第22話 急襲と急転(後編)

猛は、予想だにしていなかった男の登場に混乱していた。


どうして。

どうして、この人が?

子供に危害を加えようとした立てこもり男にあれだけ厳しくあたっていた彼が。

子供を誘拐し続けていた、盗賊集団の味方をしているんだ?


「ボスに会いに来たんだろうけどよ。悪いな、今は取り込み中だ。アンタと戦う事になってでも……通す訳には行かねぇな」


盗賊のボスの味方をするアリオの意思は、固そうであった。



────第22話 急襲と急転(後編)────



とりあえず、話を聞いてみよう。


「……何故、ここに貴公が?先日、街中で子供を人質に取った立てこもり犯を懲らしめたと聞き及んでいるぞ?何故、誘拐犯達につく?」


変幻のバリアブル・騎士メタル』として、出来るだけ威圧感を出すような口調で喋る。


「オレはここに世話になってた事が有ってな。今回はどうしても目的を達成しなきゃなんねえって事で、ボスに協力を頼まれたんだよ。ここに居るのはそんな理由だ」


「……それが子供達を拐い、閉じ込める事になってもか?」


猛は、徐々に怒りが湧いてきた。

あの時見せた、彼の義憤は……仮初めのものに過ぎなかったとでも言うのだろうか?


「悪いな、それについては答える訳にはいかねぇ。さあ、どうするんだ?ここで問答したって、オレは絶対通さねぇぜ?ここを通りたきゃ、オレをぶっ倒していくんだな」


どうあっても、戦いは避けられそうにないか。


「……仕方あるまい」


猛は、剣状態のカイガをアリオに対して向けた。


「私は『変幻のバリアブル・騎士メタル』。この世に平穏をもたらす為に遣われし、一人の騎士だ。子供達の平穏を取り戻す為に……ここは、通させてもらうぞ」


「へっ。そう来なくっちゃな。楽しみだぜ」


アリオも、自分に剣を向ける『#変幻の__バリアブル・__##騎士__メタル__#』に対し臨戦態勢に入った。


「その鎧……硬そうだが、オレなら砕ける自信有るぜ?」


そう言うと……猛の目の前から、アリオが消えた。

──いや、そう錯覚させるほど、アリオは素早く猛の懐に潜り込んだ。


速い!やっぱり素早い、この人。

けど、ある意味狙い通りだ。

鎧が砕けなかったところを、剣の腹で打ち付けて吹き飛ばす!


猛の狙い通り、アリオの拳は猛のカミス作の鎧を強かに殴りつけた。


「!?硬ってぇな!?」


そして案の定、今回もカミスが造った鎧が砕けるような事は無かった。


よし、狙い通りだ。

砕けなかった代わりに、それなりの衝撃が僕には来てるけど……!

この隙に、剣で……


「よっと!」


だが、アリオはその場でスライディングのように足を突き出し。

猛の足を崩し、その場に転ばせた。


「くっ!」


不意に足を崩され、猛はその場で体勢を崩した。

足元もカミス製作のレガースを着けているものの、このような足崩しまで完全に無効化する事は出来ない。


猛は、慌てて起き上がりアリオからの攻撃に備える。

だが、アリオは追撃はせず猛から距離を取り構えていた。


今のは、攻撃後の隙を補う為の足崩しだったのだろう。

こちらの狙いが、読まれた?


「ったく、凄え防具だな。【琉神拳】伝承者のオレの拳ですら砕けない鎧は、そうお目にはかかれねぇ」


リュウジンケン?何かの拳法だろうか?

ていうかこの人、やっぱり拳法やってたんだ……


しかし、猛は安心出来てはいなかった。


普通、この鎧に攻撃が通じないと分かればもっと焦りを見せても良いはず。

けれど、目の前の彼は……そんな風には微塵も見えない。

それどころか……微かに、笑ってる?


「だけどよ……力でブッ壊すだけが琉神拳じゃねぇ。見せてやるよ……お前みたいなタイプにも通用する、琉神拳の技をよ」


そう言うと、アリオは静かに構えを取った。

その構えを見て、猛は警戒を強める。


目付きが、変わった……

何かが、来る!今までとは違う、何かが!


そして、眼前からまたアリオの姿が消え……次に見えた時は、また目の前までアリオが迫ってきていた。


「琉神拳・『甲徹衝破こうてつしょうは』」


アリオが、また猛の鎧をその右拳で殴りつけた。


────今回も、カミスが造った鎧は砕けるような事は無かった。

だが、今までと決定的に違うのは。

鎧の下の脇腹に、まるで鎧を通さずに直に殴りつけられたような痛みと衝撃が加わった事だ。


「ぐぁ……あっ!」


今まで経験した事が無いようなレベルの痛みが猛を襲い、猛はその場に崩れ落ちた。


何だ!?いったいどうなったんだ?

殴られた場所を触ってみる……確かに、鎧は砕けてなんかいない。

けれど、まるで鎧がそこに無かったかのような……!

直に殴られたように……痛い!痛い……!


「バッチリ効いたようだな。いわゆる『鎧徹し』、それを更に発展させた……お前みたいな重武装の奴を相手する為に作られた、琉神拳の技だ」


猛は、己の見通しの甘さに歯噛みした。


そうだ。素手で重武装した僕に挑むくらいの人だ。

武装を何らかの方法で貫く技くらい、持ってて然るべきじゃないか……!


「今までの攻防で分かったぜ。アンタ、散々騒がれてるけどよ……アンタ自身は大した実力者じゃねえな?結局のところ、その武具が凄いってだけの話だ」


たった二度の攻防で、そこまで見抜かれたか。

やっぱりこの人、武人だ。僕とは踏んできた場数が違う……!


「はぁ……武具だけが凄ぇヤツと戦っても面白くはねぇな。もういい、終わらせてやるよ。頭への攻撃で脳を揺らして失神。技術の無ぇアンタには分かってても避けられねぇ」


マズい……このままでは、負ける!


猛は、自分の打てる手を脳をフル回転させて模索した。


何か無いか。何か……!!


その時。

猛の頭の中に、1つの案が浮かんだ。


彼は、この武器が変形出来る事こそ知っていれど、異様な重さである事までは知らない。

そして、この勝負に既に勝てる気でいる、自信家でもある。


それなら……!


「……フッ。まだ勝負はついていない。我が渾身の一撃を見てから、物を言うんだな」


立ち上がった猛は、カイガを強く握り締めながら叫んだ!


変形デフォーム!ブーメラン!」


剣状であったカイガが、その形を金属製のブーメランへと変えていく。


「行くぞ。受け止められるものなら、受け止めてみろ」


猛は、ブーメラン状となったカイガを、全力でアリオに投げつけた。


だが、アリオは慌てるどころか、呆れたような表情を露骨に露わにしていた。


「は?コイツが『渾身の一撃』だと?ナメるなよ、俺がこんなもん、対処出来ねぇとでも……」


アリオは、飛んで来たブーメランを右手で掴んだ。

手を打ち付けないようなタイミングでしっかりとキャッチした、見事な掴み方だ。

────ただし、今回はそれが仇となった。


「うおおおおおおおおおおおおお!?」


当然、超重量を誇るカイガが手で掴まれた程度でその動きを止めるはずがない。

結果、カイガを強く握り締めたアリオは、右手を支点としてカイガに合わせて回転しながら振り回される形となった。


よし……狙い通りだ!

あとは、『その時』を待つ!


そして、すぐに『その時』はやってきた。

予想外の動きに暫し翻弄されたものの、アリオはカイガから手を離し着地した。

だが、直前まで勢い良く振り回されていた為にその足取りはふらつきを隠せない。


猛は、その瞬間に狙いを定めていた。

猛はふらつくアリオに向かって突進し、彼の両の手を自らの手でがっちりと掴み。

突進の勢いのまま、ふらつくアリオを押し倒した。


こうすれば、彼の手から繰り出される厄介な技の多くを封じられる。

多分足技も有るだろうけど、この至近距離じゃそう強い蹴りは打てないはず!

あとは……!


