第18話 アブソリュートビクトリーデクレーション
イネビュラと対等に渡り合うためにはどうしたら……。
『グハハハ!弱い……弱すぎるぅ。グルルル。腹減った。喰う。喰う。貴様から食してやる……。グルルル』
まずい、食われる……。イネビュラは剣を二本出現させて手に持った。あれがイネビュラの武器なのだろう。左手の剣は赤色をしていて、右手の剣は青色をしているかっこいい剣だ。あいつにはもったいなすぎるな
「お前も魔法剣士を目指すのか?ま、魔法剣士を名乗るなら俺を倒してからにしろ」
俺は気合いを入れながら地を蹴り、思いっきり前に走ってイネビュラの目の前まで進んだあとは剣を斜め上に斬りあげる。
しかし、それを2対の剣でイネビュラは防ぐ。
そのあとからは激しい攻防が続いた。二本対1本。どちらが勝つかは明白だが、俺は死にものぐるいで必死に剣を振り回し、まるで素人かのように戦う。
対してイネビュラは戦闘技術こそ高いため、それらを簡単に弾き返す。たまに俺の肩に剣の先端があたり血を出すが、それでも戦い続ける。剣を交えている間に俺はイネビュラを斬る方法を考えた。
イネビュラの後ろに赤色の魔法陣が浮かび上がる。それは、俺の秘策である。まだ初歩的な魔法しか使えないが敵をかく乱させるには充分だ。
皇帝はサド師匠に時間稼ぎをしてもらってるため、こちらには手を出せないはずだ。今こそ好機だと思った俺は火属性の魔法を唱えてイネビュラの後ろから放つ。すると魔法はイネビュラの背中に命中。イネビュラの体が揺らぎ、剣を降ろすのが見えたのでそこを見逃さず、一気に畳み掛ける。
腹を中心に切り刻んでいく。やがてイネビュラの体は剣による傷だらけになった。
しかし、勝ったと思ったのもつかの間だった。イネビュラの周りに緑色の光が満ち溢れたかと思いきやたちまちイネビュラに負わせた傷は回復して治されていく。ついに完全に傷が塞がった。これでは勝ち目などないではないか……。
『フハハハ。甘いな少年。俺の
俺は顔色を真っ青にしていた。勝てると思っていたのだ……。一瞬でも、勝てると思っていた……俺がバカだった……。やつはユウが精一杯の力を込めないと使えなかった治癒魔法を簡単に使ったのだ。しかもあいつには限度がない。もう、あいつを下す力など……ないに匹敵する。思考していたら寝かされていたウールラが起きて俺に話かける
「まだ。まだ諦めちゃだめよ。必ず勝つ方法はあるわ。あの治癒魔法を上回る最強の一撃をやつに叩き込めば……ね。ユウだってあなたが勝つのを望んでいるはずよ。愛人だってあなたに勝ってもらうために皇帝と必死に戦っている。私があなたに勝てる必殺技を教えてあげるわ」
俺は必殺技を教えてもらえる立場にあるのか?俺はイネビュラを倒すのに値する実力があるのか?俺は何度も自分に問いかけるが、答えを見つける。ウールラに従うしかないという答えだ
『必殺技だと?俺に勝てる必殺技などあるのか?まあいいわ。ないと思うから見守っててやるから相談してろ』
俺はイネビュラにも助けられたと言っていいのか?とりあえずウールラの近くに行く。
ウールラが今目の前にいる。相変わらず異世界の住民は可愛いなぁと思いながらウールラに質問する
「なぁ、ウールラ?やつに勝てる方法ってなんだ。もしや皇帝を狙って撃ったあの技か?あれで倒せるとは到底思えないけど……」
「うん。あの技ではないわ。あなたに教えるのはその人がもつ最高火力を引き出す力よ。その名も……」
「その名も?」
「
い、い、いや!!名前ダサすぎやろ!!!いくら究極魔法だからってネーミングセンスのなさ!!嘘やろ……。ま、まあ、それは置いといて。
「なるほど、それは術式は必要なのか?」
「私が教えるから必要ないわ。いいえ、私が教えるというよりユウが教えるってことになるわね」
「ユウが教える……?ユウは……ユウはもう……」
