、だから相手に理解できないはず……」
「まさか……」
「それに、さっき建物内に侵入していく生命反応が見えたのよ、多分ナナだと思うけど……」
「ナナがね、」
「まああの漆黒さんなら倒してくれるでしょ!」
こんな状況でもお気楽な考えをするニヨンからは、先ほどの焦りがどこかに飛んでしまったのだろうか? この正念場。色々とおかしい状況ではあるがここで行かなければ確実にこの作戦も悪い意味で終わる。
「それは一理あるけど……」
「まあ、確かにな、」
二人が一瞬共感したと思えたその時、言い出した彼女がストレートにこう聞いた。
「てか、その二人って誰なの?」
とてつもなく普通の質問だったが、前しか見れない二人にとってはとてつもなく裏をとっているものだった。
「「ああ、確かに」」
シンクロした時、ちょっとだけ残っていたはずの余裕がもはや微塵も残さずして消えていった。
「もし、その二人が、俺たちよりも先に殲滅していたら」
「そして、もし、その二人が私たちの作戦内容を知っているような人物だったら」
二人は顔を見つめる。
「「スパイ⁉」」
「ああ、それはやばいね」
盲点であったが故の見落とし、だが。
「でも、待て。そんな簡単にスパイのできるような機関ではないぞ」
「そう、ね。私たちの世界有数のセキュリティの壁を簡単には突破できないだろうし、そんな行為が少しでも察知できたなら確実に暗殺任務が下りてくるはずよね」
「そうだけどさ、もともとトップの人間ならあまり監視が付かなかったじゃないかしら?」
「そうなの?」
「そうだったはずよ、ここのシステムは上がすべてなのよ。こっちの現場のことなどすぐ切り捨てられるようにね、ましてはヤバい計画でもあるんじゃないの?」
「でもなあ、所長がそんなことしないでし⁉」
右バラに彼女の綺麗な拳が突き刺さる。
「また言ったわね、変なこと言わないで!」
「でもさ、もしかしたらあり得るわよ?」
「あなたも⁉」
「まあ可能性の話よ、行かないからには分からないわ」
「私は姉さまを信じているから、とにかくもう一人はナナに任せて三人で一人打ち取るわよ」
クハの目は少し曇っていた。絶望しそうなその疑惑に、隠し切れない本心が目に見えている。混乱の思考の中、二人の後ろを追いかけるように入口へ跳んで行った。
1時間前。
「何⁉ 表が突破された⁉」
カーネーション通信室にて、全身機械に蝕まれたこの男、ウイングが叫んでいた。
「どうしたんですか?」
一人の構成員が質問をする。
「いや、山の北口が突破された」
同時に、一同に衝撃が走る。それもそのはず、
「突入開始は一時間後だったはずじゃ……」
話が違う。
話が違った。
ここまで動きが速いわけがない。
こちらの動きを読んだのか、もしくはただ時間が早まったのか。一瞬にして翻らせたこの状況に騒然とした雰囲気に埋め尽くされていく。
「そんな、」
「まじかよ」
「やばい、じゃんか」
これにはウイングも驚きを隠せなかったがすぐに通信機を付け直して。
「おい、いったい何が来たんだ? 奴らなのか!」
『それが、いみのわからn――うがぁ、な、なんだあ、きさmああああああああああああああっ⁉』
「おい‼ どうしたんだ!」
『……』
彼の叫び声とともに通信は終了した。
思わず通信機を投げ捨てて、自分の感情もあたりの雰囲気も崩れだしていく。
「いったい、なにが」
そう吐き捨てた瞬間。
バゴォォォォォン‼‼
果て知れないほどの轟音が通信室を響かせた。
恐る恐る目を開けると、そこには人一人が微かに見える。
「貴様、誰だ⁉」
ウイングが大声で呼びかけると、彼はこういった。
「耳障りだな、その声。仕方ないなぁ……上司様だ。命令に違反したお前たちを殺しに来た。ただ、それだけだ」
たった二行。そのわずかな時間で、通信室が赤く染まっていった。
まるで、トマトを握りつぶすように単純な方法で粉々に、ドロドロな液体の有機物へと姿を変えた人間の残骸がそこら中に飛び散った。
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