「(猛、ちょうど良い!右手を高らかに挙げろ!)」


完璧だ。彼が回復し切る前に手探りで探すつもりだったけど、その必要が無い。


猛は、カイガに言われた通り一瞬だけアリオの手から自分の手を離し、高く挙げた。


そして、その右手にブーメラン状のカイガが飛んで戻って来た。


変形デフォーム短剣ナイフ!」


カイガを短剣ナイフ変形デフォームさせ、猛はそれをアリオの喉元に突き付けた。


「……敗北を認めろ。私も命は奪いたくはない。それに、私の武器の重さを思い知ったろう?仮にここから私を押し退けても、この武器がお前の上に落ちただけでお前には相当なダメージとなる」


猛に言われたアリオは、しばし兜の奥の猛の目をじっと凝視していたが。

やがて、諦めたような笑みを漏らすと、小さな声で「降参だ」と呟いた。


そして、ちょうどその時。

カイガの守っていた扉が開き、40代程のワイルドな雰囲気の男と、メガネと正装がとても凛々しい初老の紳士そうな男性が現れた。


盗賊団のボス……と、もう一人は誰だろう?


「終わったぞーアリオ。門番ご苦ろ……」


そう言いかけた盗賊団のボスは、目の前の状況に一瞬言葉を失った。


「あ、アリオ……てめぇがまさか……って、その黒い鎧兜!アンタはまさか!」


我を取り戻したボスは、アリオを参らせた男が噂の『変幻のバリアブル・騎士メタル』であると気付いたようだ。


「……貴公がボスだな?気は進まぬが、私には彼を殺す用意が有る。貴公は思ったより話の出来るタイプだと見た。彼の命が惜しければ、騎士団達に投降するが良い」


猛の警告を聞いた盗賊団のボスは、やれやれといった感じに頭を左右に振った。


「…………あー、まさか騎士団だけじゃなくてアンタが来るとはなあ。アリオもやられちまう訳だ。仕方無え、アンタにも見せてやるよ。ヌドロクの野郎から奪ったモノをな」


そう言うと盗賊団のボスは、猛に向かって何かを軽く投げ渡して来た。


反射的に受け取った猛は、それが何なのかを理解するのにしばらく時間を要した。

しかし、それを理解した時……猛の中で、全てが一つの線に繋がった。






「ヌドロク様、貴公の品を盗んだ輩を、捕らえました」


ヌドロクの屋敷にて、混成部隊長のラヴァが目隠しをされ身体を縛られた男をヌドロクの前に差し出した。


「ほお!そうかそうか!仕事は遅かったが、まあ良い!品は……品は無事なんだろうな!?」


「ええ、後でお渡しします。それよりも……今回は、その男の処遇を、貴方にお任せしたいと思いまして」


「む?ワシに任せるとな?」


ヌドロクが、意外そうな表情を浮かべる。


「ええ。ヌドロク様は我が国における重要人物ですから。特別に、腹に据えかねていたヌドロク様にこの男の処遇を任せようかと」


ラヴァは、丁寧に一礼しながら粛々と言葉を述べる。


「……むう、貴様ら護衛騎士団も案外ハナシが分かるものよのう。よし……任せるという事は、この場で首をはねても良いという事だな?」


「ええ、どうぞヌドロク様のご自由に」


それを聞いたヌドロクは、下卑た笑みを浮かべながら棚からゴテゴテの飾りが付いた短剣を持って来た。


「ヌフフ……まさか、合法的に人が殺せる時が来るとはのう。一度やってみたかったわ。では……すぐにやるとするか」


ヌドロクは、縛られて倒れている男に近寄ると、ナイフを顔の高さまで掲げて構えた。


「ワシの大事な物を盗んだこそ泥め……今ここで、報いを受けるが良いわ!」


ヌドロクが、ナイフを振り下ろそうとした、その瞬間。


「報いを受けるのはテメェだ」


倒れていた男──アリオが、力づくで自らを縛る縄を引き千切り。

驚くヌドロクの背後に素早く回り、羽交い締めにした。


「なっ!?貴様!!私兵よコイツを!」


驚くヌドロクが、室内に立っていた私兵に命ずる。

だが、その私兵達の前に、一筋の槍撃が振り下ろされた。

その一撃は、地面を。ヌドロクの屋敷全体を揺らす威力を見せた。


「……これでも手加減しています。この一撃をその身に受けて粉々になりたくなければ、投降して下さい」


ラヴァと共に来ていた猛が、私兵達に警告した。


戸惑う私兵達とヌドロク達に、状況を静観していたラヴァが進み出た。


「既に我々は全てを知りました。この屋敷は、護衛騎士団達に包囲されています。あなた方が逃げ果せるのは不可能です。どうか、ご投降を」



かくして、盗難の被害者であったはずのヌドロクが逮捕される事となった。





捕まったヌドロクは、裏で子供の人身売買に手を出していた。

それを察知した盗賊団……いや、義賊団・『疾風の盗み屋』達は、ヌドロクに目を付けられた子供達を先に誘拐し匿うという形で救っていたのだ。

そして、ヌドロクの屋敷から人身売買に関する、暗号化された極秘のリストを入手。

暗号を解いた上で、それをこっそりと官憲に提出する……というのが、義賊団の目的であった。

猛があの時渡されたのは、義賊団のボスと古い関係にある王都の暗号解読の専門家が解読した、人身売買の決定的な証拠となるリストだったのだ。


事情を察した猛は、『間もなくここに私が待機させていた護衛騎士団の一人が来る。彼には事前にある程度事情を話しておくので、護衛騎士団の協力を仰げ』と言い、護衛騎士団姿に戻って義賊団のボスと接触。

