第弐章 6「現状報告1」
6「現状報告」
同日、19:00、『PARALLEL』札幌支部、会議室1.
所長に、B3、通信班の代表とゲストが総勢二十人ほどが集合していた。
「ええ、端的に申し上げますと、現在、私たちのサーバーが攻撃されています」
鬼我所長の口から発せられたその言葉は驚き……ではなく、皆、把握している事柄であった。
「てなわけで、俺たち他支部の人員も集めているわけだな!」
「そうだ、俺たちじゃあ対処できないからな、可部の言うとおりだ」
「じゃあさっそく、知らない顔の奴らもいるから自己紹介から行くか、三人よろしく!」
ニコッと不敵な笑みを見せてすぐ、最初はやはりこの男だった。
「よし、じゃあ俺から行きますか、兄弟! 俺は仙台支部から来た可部(かべ)辰也(たつや)。戦闘術が少しできて、クハやゴロの先をやっていた。まあもう先を越されてるかもしれないが……よろしく!」
すると、予想外の人物が反応した。
「……!?」
「ん、おお! お前じゃないか! 久しぶりだな、ナナ‼」
「達也、か」
「おう、そうだよ、覚えてるか?」
「あ、うん、先輩」
そう、反応したのは可部の一個下で教育機関に入学したナナだった。
「「「「ええええ!?」」」」
その場の一同は唖然、それすら通り越し無の境地。まさしくビックバンほどの威力の事実だった。
「え、ほぼ同期⁇」
「え、師匠って、何歳だっけ?」
「ははっ、お前ら知らなかったか?」
鬼我所長は高笑い、可部自身も後輩との再会にテンションが高まっていた。
「いやあ、お前と会うのは10年? ぶりだな! にしても大きくなったのなあ!」
「え、え?」
「わけわからんよ、師匠」
「ん? こいつはな俺の一個下で教育機関に入学したんだよ、まあ俺がまだ22くらいだったかな? こいつはガキで7歳くらいだったな」
「先輩、こんなところにいたのか」
「いやあ、日本語もわかるようになって、俺はその成長に感激だよ!」
「え、そんな、私たちの世代と、三つしか変わらないんですかっ⁉」
固まった顔が治らないクハ、混乱に混乱を重ねて頭痛を少し感じていた。
「そうだよ、まあこいつと切磋琢磨したおかげで、俺も強くなれたんよ!」
そう言ってナナの肩を持つ。もはや、会議どころではなくなっていた。質問がさらに飛び交っていく。
「その頃のナナはどんな感じだったの⁉」
「師匠は強かったか? ナナ!」
「え、なに、すごくない?」
「可部さんが、かの漆黒と……」
「これは大発見だ、運命だ!」
驚きを隠せないのはクハやゴロだけではなかった。周りにいたお偉いさんや通信班の代表も、すべてが驚愕、驚嘆の嵐だった。
「いやあ、ナナは強かったぞ! あの頃は日本語もカタコトでな、話は通用しなかったけど、背丈を利用してセンスが抜群でもの凄かった。まるで、獣と戦っている気分だった。俺も、たくっさん負けたが、今、戦えば互角だろうがな‼」
「今度します?」
「おお、いいねえ!」
睨み合いが始まり、さらにはどこでやるかも協議し始める二人、それに乗っかるように周りのクハやゴロたち、最近見せることのなかった笑顔が目立っていた。
「っとまあ、もうそろそろいいかい? 君たち?」
真っ黒な女性の声がその場に響き渡った。鬼我は笑いながら、女の怖さともいえるような顔には出さないフェイクの鬼瓦であった。
「おっと、ええと、この辺でな!」
「あ……」
「はい、」
「……」
「じゃあ、つぎ、いこか」
静寂。
「まあ、はい、僕は大阪支部所秘密保持部隊B2所属のNo,010だ。みんなからは『テン』って言われている、所長もお怒りだから、特に説明することはな――やっぱ一つだけ、かな、得意分野はサイバー的な分野です、ええ、っと、そこにいる通信班の代表さん、よろしく。以上です」
白色の髪に、眼鏡をかけている細身の男子。年齢はおそらく20歳くらいだろう、どことなく不思議で優しそうな雰囲気を醸し出していた。
「え、じゃあ、うちね! うちは同じくNo,024。みんなからは『二ヨン』って言われてるわ、気軽に呼んでね! えっとね、うちは、近距離銃かな、この、p90が彼氏よ!」
身長は小さく、童顔の女の子。かわいくてつい撫でてしまいそうな合法ロリの子であった。体に纏う黒いコートの下には数丁もある拳銃に、先ほど指をさしたp90が背中に着けてある。まるで服のように彼女の一部になっていた。
「ってなわけだ、今回は助っ人として来てくれた者たちだから、仲良くなー」
「じゃあ、会議を始める」
その一言でまじめな会議が遅れてスタートした。
「ええ、今回、皆に報告することは二つだ。助っ人が三人来ていることで察しているとは思うが、緊急事態だ」
ナナが久々に顔色を変える。先の盛り上がりも消えて、真顔になる20名に予想以上の話が通った。
一つ目は数時間前に可部、クハ、ゴロの三人で話していたサイバー攻撃。
そして二つ目は、
「というわけで現在、サイバー攻撃されてはいるが、どうするか上との協議で話し合ったところ、大阪支部がその攻撃をしている組織を特定してくれた」
少し顔が緩んでいく一同、これで全支部から徹底的に攻撃を仕掛けるのかと思っていた全員の耳を疑う言葉だった。
「ということなので、我々が一週間後、襲撃することになった」
「「「え?」」」
B3の三人はさらに固まった。
「お、その手があったのか……」
「ああ、場所もすべて特定した、構成員全員の個人情報もすべてだ。国と協力し、洗ってもらったからな。警察にも連絡はしてあるから近隣住民の避難も完了させる。存分に戦ってくれ」
「さすがだな、こえーよ、上の連中は……」
「そうね、まったくだわ」
「まあ、うちがいれば楽勝ね!」
引きに慢心、洗濯機のように動揺と共感が広がる。
「あの、重要人物とかいるの?」
ナナが真顔で口を開いた。
「ああ、あるぞ、一応三人だ」
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