15「馬ケ嶽城の戦い-前編-」
そのような立地条件が良かったというのもあり、
余談だが、馬ケ嶽の西側(
その遺跡は、かの景行天皇が築いた
数ある
それから25年後……再び
やがて戸次軍は馬ケ嶽城へ続くを
付近には
馬ケ嶽城は
「火矢の
そう戸次
弓を手にした兵卒たちが前線に集まり、
その様子を由布惟克は遠目で
「一番槍、一番乗りは由布の
そう言い、先陣に構える松岡親之を見て、次に戸次軍の総大将・八幡丸の方に視線を移す。
愛馬・戸次黒に
「
弓兵たちは八幡丸の号令と共に居館を狙い、火矢を一斉に
火矢が木板や屋根に刺さると、火は燃え移り、白煙が立ち昇っていく。まさしく戦いの狼煙が上がったのだ。
「行くぞおおおおおおおおおお!!」
続けて
兵卒たちはの大声は、まるで
「て、敵襲だっ!!」
外の異変に気付いた馬ケ嶽城の兵が戸次軍の姿を見るや
その勢いに乗って松岡が率いる兵卒たちも、着の身着のままで館から出てきた敵方へと
馬ケ嶽城の兵たちは、まさか今日、戸次軍が攻めてくるとは夢にも思っていなかったのか、慌てふためいては前後左右を見失い、右往左往するしかなかった。混乱状態に
一方で目の前で行われる殺し合い(本物の戦)に、後に控える兵卒たちは臆してしまい、緊張と
いつの時代も命の取り合いは非日常であり、人が人を殺す行為は拒絶するもの。
「あの館に敵の大将が居れば、山に登る手間が省けるのだが」
戸次親延が呟くと、すかさず安東家忠が口添えをする。
「斥候の話しでは、馬ケ嶽城の本丸に
「それはそうだろうな。さて……」
親延は横目で八幡丸を
もし、
だが、親延の心配は杞憂で終わる。
八幡丸は、その大きな
「不意を討つは
幼き頃より
強く打つ心臓の
先軍と中軍の戸次隊の一部は引き続き
馬ケ嶽は、先の通り様々な
しかしながら、戸次軍は前もって多数用意していた
土塁に梯子を
そんな不利の中、戸次軍の激しい攻めに
「二ノ丸だ! 一度、二ノ丸に
敵方の侍大将格なる者の指示を出し、
当然、戸次軍たちも目的地は同じである。
「我らも行くぞ!
八幡丸は愛馬・戸次黒の手綱を引き、先行して山道を駆け上がっていく。
大谷側は緩やかな坂道であり、騎乗での移動に問題なかった。
「お、おい! 八幡丸、
戸次親延の抑止を聞かずに。
「はは。
「承知しました。父上。行くぞ、惟次」
惟忠・惟次は先を行く八幡丸を追いかけていく。
「かたじけない。十時殿」と親延が礼を述べる。
「なーに、奥で
こうして戸次軍は馬ケ嶽の
■□■
一方、八幡丸たちの
それは戸次軍が
軍勢に気付いた
馬ケ嶽城の麓にある神社のため敵方と通じている可能性があるため、神職(宮司)であろうとも念の為の対処であった。
別働隊は
大軍で通れない道幅の山道は道なき道の獣道であり、人が通るために整備されていなかった。いや、あえて整備していないのだ。
城という拠点には万が一に備えて、いくつもの抜け道を用意しているものである。当然、抜け道は誰それと解らないようにしているもの。
だが、歩きづらく道と判別し難い路を松岡親利は迷い無く進んでいく。
途中、
その手際の良さに十時惟種が感服する。
「見事なお手並みで」
「……前にこの路を通りて城から脱出したからな」
「前に……ということは、二十五年前の……」
「ああ。二十五年前……落城した際にこの路を兄上と共に駆け抜けた。あの頃と、さほど変わっていないので首尾よく進めておる」
馬ケ嶽城が落城した光景が脳裏にちらつき、松岡親利は苦虫を噛むように食いしばった。
「しかし、惟種殿や十時の
「我らも鎧ヶ岳の山々を駆け巡っていましたから、これぐらいの山道は何の問題もござらんよ」
「それは頼もしい……ん?」
遠くから
「松岡殿」
「ああ、どうやら開戦したようですね。我らも馳せ参じましょう」
あの日の忘れ形見を取りにいくように。
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