追い付いたラヴァ達に事情を説明し、ラヴァの提案の元油断しているヌドロクを捕縛する為に、アリオの力を得てひと芝居打ったという訳だ。

事前に捉えられていた誘拐未遂犯の3人も、義賊団の一員。

彼らが着けていた首輪には、高い精神抵抗の魔法がかけられており、なお且つ、自白魔法をかけられた事を検知し、ボスの持つ魔道具に反応する機能が有った。

騎士団の襲撃を事前に察知出来たのもその機能故である。


義賊団が最初から協力を仰がなかったのは、どこからヌドロクに情報が漏れ出るか分からないという懸念と。

取る手段は限りなく黒に近いグレーなものであるが為に、バレれば捕まってしまうからだ。

ボス曰く、『義賊団がハナっから官憲に媚びてたまるか。捕まるのも俺たちのプライドが許さねぇよ』だそうだ。


「おかしいと思ったんだよ。迎撃体勢バッチリだった割には、逃げたり防御したりするだけで、時間稼ぎの消極的な戦い方ばっかりだったからよ」


第1部隊のベテラン斧使い・エクサが苦笑いを浮かべた。


「まあ……もっとスマートな解決方法は有ったとは思います。けど、『終わり良ければ……』ですよ!」


猛が、笑顔でエクサに返した。


そう、義賊団達は仮とはいえ取り調べを受け、何人かは戦闘で軽い傷を負いはしたものの。

子供達は手厚く保護されていて無事で、黒幕のヌドロクも証拠付きで捕まった。

結果としては、最高に近いのではないだろうか。


「まあ、そうだな。言うなあ、ボウズ。途中で『変幻のバリアブル・騎士メタル』サマに控えてるよう言われたヒヨッコにしてはなあ」


「あはは……すみません、まだ未熟者ですから」







そして、夜が開けてきた朝方。

猛は、リンガランド家の屋敷の前に来た。

ちなみに、アイシャはまだ帰って来ていないのは知っている。

王都はアイシャの馬・メリアの脚をもってしても1日はかかる。

そしてそもそも……アイシャは『王都での反乱の鎮圧』など任されていない事も知っている。

そもそも、今回のヌドロクの犯罪をいち早く察知したのは、アイシャの父・ザルフである。

そのザルフが、旧知の仲の義賊団のボスに情報を流した事から一連の動きが始まったのだ。

そして護衛騎士団の急襲作戦が決まると、『アイシャが本気を出したら死人が出かねない』ということで、ザルフが適当な理由でアイシャを王都へと遠ざけたのだ。

……勿論数日後、アイシャの怒髪天がザルフに向けられたのは言うまでもない。



それはさておき……


「ふう、やっと帰ってこれた」


今日は色々有りすぎて疲れた。

また『変幻のバリアブル・騎士メタル』として動く事になったし、最初のターゲットは実は義で動いていて、黒幕は被害者だと思われていたヌドロクだっただなんて……

とにかく疲れた。早いとこ帰って、休もう……


──だが、運命の神様は、猛がこのままゆっくり休む事を許さなかった。


「おい、待てよ」


呼び止める声がして、振り返ると。

いつの間にか、アリオが猛の背後に立っていた。


「アリオさん……どうしたんですか」

 猛は今更驚かなかった。

この人なら、自分に気付かれずに接近する事なんて容易いだろう。


「まあ、ちょっとな……妙な流れになっちまったが、ヌドロクの野郎を捕まえられたし、お疲れ様って言いに来たカンジだ」


