第6話 叛逆者と白の魔導書


「ヌハハハハ!実にいい眺めだなぁ。貴様を捕らえるのに、結構苦労したんだぞ?簡単だったけどな。君を捕らえてから1年は経つのか……。フンっ、助けに来ない夫は今頃なにしているんだろうねぇ?フハハハハ」


捕らえられてからちょうど1年経った今、私は王宮にて皇帝を前に正座をしているところだ。体には、鎖がかけられている。


生きている間、こんな姿になるなんて1年前まで思ってもみなかった。


「グフ、グフフフハハハハ。なぁ?七代賢者が一人、『白の魔導書』を創作した、ウールラ・アウストロさんよぉ。あんたがもし、我が帝国軍に服従してくれるのであれば、今すぐにでもその『魔封じの鎖』を外してやってもよいのだが?」


「いやだ!私がこの体と心を捧げる人は、愛する夫だけ!あなたになんか絶対服従しないんだから」


私が勇気を出して断ると、皇帝は近ずいてきて私のあごを指を使って上に上げる。


「フンっ、生意気な女め。私に従っていればいいものを。あ、そういえば。七代賢者が一人、『黒の魔導書』を作成したネオ・グラウドルは、私の充実な配下として現在蜂起したクルーツ家主犯の反乱軍を鎮圧しに向かってるなぁ」


「な、グランデが!?あやつは、あなたみたいなやつに屈服する性格ではないはずなのに。どうして……」


私は、仲間として戦ってきたクラウドルがまさかの皇帝に服従していたことに、あまりにもビックリしたため、驚きを隠せなかった。


「貴様を説得するのは飽きたな。さて、私は自分の部屋にて、朗報を待つとしよう。あ、君にとっては悲報だったな」



「なんのことだ……」


「ま、楽しみにしてろ」


皇帝はそう言うと、カツカツと靴音をたてながら玉座の間から出ていく。


「夫と娘のためにも早く脱出しないと……」


私はそう決意した――



その頃、ボーマのとこでは――




「なにをヒソヒソと話しをしている無礼者!」


ウー将軍と名乗ったその男は拳で殴ろうとしてきたから、俺は見据えた剣に向かって未来予知能力(?)で見た皇帝の唱えた『物体を動かす』魔法を使おうと試みた。


果たして自分には魔法が使えるのか――



途端、剣が勝手に動き出し、俺の手が柄を捕らえた。


これなら行ける――将軍に勝てる!!


そう意気込んだ俺は、剣を握り、拳を振り落ろしてきたウー将軍に向かって前に走りながら剣を横にスライドさせる形で振る。


すると、将軍のはらわたからグロい血が吹き出てきて一瞬止まったかと思っても、ダラダラ流れ出てくる。見てるだけで吐き気がしてきた。


そのせいもあってか、俺は身動きを取れなくなっていた。その時後ろから声がした。


「て、てめぇ……。グハッ。ハアハア、俺様のはらわたに傷口を付けやがって。ゆ、許さん……。貴様を殺すまで、許さん……」


言い終わったところで、俺は後ろを向くと、ウー将軍は剣を鞘から抜いて抜刀していた。


「この、この剣で……ハアハア、貴様を斬り殺してくれるわあああ!!」


瞬間、ウー将軍は勢いよく俺に向かってききながら剣を構えている。しかし――


ウー将軍は吹き飛ばされて、鍛冶をしている最中だったため暖炉に勢いのまま、入っていった。


「あ、あ、あぢいいいいい!!あづい!あづい!早く、早く水をぉおお!じゃないと死ぬ!死ぬぅううう!」


「貴様にやる水などない」


師匠は勝ち誇った顔で、ウー将軍に向かってそう言った。



「ありがとう師匠、師匠がいなかったら俺は殺られていたよ」


「礼はいらん。今は一刻も早く、娘のユウ・アウストロを探さなければならない」


「その前に……、まずはこいつ(ウー将軍)と外にいるはずの兵士を片付けやしょう」


「そうだな。こっから面白くなりそうだぜ」


俺は師匠と共に、家から飛び出して兵士を向かい打った――

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