第4話 皇帝陛下
俺はイスリアとこの世界のことについて、雑談しながら人の気配がない路地を歩いていく。
「でさ〜、父上ったらほんとに
「へぇ〜そんなことがあったのか」
俺はわけも分からない話に相槌を打つ。ただ、気がかりなのは俺が反乱軍に入っていなかった時のこと。という部分だ。俺は、反乱軍と帝国軍の戦いに参戦していなかったはずなのに。なぜだろう?
「うん。だからさ、私が1番大変だったのよ。父上を慰めるために大軍を毎日率いては、領土を落とすことが出来たからよかったけどね……」
「色々大変だったんだな」
俺たちは、雑談しながらゆっくりと路地を歩いて行く。俺は、なんらかの殺意を感じ取れたが行動に移せずにいた直後――。
後ろから風きり音を立てながら迫ってくるなにかがと思考錯誤していたその時、俺の体を背中から体へ入っていく物があった。それは、剣であった。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い――
あまりの痛さに俺は、恐怖を感じていた。痛すぎる。体が冷えていく。いつの間にか俺は、地にうつ伏せになっていた。なにかを忘れていると思って思い出したのは、イスリアだ。顔を横に動かし、イスリアの姿を見つける。しかし、そこには今までいなかった男性がいた。
その男性は黒い髭が多くあり、身長は170程度、体はバランスの取れている体型で、20代ぐらいの男性と予想した。
「はあはあ……。やっと、やっと、ついに見つけたぞ……。イスリア……」
彼は疲れているような口調でイスリアを探していたといわんばかりのセリフを吐いた。
イスリアは喋る体力はないはずなのに、精一杯の思いで口を開く。
「な、な……、なぜ『元』皇帝がここに……この街に……カハッ」
最後にイスリアは血を吐いた。綺麗な赤色である。
「フッフッフ。貴様たちを探すのに、どれだけ苦労したと思っているのだ。フンっ!」
彼は、最後に気合いを入れるとイスリアの背中にある剣を思いっきり抜き、さらに背中へ突きさす。その瞬間、グロい音を出しながら背中から血が溢れでて、イスリアは悲鳴をあげる。
イスリアはやめろと必死に言うが、皇帝は聞く耳を持たない。
「我の苦労して築きあげた帝国を台無しにしてくれおって!あんたらが我を島流ししたあと、どれだけの苦労をして我の剣を作ったと思っているのだ。そなたらに復讐するために過ぎていった時間は早かったよ。ついにこの時、復讐を果たせると思うと、とてもいい気分だよ今。はっはっは」
この最低クズ男め……。しかし、体力も血も残り少ない俺にできることは声をあげることだけだった。
「や、や、やめ……ろ。その
俺がそう言うと皇帝はこっちを向いて近づいてくると思っていると、なにやら呪文を唱えたと思った直後。俺の腰にある鞘がちょっとずつ揺れはじめ、ついに腰から離れて皇帝の元へ行き皇帝は俺の剣を手に取ると。
「たわけ!貴様は黙ってこの娘……イスリアが死んでいくざまを見ていればよいのだ。いや、この犬は我直々に今、処して見せよう」
「まずは貴様が死ね」
皇帝はそう言うと、俺の剣を地面に当てながら近づいてきて俺に元々突き刺さっていた剣を抜き、俺の剣を使って背中から刺した。
思わず血を吐きながらグハッとなってしまった。
剣を刺されるのがこんなに痛いこととは思ってもいなかった。痛い痛すぎる。俺はこのまま死んでしまうのか。この物語は、ここで幕を閉じてしまうのか――
「おや?あっさり死んでしまったようだな!はっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっ。イスリアも耐えきれず失神しているようだ。我の復讐は果たされた!!これより、我が帝国を再建する活動に入らねばなるまいな」
皇帝はそう言ってこの場を立ち去っていく。隣りを見ると、イスリアは目を閉じていた。もう息を引き取ったらしい……。俺も、視界がどんどん薄れていく。ああ。この異世界での人生は、半日もせずに終わるなんて。ついてないなぁ。
俺は静かにその場で息を引き取った――
しかし、白紙しかない本にはこの男――ストレンジャー・ボーマと、イスリアの死は記されず、それまでの出来事が記された。
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