なんだ、バトルジャンキーっぽそうと思ってたけど、意外と律儀なんだな。


「いえ、そちらこそお疲れ様です。ヌドロクを直接捕縛したのは貴方ですし、手柄でしたよ」


「ああ、お前もあの場に居たよな。なんか、つくづく俺らって一緒になる事が多いな?街に入る時といい、『扉の前といい』、さっきのひと芝居の時といい……」


「ええ、なんだかそうですね」


────疲れていた猛は、アリオの言葉に妙なワードが紛れ込んでいた事に、すぐには気付けなかった。


数秒後、猛がハッと気付いた時には。

目の前のアリオは、勝ち誇った笑みを浮かべていた。


「やーっぱりな。俺達は扉の前でなんか会ってはいねえ。俺があの時扉の前で会ったのは『変幻のバリアブル・騎士メタル』だった。つまり、それをすんなり肯定したお前こそが……ウワサの『変幻のバリアブル・騎士メタル』の正体ってワケだ」


あああああああああ!!やらかした!!

疲れた頭で、引っ掛けに気付けなかった!!


「え、えっ!?いや……僕が『変幻のバリアブル・騎士メタル』!?有り得ないですって!そもそも鎧とかの色が……」


「よく見りゃ、細かいデザインが一緒なんだよ。それに、鎧を殴った時の感触が全く同じだったんだよ。そこで気付いたぜ」


ああああ!これだからバトルジャンキーな人は!

鎧を殴った感触なんて覚えてるモンなの!?


「へぇ……ウワサの『変幻のバリアブル・騎士メタル』サマの正体は、こんなルーキーくんだったってワケか。控え目そうな面しといて、あんな風にヒーローを演じるのが好きとは意外だぜ」


「ち、違いますって!これは成り行きというか!好きでこうなったワケじゃ!」


「はいはい。まあ……黙っといてやるよ。こんな面白そうなネタ、おいそれと人に話すのは惜しいからな」


「え。ま、まあ、黙っておいてくれるなら……絶対ですよ?」


「ああ、男に二言は無ぇよ」


アリオは、右手を差し出して来た。


「改めて。【琉神拳】伝承者・アリオ・メラクだ。よろしくな、『変幻のバリアブル・騎士メタル』様よ」


「そ、その名で呼ばないで下さい……」


猛はだんだん恥ずかしくなって赤くなってきた顔を落ち着かせながら、握手に応じた。


────その時であった。

猛の胸元の紫の宝石が、強く光り輝いたのは。


「うわっ!?」


「お?何だ?」


その光は、数秒経つとゆっくりと消えていった。


「何だよ、今のは?」


「いや、僕にも……」


こちらの世界に来た時にいつの間にか首から提げていた、この紫の宝石。

これについては、まだ分からない事だらけだ。


「何だか、お前は不思議なモンばっか持ってるな?変形出来るめちゃくちゃ重い武器に、とんでもなく頑丈な鎧に、その石……お前と一緒に居ると、なんだか面白そうだな」


「えっ?」





後に、思い返してみれば。

この時が、『相棒』たる彼・アリオ・メラクとの邂逅だったのだ。





─────────────────────────

あとがき


読んでくださってありがとうございます♪

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