第19話 戦友


皇帝の魔法陣にまだアルティメットボディの能力が消えないうちに魔封じの剣を当てる。魔法陣と魔封じの剣がぶつかり合い、生じたオーラはすごいものであった。


まだ、黒の後継者がイネビュラだったころイスリアとクリスタル王は――


「もうそろそろで屋敷の外へ出られるはずだ。しかしなぜ彼は私たちを戦いに参加させなかったのか……。なぜなんだろうな」



「そうね……。おそらく、ボーマさんたちは私たちがこの国の重要な人材だからかな?だって父上は王じゃないですか。反乱軍は父上が殺られたら崩壊するに決まっています。ですから私たちを戦わせずに逃がした……。そうに決まっています」


「そういうことか。たしかに考えればそういうことになるな。おっ、やっぱりだ。もう目の前にあるドアの窓から光が差し込んできているではないか」


「ええ。とても綺麗です」


イスリアとクリスタル王は走って逃げていた。屋敷が広いため少し時間かかったが、外へ出ることに成功する。しかし。



「な、なんだこの数は……」


「嘘……」


二人は驚愕していた。何故かって?それは、もっとも恐れていた結果である。すなわち、屋敷周辺にはすでに取り囲む形で五万もの兵士たちがいたのである。この屋敷一つ占領するのに五万もの兵を費やしてきたのである。


「でてきたぞーーーー!この反乱軍の一番偉い人達に違いない!!!陛下は見逃してしまったらしい!全員こちらへ来い!みんながいれば投降するだろう!」



目の前にいた一人の兵士が五万の兵士へ教えた。


「誰が投降すると言ったのだ。投降するのは君たちの方さ。グランド・バーン大陸切断 !」


途端、クリスタル王の上へかかげた剣に地面が反応して五万の兵士にしか伝わらない大規模な揺れが発生する。そしてその五万の兵士の下の地面は「ビキビキ」と音をたてて少しずつ割れていくと思ったのも束の間。一気に地面は割れていく。


「うわあああ!」 「ぎゃあああ!」 「なんだこれえええええ!」 「た、助けてええええ!」


あらゆるところから兵士たちの悲鳴が聞こえる。そして、半分の兵士が割れた地面へ一気に落ちていき、やがて悲鳴が聞こえなくなった。聞こえなくなったのを確認したクリスタル王は剣を降ろす。すると割れていた地面は一気に元に戻っていく。


「グッ……。今のでかなりの魔力を使ってしまった……。二回目も使えるかはわからない……」


クリスタル王は小声で惜しいと悔やんでいた。あと半分……、駆逐したかったという惜しい気持ちである。クリスタル王は疲れがバレないように踏ん張って地に立っている。



「これでわかったか雑魚兵ども!いくら数を束ねてきても今の我が一撃が、貴様らを一網打尽にするんだぞ!無駄な死をするぐらいなら投降せよ」


クリスタル王はほんとはあまり死者を出したくないのだ。しかし敵方の兵士は



「へっ!あんたのその魔法?かなんかはしらんがそれにも使うには限度があるはずだ。それが車で耐えればいい」


「くっ……気づいてしまったようだな。だが、我が魔法には限度がない。残念だったな!今すぐ投降しろ」


クリスタル王のあの魔法には限度はある。要はデタラメなことを、言ってしまったということだ。クリスタル王はそれを自覚している。


「そ、そんな……魔法の理を超越している……。仕方ない。投降しま……す」


彼があの兵士の中で一番偉い人物だったのだろう。これで約25000の兵を手に入れたことになる。


そしてボーマと皇帝の激闘へ戻る――



魔封じの剣によって魔法を封じられた、皇帝はある秘策にでる。


「俺は世界最強の魔法剣士であり、皇帝である。貴様ごとき雑魚に負けるはずがない。例え魔法を封じられたからといって我に火力が無いわけではないのだぞ」



皇帝はそう言うと、皇帝の剣の周りに氷が漂い始めたかと思うとその氷は剣に取り込まれて氷剣と化した。



「それは魔法なのか……?魔法は封じたはず……いったいなにが……」



「それは教えられないなぁ」


さらに剣の周辺は氷点下にいったかと思うほどの寒さに覆われた。俺の立っているところもめちゃくちゃ寒い。


あれが魔法だとする……。でも、封じたはずなんだ。どうして?うーん……。ああ、なるほど……勝手な仮説だが、おそらく魔法は魔法でも別の一種なんだろう。封じられる魔法とそうでない魔法があるということだ。


そこを見破れなかった俺はまだまだだな……。


「喰らうがよい。我が究極の一撃を。名を――ゴットアイスブレス 冷徹なる神の息吹を」


「そこまでだ、陛下!今はその技はお控えていただきたい!もう帰りましょう。陛下も満足でしょう?相手の戦力を測れたのだから」


どこから入ってきたのか、また知らない新しいキャラがでてきた。こいつも敵キャラみたいだな。


その何者かは、突如壁から入ってきた。姿は白いフードに体を包まれているため詳細はわからない。ただ、背中に武器として大剣がぶら下がっていた。相手にしたらかなりきつい戦いになりそうだ。


「なにを言うかランスロット。ここで倒さないでおいてどうするか。ここで見逃し、こいつらが立て直しをしたらどうなると思う?」


「はっ!それは十分承知です。クルーツ家ばっかに気を取られるのではなく、他の領土にも目をやって頂きたく。他の領土の軍も徐々に動きだしておりまして、体制を立て直した方がよろしいかと。まずは他の領土を奪い返すことを優先しませんか」


「む、……たしかにそうかもしれんな。ボーマよ、よかったな。ランスロットが来てくれなかったら貴様は死んでいたのだぞ」


「お、おう?」


「またな、戦友」


皇帝はランスロットと呼ばれし者と一緒に帰っていった――。てか、戦友!?はい!?いつからなったんですかねぇ!?とりあえず、帝国軍が立て直す前に俺たちの立て直しを図らないとな。


ここから、帝国を巡る騒動が起ころうとしていた――

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