第22話 イスリアの行方
イスリアはどこに……ユウもイスリアもいなくなる……なんて……あああああ!!
俺は心の中で叫んでいた。涙を流しながら走っている。
そうだ……どこかでどこかで見落としがあったかもしれない……。きっとそうだ。もう一度、部屋に戻ろう。
そう決意した俺はまた部屋へ戻ってきた。部屋の中を見渡すと、窓が開いててカーテンが外へ向かってたなびいていた。今日は風が少し強いらしい。俺は窓へ顔を突き出して外を見渡す。
「イスリア……ユウ……君たちはどこへ……。あ、ちょうどウールラさんから教わった索敵魔法で探してみる手もあるな」
この世界における索敵は、言わば警察犬のようなものだ。探し相手が着ていたり身につけていたり座っていたりしたところに索敵魔法を使う者が手を置き、探し相手の魔力を索敵魔法を使う者の体に伝える。そうして、索敵魔法は発動するのだ。イスリアがもし、拐われたとしたら、おそらくユウと同じ人物によってのはずだ。
俺は索敵魔法を唱えて、イスリアの身につけていたコテに手を置く。なんでコテだけ置いていったのかと、少し疑問に思うところもあるけれど。
そして、索敵魔法が反応した。イスリアは街中にいるらしい。この索敵魔法はだいたいの位置がわかるので大変ありがたい。
「待ってろよ、イスリア……ユウ……。必ず、必ず俺が助けてやるからな」
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
「は、離して!」
私は離してと何度言っただろうか……。多分100は言ってるかな。私こと、イスリア=フォン=クルーツは今、黒いフードに包まれた何者かに拐われていた。
この隣で私の腕を掴んで強制歩行させている黒いフードの人物が初めて口を開いて喋った。
「うる……さい……。言うことをちゃんと聞け。私の言うことを聞いていれば君は死ぬことはない」
その声はフードの下からだったので、かすかに低く、男なのだろうか。女性の可能性もなくはない。私が魔法を使い、こいつをぶっ殺せば済む話なのだが、このフード野郎の手には魔法を封じるなにかが埋め込まれているのか、魔法が使えない。
「あんた、もしかして皇帝の差し金?言うことを聞いていれば殺さないとか言っておきながら、いざ目的地に着いたら殺すんでしょ?目に見えるんだけど。私を待ってくれてる人がいるの。早く離して」
「今のあなたに魔法は使えない。実に弱々しいこと。だから今、私があなたを殺すことだって簡単。あなたを待っているのはボーマでしょ?彼なら助けに来るはずですからねぇ」
なんでボーマくんのことを知っているんだろ……。私はついにひとけの少ない路地まで連れてこられた。そして、路地裏まで来た。今いる路地裏の私が立っているちょうど真正面の壁に、真正面っていっても距離は少しあるけれど。そこには魔法陣が張られていた。
「ふふふ、さああの魔法陣の中に入りなさい?あ、ちなみに先着がいるけど」
先着ってだれなんだろ。てか、魔法陣の中って入ることができたんだ。いや、種類によってそういうのがあるってことなのかも。ボーマくんは必ず助けに来る。だから、私も頑張って抜ける方法を探すんだ。
「へぇ。魔法陣の中って、入れるんだ……失礼しまーす」
私の呑気な態度に違和感を覚えたのか、フード野郎が疑問に思っていた。
「?。なぜ、あなたはそんなに嫌がらないんですか?助けが来るのを待っているんですか?こんなとこがわかる人なんてそうそういませんよ?」
私は魔法陣に入る前に、フード野郎に答える。
「うん、たしかに来ないかもしれない。でも、私は信じてる……。きっと今頃、私のために駆けつけてきてくれているに決まってるもの……。私は必ず脱出してみせる」
「ふふ、いい度胸の持ち主だこと。そういう奴は嫌いじゃない」
まじで性別どっちなの……。
そして、私は笑顔でフード野郎に振り向いて、「あんたの作戦になんか負けない」と、呟いてから魔法陣の方へ振り向いて魔法陣へ歩いていき、入った。
魔法陣の中は色とりどりの模様で出来ていた。異様な光景だと思いながら辺りを見渡す。ちょうど右を向いたらそこには――。
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