よろしい、ならば戦争だ
朝、登校中、他の生徒もいる中での学園のアイドル生徒会長からの告白。
「一目惚れなんだ。付き合ってくれないかな」
照れたような、はにかんだ笑顔にきゅんとした生徒も多かったのではないだろうか、それにシチュエーションがなかなかに少女漫画だ。
そう、少女漫画なら定番として受け入れられるだろうが、残念ながら現実。
おまけに
「どうも本気とは思えないのよねぇ・・・・・・誰でもいいから告白したって感じ。ほら、罰ゲームで誰にでも良いから告白するというような?」
がじがじと箸をかじりながら考える。行儀悪い?
知っているから放っとけ。
今は昼食中。
友人たちと教室の中で机を並べてお弁当を食べているのだ。ちなみに窓際。
「んーでもそんなことして会長サマに何のメリットが・・・・・・本気ということはないの?」
「いやいやいや、だって私だよ? 生徒会に入っているのならまだしも――」
そう、うちの学校では男女7歳にして何たらという思想のもと女子部と男子部に別れているのだ。
それでも全く断絶するのは・・・・・・ということで3年に一度、合同の文化祭をやったりして、それなりの交流はある。生徒会に入っていれば。
今回、私に告白してきたのは男子部の生徒会長で、何の交流もない相手だった。
そんな相手が告白? 何かの間違いだろというのが正直な感想だ。
「でも、どうすんの? いい加減に返事しないとマズくない? 外野がうるさくなってきたよ」
何しろ、女子にも男子にも人気のある相手。
断ったら断ったで「会長様をふるなんて何様よ! ブスがっ!」になるし、かといってOKしたらしたで「身の程もわきまえないのかしら、あのブスッ!」となるのが目に見えている。
だからとっさに「と、とりあえず保留で!」と叫んだのは我ながら英断だと思う。
「そうなのよね・・・・・・」
ぶっちゃけ本人相手はこのまま何事もなくバックれるという手段がとれるとふんでいる。
ちょっとした遊びで告白した相手のことなんて正直、ずっといつまでも覚えていないだろう。
ただ、本人はそれで良いとして、周囲が・・・・・・ということだ。
断っても受けてもブーイングなんて一体、どないせいちゅうねんだが、何とかしないわけにはいかない。
下手したらイジメに発展である。
「一応、考えていることはあるんだけど・・・・・・協力してくれる?」
おはよう、と挨拶を交わしながら教室に入り、自分の机に鞄を降ろす。
と、気配がして自分の周囲に数人が立ったのがわかった。
――来た、か・・・・・・?
「あ、あの高倉さん。ごめんね?」
「私達、事情知らなくて、その・・・・・・」
「え、いや、いいのっ、気にしないでっ」
とか云いつつも内心はガッツポーズだ。
――よぉっしゃぁあああー!!!
あれから私が友人たちに協力してもらってやったことは、マンガを描くことだった。
別に小説でも良かったのだが、マンガの方が皆に読んでもらえると思ったのだ。
テーマはもちろん「イジメ、ダメ、ゼッタイ」。
捏造に捏造をこねて混ぜて作った会長サマの告白の裏事情だ。
ストーリーはこうだ。
先生に頼まれて男子部の生徒会長室に書類を届けにきた女子生徒が、生徒会長と副会長がキスしているのを目撃してしまったのだ。
二人は先日、想いが通じ合ったばかり。
その二人の関係を守ろうと女子生徒に口止めを頼み、女子生徒は誰にも云わないことを約束する。
が、疑心から信じられない会長は衆人環視の中で女子生徒に告白をしてしまう。
そうして仲間にすることで女子生徒の口を完全に封じてしまおうと目論んだのだ。
だが、そんな事情をしらない者たちは、嫉妬から女子生徒をイジメて追い詰めてしまう。
そして追い詰められた女子生徒は、とうとう会長と副会長の前で自殺をはかるのだ。
「会長、誰にも云わないって云ったじゃないですか・・・・・・どうして信じてくれなかったんですか・・・・・・?」
そう云って女子生徒が屋上から飛び降りるシーンがハイライトだ。
人、一人の死を出した二人の恋が当然、上手くいくはずもなく・・・・・・という見事に誰も幸せになれない話が出来上がったと思う。素晴らしい。
こういう何か事情があるかもだからイジメないでね、というメッセージがこめられている。
会長の意味不明の告白のせいで妙な空気になっていた私の周囲の雰囲気がイジメに発展するのを防ぎたかったのだ。
結果、こうして数人が云いにきたところを見ると、どうやら私は賭けに勝ったらしい。
――いっ・・・・・・よぉおおおしっ!
思いっきり雄叫びを上げたいのを私はぐっと我慢した。
終
奇人変人が集まる我が学園 あぷろ @apuro258
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