第23話 実験


「はあ……はあ……イスリアはどこだ……」


俺は索敵魔法の反応が濃くなっていくのを確認する。索敵魔法を使うと腕にリングがはめられる。そのリングの中心に付いている丸いガラスに赤いつよい光が出ると近くに探している人がいるということだ。


俺は街中をひたすら走っていた。武器を持ってくるのを忘れてしまったが、俺にはユウから継承されたアルティメットボディ究極体 という、使った者の力を最大まで引き上げる強化魔法がある。だから剣がなくたって大丈夫な……はず。


「お?反応がさらに濃くなってやがる……ここが今までで一番反応が強いな。この先か……」


俺は前を見据える。どうやらこの細い路地の先らしい。行ってみるしかないな。俺は路地を駆け抜ける。順調に進んでいたが、何者かが二人、空から降ってきた。飛び降りたという方が正しいか……?


「私の名前はアルトリア・ネオランセ」

「俺の名前はアーマジア・ネオランセ」


いきなり現れて名乗れても困るんだよなぁ。ここは名乗っておくのが筋か……。


「俺の名前はストレンジャー・ボーマだ。お前らは何者なんだ?なんのために俺の前に現れたんだ」


黒フードの二人は口を揃えて異口同音で答える。


「「我らはの見習い術士である。ボーマと、言ったかな?君の探している人物はイスリアともう一人の女子だろう?」」


こいつら、なんでイスリアとユウのことを……。まさか、こいつらが……こいつらが……誘拐犯か!!ユウを……イスリアを……奪い返さなきゃ!


「ああ、そうだ。俺はイスリアを奪い返しにきた。お前らは一体なにを知っている?全部話せ。居場所も教えてもらいたいんだがなぁ」


「お前に話すことなどない。むしろ、話せないんだがな。無論、居場所を教えるなど、する訳ないだろ」


黒フードのせいでどっちが喋ったかわからないが、おそらく声からしてアーマジアの方だろう。ちなみにアーマジアは男です。彼は黒フードからだから微かにしか見えなかったけどニヤリと笑った気がした。


彼は、腕を前に出して魔法を唱えはじめた。腕の前に魔法陣が出現する。その中から尖った小さい石みたいなのが何個も出てきて俺に襲いかかる。だが、俺は華麗なステップで左右上下に交わしていく。


「なかなかやりますね。ですが、あなたの敗北はすでに決まっている」


そういや、サルトリアはどこへ行ったんだ?さっきまでアーマジアの隣にいたはずなのに……。そうか、きっとどこかに隠れていて俺を奇襲するつもりなんだな。考えているうちにいつの間にか足元に魔法陣ができていた。その中から植物の太いツルがクネクネ動きながら現れて、俺に巻き付いてくる。


ギガプラント植物攻撃 !」


俺の体はツルによってどんどん空へ上がっていく。まずいな、この状況……。


「クソッ!こんな植物ごときに、戸惑う俺じゃない!でも……剣がないんじゃ斬れない。うーん……。あ、火の魔法を使えば……」


ブレイクスピア破壊の槍


今、どこから声が……。くっ。硬化魔法を先に使っておくか……。


「ぐあああ!この!この!」


俺は植物を殴りまくるが、全く通用しない。当たり前の結果か……。火属性魔法の魔法陣はできている。だから、あとは植物に向かって撃つだけ……。


「グハッ」


俺はうろたえてしまった。槍が腹に当たったのである。よかったぁ、硬化魔法を使っておいて。槍の色は綺麗な緑だった。蛍光色のような綺麗で鮮やかで……。


「チっ、外したか。いや、外してはいないはず。微かだが、当てた感触もあったし。この男……硬すぎる」


「へへっ。硬化魔法使っておいて正解だったぜ。それでも<破壊の槍>ってだけはあるな。かなり痛いぜ……クッ」


俺は目の前にいる黒フードを着ているサルトリアに向かって呟いていた。


「きさま……。生身の人間が、ブレイクスピアを受けて耐えられている、だと……!?暗黒術師団独自の魔法技だと言うのに。お前何者……」


「言ったろ?ストレンジャー・ボーマって。俺は自分で言うのもあれだけどただ者ではないさ。さぁ、倒れてもらうわ」


火属性魔法の中の上級魔法である、ファイヤーストーム 炎の竜巻によってサルトリア、植物もろとも燃え盛る。そして魔法によって出現して植物のツルは焼け落ち、サルトリアは燃えながら地面に落下した。


「大丈夫か!?サルトリア!」


「私は、平気だ。このぐらいの炎でへばってたら、暗黒術師団は名乗れない。あんた、中々の強さなんだね。気に入ったわ。フフ」


彼女は不敵な笑みを浮かべると、黒フードをバサッと体から取ってその辺へ投げた。


「これが、私の体よ」


普通の女子だな。俺はそう思った。


「まあ、姿も晒してしまったからというのは理由にならないけど。あんたを認めたって意味として案内してあげる」


「おい!サルトリア!それは上のやつらがダメだって言っていたではないか」


「いいのよ。助けられるはずもない」


「それもそうか、では、こちらへ」


「お、おう」


俺は二人に導かれて、路地の中を通っていき、ようやく路地裏に出てきたところで、魔法陣が目の前の壁に貼ってあるのが見えた。


「な……。こ、これは一体……」


二人は異口同音で、


「「さぁ、助けたいなら行きなさい。あなたに助けられるとは思えないけどな」」


俺は無音で魔法陣の中へ入って行った。魔法陣の中は変な感覚がする。気持ち悪い空気。景色も気持ち悪い。だが、この中から探しださなければならない。


『グルアアアア』


ゴンっという音と共に獣の雄叫びが聴こえた。その声の下元へ近ずいていく。そこには、イスリアが裸でいた。


「!?!?イスリア!そこにいるのはイスリアだよな!?その怪物の腕にかかってる鎖はなんだ!?」


イスリアと思われる女子に声をかける。イスリアは俺の声を聴いてから俺を見るや否や、目をキラキラさせて


「ボーマくん!!迎えに来てくれるって信じてた……。これはね、私の服を素材にして作ったの。この怪物の正体を、聞いたら怒るでしょうね……」


「その怪物の正体……。なんてあるのか」


「あるわよ。この怪物の元の名は――」



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