13「宇佐神宮~駅館川を越えて~」
大神村を発った戸次軍は木付家に仕える
立石には規模が小さいながら城(といっても砦)があり、沓掛が前もって手配してくれていたお陰で孫次郎たちはそこに宿泊する運びとなった。
兵卒たちは故郷・藤北も
特に何事もなく夜が明けて、孫次郎たち戸次軍は手早く朝飯を食べ終えると
前日と同じように山道を
ここから先は緩やかな下り坂となり、兵卒たちは幾分かは楽になると
辺り一面に田畑が広がっており、
ここは
西屋敷村から“
二時間ほど進み行くと、大きな
各地に在る八幡宮(八幡大神)の総本宮…宇佐神宮だ。
古来、豊前の地を治め、
八幡丸を先頭に戸次軍は
本殿は宇佐神宮の分社である
使者の案内によって宇佐の
一通り
救援の申し出をしてきた宇佐神宮の宮司たちであれど、戦わない第三者に詳細な作戦や戦略が
「では、お
「かたじけのうございます。ありがたく頂戴いたします」
と親延が頭を下げると一旦
各自が馬ケ嶽城に向かう為の
畔の先に
「ここが…戦いの神、八幡大神様が
ただの井戸ではなく“
「
ここに道案内をした
ここが日本中の武士から
八幡大神にあやかって名乗っている八幡丸だけではなく、武士としての自尊がある
「宇佐神宮に訪ねたのであれば、武士ならばここには必ず来ないとな。そうだそうだ……」
八幡丸は腰元にぶら下げていた金糸で織り込まれた金ノ
それは八幡大神の
宇佐神宮の本殿(上宮)で戦勝祈願をしているが、
御霊水で清めた金ノ
「あ、戸次様。その石は
「
「はい、その石は八幡大神様が降臨した
確かに石の表面に小さな
遥か昔のことであり、
「それなら、なお縁起が良いではないか。ここより武神・
八幡丸は影向石の上に金ノ麾を供えてから深く『二礼』すると、十時たちも同じ所作を取る。
続けて『四拍手』し、手を合わせて黙祷。改めて必勝を祈願したのち、締めに『一礼』をした。
大半の神社での参拝作法は『二礼・二拍手・一礼』であるが、宇佐神宮では『二礼・四拍手・一礼』としており、他では出雲大社などのごく一部だけである。如何に宇佐神宮が大和朝廷から特別視されていたか
「八幡丸たち、ここに
呼びに来た
八幡丸の初陣で八幡大神の
またこの時に八幡大神の御加護を得られたのか……神のみぞ知るのだろう。
■□■
早めの
用を足す為ではなく、戸次軍は出立の準備を始めたのである。
当然、戸次軍の作戦の一つであり、前もって深夜の内に宇佐神宮を出立する取り決めをしていたものだ。
暗闇の中、出立までに少々手間取ったが、兵卒たちは寝ぼけ眼ながらも隊列が
その神橋の横に
鎌倉時代より前の時代に、呉国(今で言う中国)の職人が手掛けたと伝えられており、誰それと渡れる橋ではなく、朝廷の
その為、戸次軍勢はその横に架けられた神橋を渡っていく。
闇夜で呉橋の優美な姿を目視できないのは
夜道でも
宇佐神宮を出発し、微かに照らす月明かりを頼りに
寄藻川と同様に古くより歴史に名を残す駅館川は、かなり川幅は広いが浅瀬のところがあり、橋が無くても大勢が渡るのには支障はなかった。
「今ここが戦場であっても
八幡丸は愛馬・戸次黒に跨がって川を渡る中、漢の高祖・
敵軍は自軍の何倍も多く、勝ち目が無かった戦で自軍の士気を高め、決死の覚悟で
話を聞く限りでは馬ケ嶽城に
ましてや此度の戦は、
もしこの
「既に戸次家は背水……
何も見えぬ真っ暗な闇夜が戸次家の行く末が一寸先は闇だと、八幡丸は思わず身震いしてしまった。
「
八幡大神の威光(宇佐神宮)を背に、今、八幡丸たち戸次軍は駅館川を越えていく。
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