「まだあの娘から微かに心臓の鼓動が聞こえます。私たちの娘はまだ死んでいないのよ」
ウールラはそういうとユウの元へかけつけ、ユウに治癒魔法を与えたらたちまちユウの傷は回復していき破壊された思い出も元通り。
「ユウ……起きて」
「ん……おか……お母さ……ん?」
「そうよ。覚えていてくれてありがと。今はあなたの力が必要なの。あなたが好きな彼にキスをしなさい。そうすればアルティメットボディを継承できるわ」
「ボーマさんに……キス……!?」
ユウはなぜか顔をかあああと赤くしている。なぜ赤くなっているのかはすぐにわかった。ユウとウールラは俺のところに戻ってきてユウは俺の唇に口を付けてきた。しかも、とても深く……長い時間を……。そう、つまりこれはキスである。
元いたとこではされたことがなかったので目をまんまるにしていた俺だったが、やがてユウの熱いキスに集中していたせいか、俺も目をつぶってキスをする。そのままキスは発展していきディープキスとなった。さらにユウは抱きついてくるので俺は緊張を隠せずにはいられなかった。心臓がバクバク鳴る。ユウが生きていて、助かってよかったという安心感とキスされたという緊張感が重なって変な気分だ。
ファーストキスはイスリアに捧げたかったのだが仕方がないことである。その後もまだ俺とユウのキスは続いていた。ウールラが止めと言うまでやめられないらしい。
そして開始してから5分は経過した。キスの5分はとても長いと思う。ウールラが止め!と言ったのでユウはハアハア言いながらキスをやめて俺の唇から離れていく。
「ん//んぅ……。き、緊張したあ……。これが継承するための儀式だなんて……。ボーマくん。頑張って……絶対勝ってね……」
キスというご褒美をもらったのだから勝たねばなるまい。俺はユウとウールラにありがとうと礼を言ったあと、イネビュラのところへ戻り
「お前を倒す準備は整った。
俺が叫んだ直後、凄まじいオーラが体の周りから発生する。黒と赤の電撃がほとばしりながらオーラは続く。そしてそれらは体へ取り込まれていき、ついに俺は最強の体を手に入れた。
「
俺は決めゼリフをいうとイネビュラへ会心の一撃を与えた。イネビュラの
しかし、イネビュラはまたもや回復する。俺は悟った。やつを倒すには指にはめているリングを壊さなければいけないと。相手に俺が気づいたとバレないためにも意味のない連撃を叩き込む。そして、最強の一撃がリングに当たる。
しかし、赤黒い光が攻撃を通さない。
「グッ……!やはり一筋縄ではいかな……いか」
さらに気合いを入れながら剣をリングに当てる。頼む……ぜ!
すると、リングから出ていた禍々しい光のオーラは打ち消された。そしてリングが破壊されてイネビュラは元の黒の後継者へと戻り疲れはてたのか、その場で倒れた。
「勝った……よな……」
「ボーマさん!!」
ユウが俺に涙を流しながら抱きついてくる。しかし、俺はまだ勝ったと言えない。皇帝がまだ残っているからである
「ユウ、ウールラさんとサド師匠と一緒にこの場から離れてくれないか。俺が皇帝を倒すから。この場は激しい戦いになるはずだから」
「わかった……」
「おう。サド師匠!もう時間稼ぎは大丈夫です!俺が皇帝と戦うと決意したので師匠はこの場から逃げてください!」
師匠と皇帝は未だに決着がつかずにいた。だけど師匠から元気な声が返ってくる。
「おおお!あの黒の後継者を倒したのか!わかった!」
「逃がすかぁああ虫けらどもおおお!」
皇帝は火属性魔法を唱えるが、俺は魔封じの剣で防ごうとする。
「師匠!どいてくれぇええ!うおおおお!」
俺は師匠がどいてユウたちの元へ行ったのを確認して皇帝の魔法陣へ突っ込んだ。
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