12「密談、府内にて」
戸次軍が大神村を
府内・
太陽が空の真上にある
「……そうか、ご苦労であった。追って沙汰を申し渡す。それまで暫し身体を、ゆるりと休めておいてくれ」
間者は黙したまま、音を立てずに
「さて……」
角隈もその場を後にし、上原館の奥の間――
部屋の
「角隈か?」
部屋に入った途端に呼びかけられた。
その声は、この
「
「
「全ては滞りなく。こちらの想定通りに大神村にて
「うむ。参与してくれた木付の者たちは如何ほどだ?」
「百人ほどとのことです」
「百人か……まずまずだな。戸次たちは夕刻までには立石に着く頃合いか……」
義鑑は自分の直下に広げていた豊前・豊後の地図に目を向けて、戸次軍に見立てた
「して、
「
「そうか。宇佐神宮の
「かも知れませんが、
「ふーやれやれ。身近に
「心中お察しいたします」
「まあ、出軍が馬ケ嶽城の
「
「
「正式の見舞いで行かせた使者の話しでは、
「そうか……」
義鑑は寂しそうな表情を浮かべ、地図の
そう義鑑の心中を感じたからこそ、角隈石宗が次なる手を催促をする。
「
大友家で軍備を執り行っていると府内に潜り込んでいる大内の内通者に知られては下手な騒ぎになるだろう。
極力、大友家が動いているということは隠さなければならない。戸次家独断で軍を
「それも
「長増……
義鑑と角隈石宗の間に割って入るように部屋の小窓から大きな怒鳴り声が轟いた。
『なんだ、これは! 庭に槍が落ちているぞ!!』
その声に思わず体を震わせるほど
「噂をすれば長増か」
吉岡長増……二十代後半の年頃であるが、厳粛な雰囲気を発するほどに
家来は自分が落とした訳ではないが、吉岡長増が宿老(大友家では家老のことを宿老と呼称されていた)であるが故、口答えも言い訳も出来ず、
『誰が落としたか、なおし(仕舞い)忘れた知らんが、最近たるんのではないのか? だが、良い機会だ。今から
『ええ、今からですか!?』
『そうだ。どうせ手隙だろう。こういう時にやった方が良いだろう。
若い家人は渋々とその場を立ち去っていき、吉岡長増は槍を肩に抱えると、ふと大友義鑑たちが覗いている小窓の方に視線を向けては、何か合図を示すように口元が緩んで見せた。
義鑑は「くっくく」と一笑する。
「流石は長増よ。あの槍はあやつが前もって落として仕込んでいたのだろう」
「なるほど……御屋形様や宿老殿が手引したのならば
角隈石宗は冷静沈着を心がけているが、吉岡長増が実施した
大友家中で
大友義鑑は藤北から戻った直後、吉岡長増にこれまでの経緯を打ち明けると、長増は瞬時に状況を汲み取り、計策をしたのである。
先の
宇佐神宮と大神氏に
また後々、戦乱を
「吉岡左衛門大夫殿の手腕、
「角隈よ、
「ご期待に添えるよう精進いたします」
角隈石宗は
吉岡長増。
大友家を支える大黒柱の宿老筆頭として政務と軍務を取り仕切り、遺憾なく
「さて、
「
大友義鑑は改めて地図に視線を移し……立石村、そして豊前・宇佐神宮を見据えたのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます